【感想・ネタバレ】安倍晋三 回顧録のレビュー

あらすじ

2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に撃たれ、非業の死を遂げた安倍晋三元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。一次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。
オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。
あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った36時間にわたる未公開インタビューの全記録。

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Posted by ブクログ

高市さんが総理になったタイミングで、安倍さんが在任時にどのような政策や国交をされてたのか気になって読んでみたいと思い、手に取った本。こういうインタビュー本って聞き手は同調するのが普通かと思ってたけど、この本では聞き手が安倍さんにちょっと喧嘩腰みたいに質問を投げかけてるところもあって、読んでてヒヤヒヤするほどだった。でも、安倍さんの人柄からすると冷静に答えてたんだろうなあ、と想像。各国首相の印象と外交時のエピソード(特にトランプさん)を語ってるところが面白かった。最後の野田さんの追悼演説には涙があふれた。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

土管から飛び出てきたスーパマリオ。よく見ると安倍晋三首相ではないか。この愛すべき我が国のリーダーが暗殺されてはや3年が過ぎた。中曽根康弘氏は「政治家の人生は歴史によって裁かれる」と言った。ユーモア溢れ信念を曲げず常に国家を憂いた安倍首相の国会答弁が蘇ってくる。本書によってますます愛すべき稀有で偉大な首相であったことが思い出される。

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2025年09月09日

Posted by ブクログ

読んでいてこれが政治家だよな、と思える人間であった。
日本を想い、日本を良くするために、日本人としてどうあるのか。
そんな根底をしっかりと携えた高い視座を持った人たらし。そんな政治家であったように思う。

2025年の今読むとなお現在の腐った政府がよく見える。

あとトランプとのやりとりが面白すぎた
スーツのボタン止めた方がいいか?とかスーパーボウルと天皇即位とどっちがすごいのか?とか
トランプって面白いよな笑

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

安倍元首相が、最初に首相の座に就いたのは、ご本人が52歳の時であった。政治家一家に生まれたエリート政治家は、史上最年少で首相の座に就くことになったが、しかし、第1次安倍政権はうまくいかず、ご本人の病気もあり、わずか1年で退陣することとなる。エリート政治家が初めて味わう挫折だった。しかし、ご本人がインタビューの中で応えているように、この経験が、政治家・安倍晋三を成長させ、第2次安倍政権をつくり、そして、その第2次安倍政権も成長させ、史上最長の政権にしたのである。
本書のインタビューでは、その間の出来事について、安倍元首相が忌憚なく話しておられる。私自身は、「アベノミクス」を始めとした安倍元首相の政策に賛成するところばかりではなかったけれども、インタビューの中に現れる、安倍元首相の政治家としての資質・視野の広さ・人間力には感心させられた。本書の最後には、安倍元首相の葬儀の際の何人かの弔辞が紹介されているが、野田元首相の安倍元首相評が、的を得ている気がするので引用する。
【引用】
私が目の前で対峙した安倍晋三という政治家は、確固たる主義主張を持ちながらも、合意して前に進めていくためであれば、大きな構えで物事を捉え、飲み込むべきことは飲み込む。冷静沈着なリアリストとして、柔軟な一面を持っておられました。
【引用終わり】
インタビューで浮かび上がってくる安倍元首相の人物像は、まさにこの通りであった。

本書で、インタビュー以外に心に残ったのは、この野田元首相のものを含む、安倍元首相の葬儀時の弔辞である。野田元首相のものも、心に残ったのが、菅元首相の弔辞には、心を打たれた。悲しみと怒りと無念さに溢れたその弔辞は、安倍元首相の政策を支持した人・支持しなかった人に関係なく、心に染み入ったと思う。

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2025年05月04日

Posted by ブクログ

『安倍晋三回顧録』──「国家とは何か」を問い続けた男の記録
『安倍晋三回顧録』は、単なる元首相の回想録という枠を超え、「日本のかたち」を根源から問い直すような、強い力を持つ一冊だと感じた。政治の舞台裏、外交の緻密な駆け引き、そして一人の人間としての覚悟と苦悩が、飾らない率直な言葉で綴られている。

本書は、生前に36時間にわたる綿密なインタビューに基づいて構成された。安倍氏は、自身の功績も課題も、ありのままに語る。政策の失敗、誤解されたことへの悔しさ――それら全てが、「いかに国を守るか」という強い信念によって貫かれている。読んでいると、こちらも自然と襟を正すような気持ちになる。

「戦後レジームからの脱却」という理念
安倍晋三という政治家を語る上で欠かせないキーワードの一つが「戦後レジームからの脱却」だった。憲法改正を巡る議論、自衛隊の立ち位置の明確化、安全保障関連法の整備。これらの政策は、常に賛否両論を巻き起こしたが、本書では、その背景にある綿密な政治的計算と、彼の強固な国家観が丁寧に語られている。

特に深く印象に残ったのは、安全保障関連法に関する記述だ。「批判を恐れて逃げるのは、政治家の取るべき道ではない」という言葉には、彼の強い覚悟と、同時に孤独が滲み出ている。政治的なリスクを顧みず、「日本を守り抜く」という一点に揺るぎなく軸足を置いた彼の姿勢は、本書全体を通して強く伝わってくる。

外交の舞台裏に垣間見えるリアリズム
トランプ政権との微妙な距離感、プーチン大統領との困難な領土交渉、中国との複雑な均衡戦略――これらの外交の舞台裏も、生々しく、そして詳細に描かれている。安倍外交の際立った特徴は、理想論に偏ることなく、現実と粘り強く向き合うリアリズムの精神だったと言えるだろう。その地道な積み重ねが、「自由で開かれたインド太平洋」構想や、TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、日米同盟のさらなる強化といった具体的な成果へと結実していったのだ。

今の日本と、彼の不在
2022年の突然の訃報の後、日本の安全保障を取り巻く環境は、より一層不確実性を増している。台湾情勢の緊迫化、ウクライナ危機、北朝鮮による度重なる挑発。安倍氏が生前訴えていた「備えの強化」や「国家の責任」という言葉の重みが、今、私たちの胸に重くのしかかる。

菅義偉前総理の追悼に触れて
安倍晋三氏の国葬儀において、友人代表として菅義偉前総理が述べた追悼の辞は、多くの人々の心を深く捉えた。とりわけ、次のくだりは忘れがたい。

「あなたは常に、正しいと信じる道を貫き通しました。そして、日本のために、その命を懸けてこられた。」

かつての官房長官という単なる側近という立場を超え、真の盟友として、菅氏は飾らない言葉で安倍氏の生涯を語った。その時、菅氏が見せた涙と、一つ一つの言葉の重みが、この回顧録に記された数々の決断の重みを、何よりも雄弁に物語っていたように思う。

終わりに
安倍晋三という一人の政治家の功績や思想の全てを、完全に肯定することは難しいかもしれない。しかし、「自分の国は、自分たちで守る」という、一見すると当たり前の言葉を、これほどまでに真剣に、そしてひたむきに語り続けた政治家が、他にどれほどいただろうか。

この『安倍晋三回顧録』を手に取るという経験は、現代日本に生きる私たち自身が、「国家とは何か」という根源的な問いに改めて向き合う機会を与えてくれる。ぜひ、多くの人に手に取って読んでほしい。安倍晋三という一人の男の言葉が、きっとあなたの心の中にも、静かで力強い火を灯してくれるはずだ。

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2025年04月16日

Posted by ブクログ

総理大臣は、そんな事を考えて仕事をしているのか、ということを端的に知ることができた。
数多の決断の中にはミスや失敗もあったのではないか、それでも話の辻褄が合うように上手に誤魔化して話している部分もあるのだろうと想像した。
それでも、一部には発言のミスなどについて正直に謝罪を述べる箇所もあり、総じて正直な内容をお話しされたのだろうと感じた。
いわゆる保守派が何を大切にしているのか。理想を語るだけでいい野党と、現実とのすり合わせをして政策に落とし込まなければならない与党・政府との立場の違いも描かれていたように思う。
最後に掲載されている野田元総理の追悼演説は、よく言われているように非常に良い文章で、胸が熱くなった。

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2025年04月01日

Posted by ブクログ

昨年の都知事選以来、政治に興味をもち、色々情報を集めました。安倍さんは、過去の首相の中でも最も日本の為に尽くしてくれていたことがよく分かります。個人的には愚策もあったとは思いますが、様々な敵との戦いで致し方なく...という部分も多くあったのだろうと思います。奈良市で殺されたことが非常に悔しいです。犯人は山上ではないことは、映像、直後の医師の見解からも明らか。トランプがきっと闇を暴いてくれることを願っています。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

私はこの元総理のことをどれだけ誤解していたのだろう。それを痛感させられる本でした。
現政権にも安倍晋三さんの魂を引き継いでほしいと切に願う

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2025年02月20日

Posted by ブクログ

冒頭にあるように、この本は安倍晋三という政治家が歴史の法廷に提出する陳述書である。憲政史上最長の政権を築いた安倍が、何を思い、何を考えながら政権運営をしたかを、安倍の視点で語る本である。当然、安倍に批判的な立場の人間からは真逆の見解が出るであろう。それでも、本書は安倍晋三とは何だったのかを考える上で、一つの視点を提供するものと思う。

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2025年01月05日

Posted by ブクログ

安倍晋三がどれだけ日本の国益を守るために闘っていたかという事がよく分かる。左翼やメディアに嫌われ続けたが、それでも国民の支持が強かったからこそ、憲政史上最長の任期を務めた日本の歴史に残るリーダー。

特に興味深いのは外交や各国首脳に関する記述。メディアを通じてしか知らなかった、外交の真の舞台裏が描かれており、それだけでも読む価値はある。

理知的で実務派の元弁護士オバマ大統領は、ジョークにも反応せずに直ぐに本題に話を戻したという。銀座次郎でのすし会食では米国の自動車が道中で1台も走っていない事を安倍に文句を行った処、安倍はドイツ車はたくさん走っている、彼らは日本の実情に併せて右ハンドル車を作っているからであって、アメリカの自動車メーカーはそれをしていない、と言うと黙り込んだという。

一方、トランプ大統領は報じられているイメージとは全く異なり、人の話をしっかり訊くタイプで安倍さんは色々なことを相談されたという。中には「ウチの国務長官をどう思う?」といった場合によっては内政干渉と言われても仕方のない答えようのない事までも含まれている。そして、偶然安倍の誕生日に行われた会談では突然照明が消え、ローソクを差したケーキを持ったトランプが突然がハッピバースデーを歌ってくれたという。イランの核開発合意破棄を巡る外交では、対外的に強行な姿勢を見せていたトランプも、同国にパイプを持つ安倍に対しては仲介の可能性を見出しており、事態の打開の道を探っていた事も明かされれている。

安倍は地球儀を俯瞰する外交を標榜していたが、具体的にそれがどのように行われていたかが描かれており、各国の思惑が渦巻く魑魅魍魎な世界において、日本の国益を常に考えて活動していたことが伺い知れる。

また、国内においても敵は野党だけではなく、財務省もそうであったという。彼らは自分たちの意向に沿わない政権がでてくると併記で倒しに来る。財務省は参加に国税庁をもっているので、国会議員を脱税などで強制捜査する協力な武器をもっているのである。党内でも増税を是とする財政再建派が一定数おり、財務省はこうした議員を応援する。

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2024年08月29日

Posted by ブクログ

岸田文雄の安倍晋三への弔辞泣いた

1900

480P

★4.5・・・3053

安倍晋三 回顧録
by 安倍晋三、橋本五郎、尾山宏、北村滋
第1次内閣で内閣広報官を務めていた長谷川榮一氏の誘いで、2008年春に高尾山に登ったことが大きい。そこで多くの人から声をかけられました。「安倍さん元気になったんですか」とか「頑張ってください」と激励されました。それが自信を回復することにつながりました。厳しくマスコミに叩かれ、自信も誇りも砕け散った中から、だんだんともう一度挑戦しようという気分が湧いてきました。

皇室の政治利用とは、 牽強付会 の議論ですね。欧州ではどこの国も王族が前面に出ていますよ。  まず 13 年3月に、IOCの評価委員が視察名目で東京に来たんです。IOCって、訪問した国々で大歓待されているのですよね。それもどうかと思うのですが、その時の晩餐会に、高円宮久子妃に来ていただきたい、とお願いしたのです。亡くなられた高円宮憲仁親王は、非常にスポーツに造詣が深かったから。首相主催の晩餐会ですが、こういう社交の場は、私なんかではダメで、やはり皇室の存在感が圧倒的だろうと。でも、宮内庁は、五輪招致に利用されると慎重だった。そこを何とかお願いして、高円宮妃にスピーチしていただいたのです。

麻生さんとは、人間的に肌が合うんですよ。お互い政治の世界で育ったという環境も影響しているのでしょう。首相時代は、漢字が読めないとかさんざん批判されましたが、ものすごい教養人です。歴史に造詣が深く、読んでいるのも漫画だけではないのだけど、自分を悪い人間のように見せようとするのです。あれは、もったいないですよ。自然に振る舞えばいいのに。彼は毛筆で手紙を書くじゃないですか。あんな政治家ってもう最後ですよね。

メルケルは、英語が堪能であるにもかかわらず、ドイツ語で演説したそうです。私の祖父は日本語で演説したのですが、母国語で演説した場合、同時通訳の何となく感情を殺した、淡々とした話しぶりが、気持ちが籠もっていない感じに受け止められてしまうのではないか、と思ったのです。だから英語で話そうと決めたのですが、やはり大変でした。

私を支持してくれる保守派の人たちは、常に100点満点を求めてきますが、そんなことは政治の現場では無理なんですよ。だから、ある程度バランスをとるために、 21 世紀構想懇談会を設置して有識者の意見を聞いたのです。その意味では、政治史に詳しい北岡伸一国際大学長がふさわしいだろうと考えて、座長代理という立場でとりまとめをお願いしました。

戦後の節目で出す談話は、政治文書であって、歴史ではないのです。だから、戦略的なものだと私の支持者には説明したのですが、「なんだ、安倍晋三は。気骨がないじゃないか」とさんざん怒られましたね。ただ、時が経ち、もう一度談話を読んでみると、いかに練られた文章だったかと分かってくれる学者もいます。リベラルな人は、元々、私に対する期待値が低いから、ここまでやってくれたのか、と当時評価されました。付言すれば、「期待値を上げすぎない」ということは政権運営の要諦だと思っています。

14 年2月にロシア・ソチで冬季五輪が開かれました。ただ、ロシア政府が前年、同性愛を宣伝したら罰金を科すといった性的マイノリティに対する規制を強化していたため、欧米各国が「人権侵害につながる」と反発し、オバマやフランソワ・オランド仏大統領らは開会式を欠席しました。各国がボイコットする中、これはチャンスだと思って私はソチ五輪の開会式に出席し、日露首脳会談を行いました。

世界中のメディアが、米国で格差が広がったことで、ミシガンやオハイオなど中西部のラストベルト(さびついた工業地帯) の白人労働者が、トランプを支持したと分析していました。でも、私は、エリート層にも相当のトランプ支持者がいたのではないかと思います。そうでなければ、あれほど強く公約を推し進められなかったはずですよ。

小池さんは、常にジョーカーです。手札の1から 13 の中にはないのです。ジョーカーのカードなしでも、トランプの多くのゲームは成り立つのだけれど、ジョーカーが入ると、特殊な効果を発揮してくる。ある種のゲームでは、グンと強い力を持つ。スペードのエースよりも強い。彼女は、自分がジョーカーだということを認識していると思います。ジョーカーが強い力を持つには、そういう政治の状況が必要だね、ということも分かっている。

小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。  しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです。「あれ、わき腹が痛いな」とこっちが思った時には、もう遅い。  彼女を支えている原動力は、上昇志向だと思いますよ。誰だって上昇志向を持つことは大切です。でも、上昇して何をするのかが、彼女の場合、見えてこない。上昇すること自体が目的になってしまっているんじゃないかな。

彼女の弱点は、驚くほど実務が苦手な点です。2020年の話になりますが、新型コロナウイルスの感染者が続出していた新宿・歌舞伎町で、保健所と警視庁がホストクラブや風俗店を巡回しました。最初、小池さんに連絡し、「警察官と保健所職員でやりませんか」と打診したのです。保健所は、区が管轄しているとはいえ、東京都が人事を決めていますから。小池さんは「うーん」と考え込んで、その後、「国でやってください」と言ってきたのです。だから政府ですべて調整して実施することにしました。保健所には人員の余裕がないというので、警察官のOBを保健所で臨時に採用するという手続きを取って、巡回してもらいましたが、小池さんは一切協力してくれなかった。

一方、小池さんの発信力はものすごい。とにかく、命名もメディアの使い方もうまいですよ。感染が拡大すると、記者会見では「ステイホーム」や「東京アラート」を呼びかけて、「やってる感」を出すのですね。「実務をこなしているのは、政府なんだけれどなあ」と随分思いました。手強い相手です。

父方の祖父の安倍 寛 は、戦後すぐに他界しているから、私は直接知らないけれども、私の親父を含めて周囲の人はみんな、安倍寛の話をしていたのです。反戦の政治家でリベラルの象徴のような存在でしたが、その影響を受けている面もあるかもしれません。

 オバマ政権時代の2014年にも、大統領と拉致被害者家族の面会は実現しています。ただ、オバマ政権は拉致問題について、日本の立場は支持しているのですが、核・ミサイル問題とは異なるという認識なんです。拉致は日本の問題だという捉え方をしていました。だから、先方の希望で、面会する家族は数人に限定されたのです。ショーアップしたくなかったのでしょう。   17 年のトランプ来日時は、日本の注文通りに米側が応じてくれました。写真撮影も認めてもらった。前回のオバマ大統領の時は、立ったままでの面会だったので、トランプとは座った形にしてもらいました。人数も 17 人と増やしてね。トランプは報道陣に「被害者が愛する人のもとに戻れるよう、シンゾウと力を合わせていきたい」と述べていました。

拉致被害者家族を政治利用しているという人がいたのだけれど、全く違いますよ。米国と一体となって拉致問題を解決するというメッセージを北朝鮮に出すためなのです。そういうインパクトを考えて、被害者家族と大統領の面会をセットしたのです。

欧米では、アダムが知恵の木のリンゴを食べて労働の苦役を与えられたように、働くことは、罰のようなものです。でも、日本は労働を肯定的に受け止めてきた。だから、割と若い世代の経営者からも、働き方改革を実現したら、経済が持たなくなるのではないか、といった冷ややかな意見が出ていました。でも、ワークライフバランスを考えて仕事と生活の調和を図り、いろいろな働き方を選択できるようにすれば、人生は豊かになるし、同時に企業の生産性が上がっていく可能性がある。改革を行う時に反対論はつきものですから、気にしませんでした。

世の中には「残業自慢」という言葉があるでしょう。もちろん、本当に忙しい時もありますが、割と暇な日もありますね。実は私もサラリーマンだった時などは、 17 時の終業で帰宅せず、だらだらと残業していたことがあったのです。何となく、皆が帰らないから、という理由でね。そうした風潮を改めることで生産性が向上するならば、厳しい改革に踏み込むべきでしょう。

FOIPは、長年温めてきてでき上がった構想です。まず、 06 年の第1次内閣発足前に出版した『美しい国へ』(文春新書) の中で、インドとの関係を重視する方針を掲げたのがきっかけです。インドは、日本と歴史認識の問題を抱えていないし、自由や民主主義といった普遍的価値を共有している。ならば協力を深めることができるはずだ、という考えが根底にありました。

 インドは欧米にとっては厄介な国なのです。非同盟中立と言いながら、冷戦期には対中戦略からソ連に接近し、その後も武器はロシアから買っているわけです。英国をはじめとする欧州のアングロサクソンによる支配への反感があるのでしょう。欧米は、インドにやや手こずっていました。

一方、インドにとって、日本は特別な存在なのです。1957年に祖父の岸信介首相はインドを訪問していますが、この時同行した通訳から聞いた話で、首脳会談の時、ニューデリーの官邸の前には人が群がっていたそうなのです。当時のジャワハルラール・ネルー印首相は祖父と会談後、「群衆を前に演説するので、ついでにあなたを紹介しよう」と言って祖父を連れていった。そこでネルーは「岸は、かつてロシア帝国との戦争に勝った国の首相だ。日本は、我々に英国と戦い、独立を勝ち取る勇気を与えてくれたんだ」とスピーチし、拍手喝采を浴びたそうです。

中国と親しい国であれば、私が中国の悪口を言っていることを告げ口するでしょう。それは百も承知で、あえて言うのです。  なぜかというと、これは勘でしかありませんが、中国という国は、こちらが勝負を仕掛けると、こちらの力を一定程度認めるようなところがあるのではないか、と思うのです。日本もなかなかやるじゃないか、と。そして警戒し、対抗策を取ってくる。  中国との外交は、将棋と同じです。相手に金の駒を取られそうになったら、飛車や角を奪う一手を打たないといけない。中国の強引な振る舞いを改めさせるには、こちらが選挙に勝ち続け、中国に対して、厄介な安倍政権は長く続くぞ、と思わせる。そういう神経戦を繰り広げてきた気がします。将棋を指しても、盤面をひっくり返すだけの韓国とは、全く違います。

訪中前に、国家安全保障会議(NSC) で二度議論したのです。協力するかどうかね。外務省は一貫して反対でした。私も、かつては警戒していたのだけれども、日本がアフリカまでどーんと道路を造れますか。それは無理でしょう。だったら、中国に取り組んでもらえばいいではないか、と考えたのです。  中国は、アフリカなどで事業を受注するために酷いことをしているわけです。政府高官に賄賂を贈り、ベンツを買ってあげて、大統領の宮殿を造っているわけでしょう。日本の援助は綺麗です。だから、受注競争では勝てないのです。かつてある中東の高官から、「日本も中国の援助の手法を学んだ方がいい。やっぱり権力者を喜ばせなきゃダメだ」と言われたことがあったのですが、そんなことはできない。

大法院の主張は、理解不能でしょう。 盧武鉉 政権は2005年、日韓間の協定を見直す「官民共同委員会」を設置しましたが、結局、戦時労働者への補償は、日本から受け取った賠償金に含まれる、と結論づけました。さらに、かつての朴政権は日本からもらった資金をインフラ整備に使いすぎたから、もっと徴用工の遺族らに使うべきだと決めて、韓国政府自ら、追加補償を実施したわけです。その委員会には、当時、大統領府で首席秘書官だった文在寅大統領が、政府委員として参加していたわけです。文大統領は、韓国大法院の判断が国際法違反だと分かっているはずなのですが、反日を政権の浮揚材料に使いたいのでしょう。文大統領は確信犯です。

中韓、とりわけ最近は韓国ですが、歴史問題を取り上げて国際社会で日本を貶める外交を続けています。元慰安婦問題でも、慰安婦を象徴する少女像を世界のあちらこちらに設置しています。歴史を巡る戦いでなぜこれほど日本は弱いのでしょうか。

外務省が戦ってこなかったのは事実です。歴史問題は、時が経てば風化していくからやり過ごそう、という姿勢だったのですね。でも、それでは既成事実化してしまいます。だから安倍政権になって相当変えました。劣勢をはね返そうとしたのです。国境や領土は断固として守る、中韓は国際法を遵守せよ、という主張を強めたのです。韓国大使はもちろん、元慰安婦を象徴する少女像が設置されたドイツの大使らにも、明確に指示しました。「劣勢でも戦え。テレビに出て堂々と反論しろ。ゆったりワイン飲んでいる場合じゃないぞ」と。

そこで私は、正直にこの協定の話をした上で、「私とトランプの極めて良好な関係を考えれば、仮に私とウラジーミルの間で「米軍基地を北方領土には置かない」と約束しても、トランプが怒ることはないでしょう。そもそもトランプは、在日米軍基地の負担が重い、と文句を言っているくらいですから」と言って説得したのです。この時はプーチンも「分かりやすい。問題ない」と納得してくれていました。

「令」は、命令の「令」だという人もいましたね。でも、令には「良い」という意味があるし、敬称で使うこともある。「安倍の命令みたいだ」という人は、難癖を付けたかっただけです。  国書といっても、漢字は中国発祥だろうという人もいました。それなら漢字をやめて、全部平仮名にしたら元号にふさわしいのか、ということです。どこまで日本人は自虐的なんだと啞然としました。

外務省幹部は「総理からトランプに直接お願いしてみてください」と言う。「え、その調整、俺がやるのかよ」とは思いましたが、昼間、ゴルフ場でトランプに頼んだら、OKと言う。  彼の車で発進すると、歩道にいた大勢の人が手を振ってくれていたのです。トランプがそれを見て、「みんな手を振っているけど、シンゾウに振っているのか? それとも私に振っているのか」と聞いてきたので、「車に星条旗がたなびいているのだから、あなたに振っているんですよ」と答えた。すると嬉しそうにトランプも手を振るわけです。「でも、向こうから車内が見えないだろう」と言って、車内のライトをつけた。すると前に座っていたシークレットサービスが「ダメだ、電気を消して」とたしなめるのです。ビーストは2台で走っていて、どちらに大統領が乗っているか分からないようにしているのですが、その意味がなくなっちゃうというわけです。

 世界有数の産油国であるイランは、日本にとって重要な石油供給国です。百田尚樹さんのベストセラー『海賊とよばれた男』にも描かれているように、日本人は戦後、イランを支配していた英国の反発を押し切って、イランから原油を買い付け、貧窮していた地元の人々を助けたわけです。日イランはそういう良好な関係にあります。世界最大級と言われるイランのアザデガン油田の開発にしても、日本は権益を保持していたのに、米国のイラン制裁強化で撤退を余儀なくされた。そして日本の代わりを中国企業が穴埋めし、開発契約をイランと結んでしまった。日イラン関係を放置しておくのは、あまりにももったいないでしょう。

── トランプ大統領は日本の立場を理解してくれましたか。  トランプに事前に説明したところ、「日本はイランとの関係を切らない方がいい」と言われました。日本が中東で大規模に活動する必要はない、という考えでした。

第1次内閣は、 06 年9月 26 日に高い支持率で華々しくスタートしたにもかかわらず、厳しい批判を浴び続け、わずか1年で退陣しました。この失敗は非常に大きかったと思います。あの1年間は、普通の政治家人生の 15 年分くらいに当たるんじゃないかな。  その経験があったからこそ、第2次内閣以降、政権を安定させることができたのでしょう。第2次内閣が発足した 12 年 12 月 26 日、再び官邸に入った時には、同じ過ちは繰り返さないという思いを強く持っていました。

私は、小泉純一郎元首相には、いくつもポストに就けてもらいましたが、育てられたとは思っていません。私を官房副長官にしてくれたのは、森喜朗元首相です。森さんの後継の小泉さんは、引き続き私を副長官にしましたが、それは、小泉さんや私が所属していた派閥・清和政策研究会の中から、不満が出ないようにするためだったと思います。清和研の中には、かねて福田赳夫派と安倍晋太郎派がある。その対立を抑えるために、福田康夫官房長官、安倍晋三官房副長官の体制を取っただけだと思いますよ。  その後、小泉さんが私を幹事長にしたのは、自民党支持者の中で私の人気があったから、それを選挙目当てで利用しようと考えたわけでしょう。だって、当選3回で幹事長に抜擢って、私よりベテラン議員の方が圧倒的に多いのに、やり過ぎですよ。育成という面で考えたら、不適切でしょう。甘利さんらが副幹事長として支えてくれなければ、乗り越えることはできませんでした。

第1次内閣で掲げた理念、あれはあれで正しかったと思います。第1次内閣の最初の所信表明演説では、「活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた『美しい国、日本』」を目指すと訴えました。「美しい国」とは、文化、伝統、自然、歴史を大切にし、自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国だと唱えました。この演説は、国家観や時代認識を堂々と示していたと思います。

インターネットを活用し、世界各国の動向を知る若者は増えました。そうなると、抑止力と対処能力を高めて国の安全を守るのは、国際社会では当たり前なのだということに気づきます。国益を守るために、時にはハードライナー(強硬路線) で進まなければならないと、彼らは知ったわけです。  もちろん主張の偏ったサイトばかり見ていたら、考え方が硬直的になり、非常に危うい。そういうネットの問題は無視できません。ただ、日本では、あらゆる主義主張がネット上にあふれています。いろいろな情報に触れていく中で、しっかりとした国家観を養っていく若者も多いと思います。

 第2次内閣で再登板してからは、北海道から沖縄まで9地域すべてをプラスにすることを目指しました。そのために、観光産業を伸ばすことに努めました。輸出型企業の工場がなくても、風光明媚な景色や文化財があれば、観光産業は潤います。だから、北海道や四国にもインバウンドで多くの外国人が訪れ、景気と雇用に大きく貢献したわけです。

 女性を積極的に登用します。2020年には、あらゆる分野で指導的地位の3割以上が女性となる社会を目指します。そのための情報公開を進めてまいります。まず 隗 より始めよ。国家公務員の採用は、再来年度から、全体で3割以上を女性にいたします。  すべての女性が、生き方に自信と誇りを持ち、持てる「可能性」を開花させる。「女性が輝く日本」を、皆さん、ともに創り上げようではありませんか。

 若者たちには、無限の「可能性」が眠っています。それを引き出す鍵は、教育の再生です。  いじめで悩む子どもたちを守るのは、大人の責任です。

「日本人はもっと自信を持って、自分の意見を言うべきだ」  立命館アジア太平洋大学でミャンマーからの留学生ミンさんがこう語ってくれました。教授も、学生も、半分近くが外国籍。文化の異なる人々との生活は、日本の若者たちに素晴らしい刺激となっています。  2020年を目標に、外国人留学生の受け入れ数を2倍以上の 30 万人へと拡大してまいります。国立の8大学では、今後3年間で外国人教員を倍増します。

 やれば、できる。次は2000万人の高みを目指し、外国人旅行者に不便な規制や障害を徹底的に洗い出します。フランスには毎年8000万人の外国人観光客が訪れます。日本にもできるはず。2020年に向かって、目標を実現すべく努力を重ねてまいります。 「日本人のサービスは世界一」  1000万人目として、タイから来日したパパンさんの言葉です。日本のおもてなしの心は外国の皆さんにも伝わっています。昨年は富士山や和食がユネスコの世界遺産に登録されました。日本ブランドは、海外から高い信頼を得ています。  観光立国を進め、活力に満ちあふれる地方を、皆さん、創り上げようではありませんか。

 伊豆大島への災害派遣。活動中にご 位牌 を発見した自衛隊員は、泥を自らの水筒の水で洗い、きれいに拭き取りました。その様子をテレビで見た方から自衛隊に手紙が寄せられました。 「本当に涙が出ました。あの過酷な条件の中で自衛隊員の心のやさしさに感動しました」  その手紙は、こう続きます。 「私はもう 80 歳になりますが、戦争を知っている世代としては最後の世代ではなかろうかと思います。このように 逞しく、また、心やさしい自衛隊員がおられる日本は安心です」  自衛隊は、何物にも代え難い国民の信頼を勝ち得ています。黙々と任務を果たす彼らは、私の誇りです。

 日本の自衛隊を日本だけでなく、世界が頼りにしています。世界のコンテナの2割が通過するアデン湾でも海賊対処行動に当たる自衛隊、海上保安庁は、世界から高い評価を受けています。

 今月、アフリカ3か国を訪問しました。力強く成長するアフリカは、日本外交の新たなフロンティアです。日本は、インフラ、人材育成といった分野で、アフリカの人々のため一層の貢献をしてまいります。  アフリカの人々のため。 87 年前、アフリカに渡った一人の日本人がいました。野口英世博士です。 「志を得ざれば再び 此地を踏まず」  故郷・福島から世界に羽ばたき、黄熱病研究のため周囲の反対を押し切ってガーナに渡り、そしてその地で黄熱病により殉職。人生の最期の瞬間まで、医学に対する熱い初心を貫きました。  我々が国会議員となったのも、「志を得る」ため。「この国を良くしたい」「国民のために力を尽くしたい」との思いからであったはずです。改めて申し上げます。

 コロナウイルス対策につきましては、今年の1月から正体不明の敵と悪戦苦闘する中、少しでも感染を抑え、極力重症化を防ぎ、そして国民の命を守るため、その時々の知見の中で最善の努力を重ねてきたつもりであります。それでも、残念ながら多くの方々が新型コロナウイルスにより命を落とされました。お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。  今この瞬間も患者の治療に全力を尽くしてくださっている医療従事者の皆様にも、重ねて御礼申し上げます。

岸田文雄首相 ────[2022年9月 27 日 国葬]

 私は、外務大臣として、その同じ時代を生きてきた盟友として、あなたの内閣に加わり、日本外交の地平を広げる仕事に、一意専心取り組むことができたことを、一生の誇りとすることでしょう。  国内にあっては、あなたは若い人々を、とりわけ女性を励ましました。子育ての負担を少しでも和らげることで、希望出生率をかなえようと努力をされた。  消費税を上げる代わりに、増える歳入を、保育費や学費を下げる 途 に用いる決断をしたのは、その途の先に、自信を取り戻した日本の若者が、新しい何かを生み出して日本を前に進めてくれるに違いないと信じていたからです。  あなたは、我が国憲政史上最も長く政権にありましたが、歴史は、その長さよりも、達成した事績によって、あなたを記憶することでしょう。

 安倍さん。あなたこそ、勇気の人でありました。   一途 な誠の人、熱い情けの人であって、友人をこよなく大切にし、昭恵夫人を深く愛したよき夫でもあったあなたのことを、私は、いつまでも懐かしく思い出すだろうと思います。  そして、日本の、世界中の多くの人たちが、「安倍総理の頃」「安倍総理の時代」などとあなたを懐かしむに違いありません。  あなたが敷いた土台の上に、持続的で、すべての人が輝く包摂的な日本を、地域を、世界をつくっていくことを誓いとしてここに述べ、追悼の辞といたします。  安倍さん、安倍総理。  お疲れさまでした。そして、本当にありがとうございました。どうか、安らかにおやすみください。

菅義偉前首相 ────[2022年9月 27 日 国葬]

麻生太郎元首相 ────[2022年7月 12 日 葬儀]

まだまだ安倍先生に申し上げたいことがたくさんあるのですが、私もそのうちそちらに参りますので、その時はこれまで以上に冗談を言いながら、楽しく語り合えるのを楽しみにしております。正直申し上げて、私の弔辞を安倍先生に話していただくつもりでした。無念です。

野田佳彦元首相(立憲民主党) ────[2022年 10 月 25 日 第210回国会衆議院本会議]

 安倍さん。あなたが後任の内閣総理大臣となってから、一度だけ、総理公邸の一室で、 密かにお会いしたことがありましたね。平成 29 年1月 20 日、通常国会が召集され政府4演説が行われた夜でした。  前年に、天皇陛下の象徴としてのお務めについて「おことば」が発せられ、あなたは野党との距離感を推し量ろうとされていたのでしょう。

 なぜなら、あなたの命を理不尽に奪った暴力の狂気に打ち勝つ力は、言葉にのみ宿るからです。  暴力やテロに、民主主義が屈することは、絶対にあってはなりません。  あなたの無念に思いを致せばこそ、私たちは、言論の力を頼りに、不完全かもしれない民主主義を、少しでも、よりよきものへと鍛え続けていくしかないのです。

聞き手  橋本五郎(はしもと・ごろう) 1946年秋田県生まれ。読売新聞特別編集委員。慶應義塾大学法学部政治学科卒。読売新聞論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。日本テレビ「スッキリ」、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」「ウェークアップ」などに出演。主な著書に『総理の器量』『総理の覚悟』(以上中公新書ラクレ)、『範は歴史にあり』『宿命に生き 運命に挑む』『「二回半」読む』(以上藤原書店)など。14年度日本記者クラブ賞受賞。 聞き手・構成  尾山 宏(おやま・ひろし) 1966年東京都生まれ。読売新聞論説副委員長。早稲田大学法学部卒。92年読売新聞社入社。政治部次長、論説委員、編集委員を歴任。2022年より現職。02年8月に安倍晋三官房副長官の担当となって以降、安倍氏の取材に携わってきた。主な共著に『安倍晋三 逆転復活の300日』『安倍官邸VS習近平』(以上新潮社)、『安全保障関連法』(信山社)、『時代を動かす政治のことば』(東信堂)など。 監修  北村 滋(きたむら・しげる) 1956年東京都出身。読売国際経済懇話会理事長。日本テレビホールディングス(株)及び日本テレビ放送網(株)監査役。東京大学法学部を経て、80年4月警察庁入庁。2006年9月内閣総理大臣秘書官、12年12月内閣情報官、19年9月国家安全保障局長・内閣特別顧問(いずれも安倍内閣)。20年12月米国政府から国防総省特別功労章を受章。著書に『情報と国家』『経済安全保障』(以上中央公論新社)など。

安倍晋三(あべ・しんぞう) 1954年東京都生まれ。成蹊大学法学部政治学科卒業後、神戸製鋼所勤務、父・安倍晋太郎外相の秘書官を経て、93年衆議院議員初当選を果たす。2003年自由民主党幹事長、05年内閣官房長官(第3次小泉改造内閣)などを歴任。06年第90代内閣総理大臣に就任し、翌07年9月に持病の潰瘍性大腸炎を理由に退陣。12年12月に第96代内閣総理大臣に就任し、再登板を果たした。その後の国政選挙で勝利を重ね、党総裁選でも3選を実現して「安倍一強」と呼ばれる安定した長期政権を築いた。20年9月に持病の悪化で首相を退くまでの連続在任2822日と、第1次内閣を含めた通算在任3188日は、いずれも戦前を含めて歴代最長。第2次内閣以降はデフレ脱却を訴えて経済政策「アベノミクス」を推進。14年7月に憲法解釈を変更し、15年9月に限定的な集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を成立させた。対外関係では、「地球儀 俯瞰外交」や「自由で開かれたインド太平洋」などを掲げ、首脳外交に尽力した。日米同盟強化や日米豪印4か国の枠組みなど、現在の日本の安全保障に欠かせない米欧諸国との連携の礎を築いた。2022年7月8日奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃され死去した。享年67。

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2024年08月08日

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2次にわたる安倍政権7年9ヶ月間の内政、外交、国会論戦について、その時々で安倍元首相がどう考え、決断したかが、意外なほど率直に語られている。

聞き手も、タブーを設けることなく、答えにくい事柄についても適切に問うている。

本文だけで約400ページだが、内容に惹かれ、ほぼ一気読みだった。

本人の逝去(暗殺)後間もないこのタイミングで、網羅的な回顧録が出版されたのはほとんど奇跡といえる。
が、この本では語り切れなかった様々なことが、この十倍はあったに違いない。

毀誉褒貶はあるとしても、約8年間激動の状勢の中で自ら国の舵取りをした人物の知見は、今後の国の運営に大いに役立つはずだった。
我が国の貴重な財産ともいえる存在を、あのような殆ど逆恨みのような凶行で失ったことは、本当に残念だ。

氏の官僚、特に財務省、厚労省、外務省(、法務省)に対する目線は厳しいが、その後の各省の仕振りを考えれば仕方ないだろう。

それほど氏に傾倒していたわけではないが、巻末の弔辞、特に菅氏のものには涙を禁じ得なかった。

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2024年03月27日

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私は単純で信じやすいので、安倍さんは本当にすごい人だと思ってしまいました。安倍さんの視点で書いているのでもちろん違う人の視点から見ると全然違うのかもしれない、プラスとマイナスが逆転するほど違うかもしれないが、でもこんなに考えてこんなにも行動力のある人はなかなかいないと思う。本当に皆好き勝手いうけど動けるか動けないか、は大きな違いと思う。
菅さんの最後のコメント部分が1番心に残った。

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2024年01月06日

ネタバレ

ただただ、涙・・・。

2023年7月読了。

出版されて直ぐに買ったのに、どうしても手が伸びなかった一冊。

先日、「元番記者」を自称する元NHK解説委員の方の『実録…』とやらを読み、「それでは本人自身のお話を伺いましょう」と決意し、本を開いた。

読み始めて直ぐに、あの懐かしい舌っ足らずで、幾分セカセカと話す口調の、故人の声が聞こえてきて、一気に読了した。
まるで安倍さんが目の前で喋っているのを聞いているようだった。

「回顧録」として読むには幾分生々しい話題が多く、「もう済んだ事」として受け止められない部分は有るが、もう二度と話を聞く事の出来ない人の語りだと考えれば、より多くの善男善女に読んでほしい一冊だと、強く感じた。そして、総理大臣と云う、孤独とプレッシャーに絶えず晒され続ける激務を、病と戦いながら二度も務めた故人の「政治家としての執念」、そして勝ち得た輝かしい功績を思い、改めて涙が溢れた。

先に上げた「元番記者」の著書によれば、当時、故人が公にあれだけ強く否定していた「三回目の登板」も、実は視野に入っていたとのこと。

かえすがえすも、この国にとって「多大な損失」だと痛感すると同時に、今なお「神格化を許すな」「明かされていない闇は多い」等と、
故人に石を投げる事を止めない「人として許しがたい」偏った人々に対して、心から憤怒の念を禁じ得ない。
「死んだ孔明にいつまでも振り回されて、遠吠えを続けていろ」と、心から不快に思う。

この本を「今年の一冊」に選ぶことは出来ないが、故人を偲ぶ意味で、「死ぬまで手元に置いておく一冊」が出来たと感じた。

安倍さん、ありがとうございました。あなたの事は忘れないよ!!!

#泣ける #深い #タメになる

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2023年07月23日

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安倍さんが同時多発的に党内、永田町内、国内、世界中から膨大な問題が飛んでくる中でハードな意思決定繰り返していたと思うと尊敬しかない。政治を批判する前に読んでおきたい一冊。

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2023年12月26日

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安倍さんからみた諸外国の政治家についての印象や評価、政策や政治活動の思いが述べられていてとても興味深かった。安倍さんの政治家としての姿勢や政策に対しての賛否という単純な区別ではなく批評するうえでとても役に立った。こうした回顧録は総理大臣経験者は特に発刊してほしいと思う。

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2025年11月13日

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安倍晋三元首相の言葉や話し方の巧みさに改めて感銘を受けた。オバマ氏やトランプ氏といった各国首脳に対して、必要な主張ははっきりと伝えつつも、相手を逆撫でしない絶妙なバランスでコミュニケーションを取る姿勢には、まさに「外交の安倍」と呼ばれる所以を感じた。
また、各国の首脳の個性や特徴が具体的に描かれており、外交の舞台裏を垣間見るような興味深さがあった。さらに、あの安倍元首相ですら大切なスピーチの前には何度も練習を重ねていたというエピソードを知り、強い親近感を覚えた。
もともと政治に深い関心があったわけではないが、この本を通して政治や外交への興味が大いに高まった。特に日本の外交体制については、今後もニュースを注意深く追っていこうと思う。
ちょうど先日、トランプ大統領が天皇陛下と会談を行った際、スーツのボタンをしっかり留めていた姿が印象的だった。これは、かつて安倍元首相が「陛下の前ではボタンを閉めるように」と説明していたからだと知り、トランプ氏が安倍元首相を深く敬意をもっていたことを改めて感じた。

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2025年10月31日

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『安倍晋三回顧録』は“是々非々で評価するための素材”を与えてくれる一冊です。支持・不支持の感情をいったん脇に置き、政策ごとの狙いと帰結、そしてその際に生じたコストをていねいに見ていく――その視点で整理すると、次のように読めました。

まず、第一次政権期に動いた教育基本法改正、防衛庁の省昇格、国民投票法、集団的自衛権の法整備は、保守色の強いアジェンダであり、批判を招きやすい領域です。一方で、日米同盟の再定義や安全保障の現実対応として一定の妥当性を主張できる領域でもあり、賛否は“価値観”に大きく依存します。回顧録はこの価値判断の根拠(歴史観・危機認識)を提示しており、賛成であれ反対であれ、論点を可視化した点は評価できます。

第二次政権期の中心は経済政策、いわゆるアベノミクスです。金融緩和と円安が輸出企業へ有利に働いたのは事実として、同時に観光・インバウンドや地方のサービス業に波及効果があったという自己評価も示されます。ここは中道として、功罪を切り分けたい。資産価格や企業収益は押し上げられた半面、実質賃金の伸び悩みや物価・為替の副作用が家計に与えた影響、財政の持続性という宿題も残った。回顧録の自己弁護的なトーンは織り込みつつ、政策が“誰をどれだけ助け、誰にどれだけ負担を強いたか”という配分の視点を読者側で補う必要があります。

財務省との緊張関係や消費増税の先送りについても、短期の景気下支えという合理性と、中長期の信認・財政規律のバランスという課題が対になっていました。森友学園問題に関する叙述は、政権側の見取り図を知る材料にはなりますが、出来事の全体像を理解するには他資料との照合が不可欠です。ここを“官僚組織の陰謀”と単純化すると、かえって説得力を損ないます。中道としては、行政手続きの透明性、説明責任、メディア報道の検証可能性という制度面の教訓に引き寄せて評価したいところです。

総じて、左派が安倍政治を嫌った理由は安全保障観の違い、統治スタイル(トップダウンと官邸主導)、メディアとの距離、説明責任の姿勢――複数の要因が積み重なって不信が形成された、と見るのが妥当でしょう。同時に、支持側が評価したのは、意思決定の速さ、外交・安保の一貫性、景気対策の“方向性”でした。つまり、評価は“方向性と手続き”の二軸で正反対になりうる、ということです。

回顧録は当然ながら自己史観に寄ります。しかし、筆者の動機や判断の内部論理を直接たどれる一次資料でもある。中道の読み方は、①政策の目的・手段・結果を分けて検討する、②便益と負担の配分に目を向ける、③説明責任と統治手続きの適否を独立変数として評価する、の三点に尽きます。賛否の“感情”ではなく、“基準”で読む――そのとき本書は、現代日本の統治を考えるための実務的な素材として、十分に価値を持つと感じました。

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2025年10月06日

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サラッと1冊の本にまとめてあるけど、これだけ多岐に渡る分野の政治的質問に、豊富な知識は当たり前かつ自分なりの信条を持って答えられる人って本当にすごいと思う。在任中は叩かれることも多かったと思うけど、様々な方面のバランスをうまく取って、憲政史上最長政権を築いた事実は評価されるべきなんじゃないかな。

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2025年09月08日

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長期政権で何だかんだ言われたりしていたが、外交においては抜群のリーダーシップを発揮していたと思う。個人的には評価している。
考え方、その時の判断などが話されていたが、リーダーシップ本としても読めると思った。

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2025年06月08日

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2020年の部分は全リーダー必読と思った。
2020年はコロナの年。
あの年の安倍さんは総理大臣としての職責を全うしていたと思う。
多くのしがらみ、民主主義国家、日本においてできること、できないことがある。
法律、海外との情報格差、事情を知らない外部の無責任な発言などなど多くのパラメータがある中、最終的に責任を取るのは総理大臣であるという覚悟でさまざまな難局に臨んでいたことがよくわかった。

それ以外の部分では少し責任を他者に持って行っているところも散見したが、2020年部分だけでも読んでみたら良いと思う。

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2025年03月03日

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今書いているのは8日の午前四時前だ。去年の今日は大変驚いた。出版当初からとても注目された本だったが、その時点での俺の関心は薄かった。いくら回顧録と言えど、機微に触る発言や質問はさすがにないだろうと思っていたからだ。しかし読んだ人のレビューなんかを見ると、思いのほかしっかりとした本らしい。それで一度は読んでみようと思い、メルカリでなるべく安く購入した。たしか1500円くらいだったと思う。読んでみたら安倍政権のことがよく分かった。特にコロナ対応とか、選挙の話は興味深かった。ダイヤモンドプリンセス号が帰港し、乗客が日本に渡ったとき、コロナが流行するおそれを大いに感じたが、政府としてもとても危惧していたらしい。しかし人権問題などもあって十分な隔離措置を講じることもできず、あのような事態になってしまったそうだ。当初はコロナも新型インフルエンザと同等の感染症だろうと過小評価していたそうだが、感染が広まるにつれて危機感は増し、緊急事態宣言のころには満場一致になっていたそうだ。あの事態に政府の対応は大変骨が折れただろうと想像できるが、本当にそうだったらしい。省庁の連携も十分にはできず、本当に手間取っていたそうだ。このころから大規模感染を予言していたばあちゃんは本当にすごい。あとは選挙の公明党の役割なんかもおもしろかった。保守的な自民党と組織力の高い公明党の連携は、本当に強力らしい。そりゃ創価学会の党であるのだから、組織力は高いだろう。結局統一教会とかの記述は見られなかったが、選挙のためというのが実情だろう。しかし宗教と政治は分離していてほしいものだ。とてもいい本だった。いろいろな資料も付いていて、思わず熟読してしまった。

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2024年11月27日

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安倍さんの評価は色々分かれるところであると思いますが、やはりお話がお上手ですよね。裏話的な話も読めたのが一番の収穫です。

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2024年10月04日

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政治は難かしい
 虚実で飾っている部分や、長として言へない内容もあるだらうが、裏話や正直なところもあり、おもしろい。

 公明党が応援すると票が2割増えて、創価学会に低頭平身だと語ってゐる(笑)。黒川検事長よりも林検事長のほうが親しいと言ってゐて、英語の授業で政治の話ばかりしてゐた講師の話を思ひ出した(ひどいね)。コロナウイルス薬のアビガンを北朝鮮高官が欲したなんて話も、惜し気もなくバラす。

 雇用政策のところを読むと、リベラルな考へも取り入れてゐて、ぜひこの調子で岩盤規制の撤廃や、同一労働同一賃金に取り組んで、メンバーシップを破壊してほしかったと感想してしまった。
 政治は難かしい。他国、他議員、他勢力との均衡をはからねばならない。イデオロギーだけの政治はむりである。

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2024年07月13日

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国の総理が漫画や小説ではなくノンフィクションとして政争や外交を語った本として、読む価値があると思う。2006年の第一次安倍内閣、2012年末から2022年までの第二次安倍内閣の総理大臣としての言い訳、手前味噌の自画自賛も入った回顧録。一生懸命に考えて、総理大臣という職を続けたことは判るが、考えの方向性が私と全く合わないことが良く判った。
・コロナ対応:厚労省の薬務課長が薬事承認の実質的な権限を持っているが、課長クラスの人事権は内閣にないので言うことを聞いてくれません とのこと
薬害エイズで課長クラスが有罪になったので、アビガンにハンコ押すと後から何言われるか判らないから・・・ 緊急時なのだから首相責任で承認すればいいじゃん!あべのマスクはつくれたのに!
・北朝鮮拉致対応:最も尽力してきたこと ・・・拉致被害者は気の毒だが、そこまで国をあげてやることか?ミサイル開発阻止の方が大事なのに、大局をみていないのでは?
・後継者に菅氏支持:岸田支持だったが 妻の昭惠に言われて・・恩が大きかったのでってヤクザの盃か?
・アベノミクス:金融緩和、消費税先送り、→ 国家財政は火の車。つけは後世に
・憲法と自衛隊:集団的自衛権を認める憲法解釈見解を決定。9条に自衛隊を明記したい。→ 専守防衛の方法は他にもあるのでは? 防衛費をSFでよく出てくるバリアの開発につかうとか。憲法改正より実務でしょう!
・トランプとゴルフ:一時間半電話で雑談→愚痴か自慢かわからないが、こんなことで国の命運が変わるのは あきれるばかり。
・森友問題:財務省が勝手にやった。忖度される方はどうしようもない。財務省の策略?→ 脇が甘い。官僚やマスコミ対応がお粗末。弁解の余地はない
・特定秘密保護法:政権が揺らぐのは自民党内で信頼を失うとき。世論の反対が多い時は党をひきしめて法案を成立させる→ 世論が正しいとは限らないが、政治家のおごりが垣間見える。

単なる人気取りではなく、日本という国の将来を考えた内政・経済・外交の舵取りをしたとの自負はわかるが、少子高齢化や国の借金に対する危機感の低さは将来の日本に大きな重荷を背負わせた内閣だったと言えるのではないだろうか?

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2024年06月03日

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安倍晋三さんに対し、好き嫌いや支持不支持に捉われず、フラットな目線で読んだ。総理の決断というものは非常に重く、国の将来を背負った決断を日々行わなくてはいけないのはストレスの極致で、並の耐性ではできないのがよく解る。ただし書中では失敗談がほとんどなく、自画自賛とも言える肯定的な内容ばかりで読み手としては不公平さも感じた。もっと人間臭いところを感じたかったのは少々残念な点ではあるが、それを差し引いても政治家として重大な局面での振る舞いや言動に関して読み応えのある一冊だった。

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2024年02月14日

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安倍氏については特に支持不支持はありませんが、オバマ、プーチン、トランプ、小池百合子氏とのやりとりの様子、興味深く読みました。
長い間総理を務められた事、お疲れ様でした。

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2024年01月10日

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二度の政権によって憲政史上最長の首相在任期間を過ごし辞任した後の安倍くんへのインタビューをまとめたという。欧米では大統領などを務めた人が退任後に回顧録をまとめておくことが半ば当たり前のことだという。在任中に何を思い何をなしたか、下した政治の背景に何があったかを記録しておくことが務めだからといった趣旨。政治家のオーラルヒストリーをまとめている御厨貴さんなども同じようなことを言っていた気がする。安倍くんがいまだ存命であれば、いくらこの本が話題になろうと嫌いなまま読まなかっただろう。よいタイミングという言い方は不謹慎かもしれないが、安倍くんが鬼籍の人となる前にこのようなインタビューが行われていたことはよかったことだ。今後も善悪・好悪ともに語られるであろう安倍くん伝説が一人歩きしないためにも。
そしてこの本、けっこう面白く読めた。1年ごとに回顧していく構成だし、各年のなかでも出来事ごとに細かく項立てされていて読みやすい。インタビューを文字に起こした話し言葉で語られているのも長くはなるものの読みやすさを助けているだろうし、安倍くんが好きな人は話し言葉で安倍くんの思いや考えに触れられるとうれしいことだろう。
読んで思ったのは、何のかんのいっても安倍くんも一門の人だったのだなということ。自分は嫌うあまりに矮小化してみていたなと思ったし、矮小化したままでは(そんなことないけど)安倍くんに太刀打ちできなかっただろう。書中のそこかしこでずいぶん軽はずみな発言、思い上がった発言、相手のことを慮っているんだろうかというような発言が散見される。敵と見なす対象への凝り固まった認識、非難などもどうかなと思うし、それはそれで首相の器としてどうなのとは思うが、それも安倍くんなのだろう。
首相としての戦略や外交の裏側は読んでいても面白かったし、安倍くんなりの考え方をもって新しい日本像をつくろうとしていたことが知れたし、それはかなり奏功したようにも思える。安倍くんは自身がそんなにできる人ではないことに自覚的だったのだろう。だからこその努力もしたのだろうなとも思ったしだい。

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2024年01月06日

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相変わらず敵味方をくっきり線引きし、敵に対してはある意味小ばかにしたような、しかし容赦ないばっさりとした物言い。これぞ安倍晋三である。彼は多数派の政治家だったので、その多数派に入れていた国民からすれば力強い不出のリーダーに映り、少数派に属していた人からすれば、最大公約数を探すことなく容赦なく切り捨ててくる最悪の悪魔に映ったのだろう。強い光は大きな影を生み出す。それでも、自分はこの偉大な政治家が好きだった。まるで安倍さんが生きていて、目の前で話をしてくれているような気分にさせてくれる。そんな一冊。

彼が各国をどう見ていたかも面白い。明らかに中国を仮想敵国としていた。各国首脳に対してトップダウンでここまで「中国は危険」とネガティブキャンペーンを張っていたのは驚きだった。また、ロシアに関しては2022年のウクライナ侵攻前のインタビューであったが、プーチンとは報道で言われているほど蜜月でもなく、油断ならない奴とかなり警戒しながらも領土を取り返そうとしていた。「ロシアは不良で中国と不良仲間」と呼んでいたのには笑ってしまった。韓国にはあまり関心がなく邪魔してこなきゃ良い、付き合う経済メリットもないしどうせ約束守らないし、という感じ。プライオリティ的に下に見ていたようだ。好きの反対は嫌いではなく無関心なのだろう。そして米国。安保/経済両面で明確に国益の主軸に置いていた。メディアの前では親友のように振舞っていたトランプとの関係だが、その奔放さと型破りさを前に相当苦労していたようで印象的だった。

その一強さから忘れがちだが、彼は(第一次内閣の)大きな失敗・挫折から立ち直った人間である。「政権発足当初はご祝儀で高支持を得られるものの、それにあぐらをかいて明確な国家戦略を持たずに政権運営すれば途端に支持を失う」と語っていたが、それはかつての自分に向けていたのかもしれないし、今の時代に向けて言っているのかもしれない。

巻末には安倍さん亡き後の、菅さんと野田さんの名スピーチが収録されている。かつての盟友と好敵手の熱い言葉は、涙なしには読めない。

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2024年01月01日

Posted by ブクログ

コロナになり病気が再発して首相を退任した後、本書の著者らによるインタビューを受けて在任中を振り返った内容を、死後に回顧録としてまとめた1冊。インタビューに答えている形式なので、普段の安倍元首相がざっくばらんに軽く話している雰囲気が感じられた。
よく言われていたように、味方と敵に分けて自分の意見に反対する考えには耳を貸さないような態度なんかも、別に隠さずに話している。ある意味とても素直で正直な人柄を感じたし、同じ方向を見て何かを一緒にするときに担ぐのにベストな人だと思った。
財務省との戦いだとか、自分のやりたいことははっきりさせつつ、戦略的に選挙なども乗り越えて長期政権を維持し、人も惹きつけたと言う意味では、戦後日本の転換点を担った偉大な首相だったということでしょう。ここからが終わりの始まりでなければ良いのですが。ご冥福を祈ります。

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

思ったより面白かったと言うのが正直な感想。
登場人物がトランプさんをはじめ超VIPばかりだから面白くないわけないか。
安倍さんの場合、どうしても光と影があっていろんな意味で賛否両論分かれるけど歴史に残る政治家と言う事実は否定しようがないな。

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2024年02月18日

匿名

購入済み

貴重な記録

一国の首相経験者にあんなことが起きなければ出版もされなかったし、読むこともなかった本。
まだ読み終えていないが、少なくとも安倍さんは財務省のいいなりではなかったことが分かる。
小泉政権時の好青年的な表情からどんどん政治家らしいお顔に変わっていったのが印象深い。

#深い #タメになる

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2023年12月15日

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