あらすじ
希望を胸に、身一つで京都から江戸へくだった豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる永吉と、それを支えるおふみはやがて夫婦となった。固く大きい江戸の豆腐と、やわらかで小さい京風の豆腐。好みの違いに悩みながらも、二人で精を出し、周囲に助けられ、ついに表通りに店を構える。その一方、家族にはだんだん気持ちのすれ違いが大きくなっていた。商売を引き継いだ三人の子らまで、豆腐屋二代の機微を描いた、第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。
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Posted by ブクログ
『だいこん』を読もうと思っていたんだけど、こちらが代表作とのことだったので、ひとまずこちらから。
お豆腐屋さんの人情話ということで、期待大で読んだはいいけど、毒母の話。
私苦手なんだよねぇ…不器用だとかなんだとかで話を綺麗にまとめられても、散々家族、しかも子供を傷つけているんだし、気分が悪い。
しかも「京やで子どもを産むな」って、自分が死にたくないからとしか思えない。
栄太郎も母親の行動に辟易しながらも、賭場だの洲崎だので楽しい思いをして、随分勝手すぎるでしょ。
話の展開や、文章の雰囲気は好みだったから、『だいこん』に期待!
Posted by ブクログ
評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みながらもやっと表通りに店を構える。明るく気丈なおふみの支えで、様々な困難を乗り越えながら、なんとか光が差してきた。やがて、ふたりは三人の子に恵まれる。あるときから、おふみはなぜか長男の栄太郎ばかりを可愛がるようになる。そして、一家にやがて暗い影が・・・。親子二代にわたって人情の機微を描ききった、第126回直木賞受賞の傑作時代小説。
2世代に渡っての話なので、少しずつ話が薄くなってしまうのは仕方ないか。母長男の関係に最後まで苛ついた・・・程のめり込んで読んだ。
Posted by ブクログ
名作。
人っていうのは皆不器用。万事塞翁が馬、どこで心のすれ違いが起こるか分からない。読んでいる最中、おふみや栄太郎に嫌悪の感情を抱いてしまったが、それこそまさに心のすれ違い。そのような浅ましい思いを抱いてしまった己が甚く恥ずかしい。
終わり良ければ….….
この作家さんの話を読んだのは、2作目だと思う。1作目の話は、何か淡々とした説明口調で、面白みに欠ける話だったので、2作目を手に取るのに、随分時がかかってしまった。確か、何かの賞を取った話だと思い、読んでみた。やっぱり、ちょっと説明的な所は多い気がしたけれど、登場人物達と一緒に、泣いたり笑ったり怒ったり、楽しめた。最後は、皆和解して、良い終わり方だと思った。
Posted by ブクログ
京都生まれの豆腐職人永吉の、親子2代にわたるお話。
いろんな人情噺が添えられていて、時代小説らしいさわやかさがある一方、メインの家族の話はおふみのえこひいきや長男栄太郎のダメダメな感じがなんともいえない。
それぞれのキャラクターの背景までよく描かれていて、気持ちよく、すんなりと読めました。おきみちゃんにいい縁談があるといいね。
Posted by ブクログ
上方から身一つで江戸へ下ってきた永吉が、深川の裏店で豆腐屋”京や”を開く。上方と江戸の豆腐の違いに悩みながらも、真摯に豆腐作りに打ち込み、やがて表通りに店を構えるまでになる。
それは、永吉の確かな腕と質の良い大豆を贅沢に使う製法だけでなく、おふみの明るく行動力のある支えや、嘉次郎のアドバイス、相州屋の女将の陰の支え、そういった人に恵まれたことも大きかっただろう。
しかし、その一方で、おふみの両親を含めた、永吉と家族の間には、不幸な出来事も多く、永吉が亡くなった後は、京やはどうなってしまうのだろう、、、と気が滅入る展開が続いた。
あとがきで触れられているように、著者の作品には『家族力』がテーマとして貫かれているようだ。この「あかね空」でも、深川で店を開き成功し、子供の代に引き継いでいく商いの様子を描きながらも、軸には永吉たち家族の変遷があり、それこそがメインテーマになっている。
第一部では、永吉とおふみ、おふみの両親、源吉・おみつとも良好な関係を結び、幸せな家族を築けたはずが、栄太郎が生まれてまもなくのトラブルから、永吉とおふみの間に溝ができてしまう。その後も、悟郎・おきみと子供が増えていく中で、源吉とおみつが不慮の事故で亡くなる不幸が重なり、永吉とおふみ、栄太郎と弟妹の間には埋めがたい溝が生まれて行ってしまう。
しかし第二部で、永吉やおふみの周りの人たちの言葉を通して、子供たちが思う二人とは違う姿や言動の裏にあった思いを知り、栄太郎や悟郎本人の言葉で、お互いの気持ちの誤解が解けていく。ああ、おふみのあの時の言葉はこういう思いだったのか。栄太郎はちゃんと悟郎のことが可愛かったんじゃないか。1つ1つ苦い記憶が温かな思いに置き換わっていく。
家族とは不思議なもの。誰よりもお互い近くにいるのに、他人どうしよりもお互いのことが見えていなかったり、お互いを大切に思っているのに、時としてそれがうっとおしく距離をとりたくなってしまう。他人には打ち明けられる自分の本心を伝えることができなかったりする。
永吉たち家族もそうだ。もし、栄太郎がケガとやけどで生死をさまよう状態になった日に、永吉がもう少しでもおふみの気持ちに寄り添うことが出来たなら、八幡様にすがることはなかったのかもしれない。おふみが、上方から一人出てきて、ようやく認められはじめた豆腐作りで、どうしてもお得意さんの信用を失うわけにはいかない気持ちをくんであげられたなら。永吉が歩んできた人生を思い、栄太郎ばかりを可愛がることで永吉が抱く思いを想像してあげられたなら。
その後のお互いの苦しみ、悟郎やおきみの寂しさは味わわずに済んだのかもしれない。しかし、どちらも悪いわけではなく、言葉にしなくても分かってもらえると言う、家族だからこその少しの甘えがあったのだろう。
本当は、永吉が亡くなる前に、もっとお互いに率直に思いを言葉にし溝が埋まっていれば良かったのだけど、せめても、子供たちが誤解を解いて、手を取り生きていく道が開けて良かった。
栄太郎とおきみにも良い伴侶が見つかりますように。そして皆に子宝が授かりますように。京やが長く続きますように。
それから、傳蔵は相州屋の息子、ってことですよね?あざのくだりもあったし、、、傳蔵自身は、気づいていたのだろうか?だから助けてくれたのだろうか??
Posted by ブクログ
物語の展開がとても面白く、「どうなるのだろう?どうなるんだ?」と引き込まれ、読むペースもどんどん早くなっていった。
ただ、永吉とおふみが力を合わせて、豆腐屋が軌道に乗っていく前半に比べ、後半は不幸な事が多く、人が変わってしまったようなおふみをみるのがちょっと辛くなり、前半の興奮がなくなってしまった。でも、その崩れていく家族を取り戻すことができるのか?というのがこの作品のテーマの1つだと思うので、そう考えると非常に興味深く納得がいく。
おふみが悟郎の嫁であるすみに、「京やでこどもを産むんじゃないよ」と言った言葉の意味がわかった時、「あぁ、そうだったんだ」と気分が晴れつつも、おふみを思うととても切なくなった。
さくさく読めるし興味深いし、すごくいい作品でさした!
ただ、前半が面白すぎたので、少し物足りなく感じました。