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2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に撃たれ、非業の死を遂げた安倍晋三元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。一次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。
オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。
あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った36時間にわたる未公開インタビューの全記録。
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Posted by ブクログ
安倍元首相が、最初に首相の座に就いたのは、ご本人が52歳の時であった。政治家一家に生まれたエリート政治家は、史上最年少で首相の座に就くことになったが、しかし、第1次安倍政権はうまくいかず、ご本人の病気もあり、わずか1年で退陣することとなる。エリート政治家が初めて味わう挫折だった。しかし、ご本人がインタビューの中で応えているように、この経験が、政治家・安倍晋三を成長させ、第2次安倍政権をつくり、そして、その第2次安倍政権も成長させ、史上最長の政権にしたのである。
本書のインタビューでは、その間の出来事について、安倍元首相が忌憚なく話しておられる。私自身は、「アベノミクス」を始めとした安倍元首相の政策に賛成するところばかりではなかったけれども、インタビューの中に現れる、安倍元首相の政治家としての資質・視野の広さ・人間力には感心させられた。本書の最後には、安倍元首相の葬儀の際の何人かの弔辞が紹介されているが、野田元首相の安倍元首相評が、的を得ている気がするので引用する。
【引用】
私が目の前で対峙した安倍晋三という政治家は、確固たる主義主張を持ちながらも、合意して前に進めていくためであれば、大きな構えで物事を捉え、飲み込むべきことは飲み込む。冷静沈着なリアリストとして、柔軟な一面を持っておられました。
【引用終わり】
インタビューで浮かび上がってくる安倍元首相の人物像は、まさにこの通りであった。
本書で、インタビュー以外に心に残ったのは、この野田元首相のものを含む、安倍元首相の葬儀時の弔辞である。野田元首相のものも、心に残ったのが、菅元首相の弔辞には、心を打たれた。悲しみと怒りと無念さに溢れたその弔辞は、安倍元首相の政策を支持した人・支持しなかった人に関係なく、心に染み入ったと思う。
Posted by ブクログ
『安倍晋三回顧録』──「国家とは何か」を問い続けた男の記録
『安倍晋三回顧録』は、単なる元首相の回想録という枠を超え、「日本のかたち」を根源から問い直すような、強い力を持つ一冊だと感じた。政治の舞台裏、外交の緻密な駆け引き、そして一人の人間としての覚悟と苦悩が、飾らない率直な言葉で綴られている。
本書は、生前に36時間にわたる綿密なインタビューに基づいて構成された。安倍氏は、自身の功績も課題も、ありのままに語る。政策の失敗、誤解されたことへの悔しさ――それら全てが、「いかに国を守るか」という強い信念によって貫かれている。読んでいると、こちらも自然と襟を正すような気持ちになる。
「戦後レジームからの脱却」という理念
安倍晋三という政治家を語る上で欠かせないキーワードの一つが「戦後レジームからの脱却」だった。憲法改正を巡る議論、自衛隊の立ち位置の明確化、安全保障関連法の整備。これらの政策は、常に賛否両論を巻き起こしたが、本書では、その背景にある綿密な政治的計算と、彼の強固な国家観が丁寧に語られている。
特に深く印象に残ったのは、安全保障関連法に関する記述だ。「批判を恐れて逃げるのは、政治家の取るべき道ではない」という言葉には、彼の強い覚悟と、同時に孤独が滲み出ている。政治的なリスクを顧みず、「日本を守り抜く」という一点に揺るぎなく軸足を置いた彼の姿勢は、本書全体を通して強く伝わってくる。
外交の舞台裏に垣間見えるリアリズム
トランプ政権との微妙な距離感、プーチン大統領との困難な領土交渉、中国との複雑な均衡戦略――これらの外交の舞台裏も、生々しく、そして詳細に描かれている。安倍外交の際立った特徴は、理想論に偏ることなく、現実と粘り強く向き合うリアリズムの精神だったと言えるだろう。その地道な積み重ねが、「自由で開かれたインド太平洋」構想や、TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、日米同盟のさらなる強化といった具体的な成果へと結実していったのだ。
今の日本と、彼の不在
2022年の突然の訃報の後、日本の安全保障を取り巻く環境は、より一層不確実性を増している。台湾情勢の緊迫化、ウクライナ危機、北朝鮮による度重なる挑発。安倍氏が生前訴えていた「備えの強化」や「国家の責任」という言葉の重みが、今、私たちの胸に重くのしかかる。
菅義偉前総理の追悼に触れて
安倍晋三氏の国葬儀において、友人代表として菅義偉前総理が述べた追悼の辞は、多くの人々の心を深く捉えた。とりわけ、次のくだりは忘れがたい。
「あなたは常に、正しいと信じる道を貫き通しました。そして、日本のために、その命を懸けてこられた。」
かつての官房長官という単なる側近という立場を超え、真の盟友として、菅氏は飾らない言葉で安倍氏の生涯を語った。その時、菅氏が見せた涙と、一つ一つの言葉の重みが、この回顧録に記された数々の決断の重みを、何よりも雄弁に物語っていたように思う。
終わりに
安倍晋三という一人の政治家の功績や思想の全てを、完全に肯定することは難しいかもしれない。しかし、「自分の国は、自分たちで守る」という、一見すると当たり前の言葉を、これほどまでに真剣に、そしてひたむきに語り続けた政治家が、他にどれほどいただろうか。
この『安倍晋三回顧録』を手に取るという経験は、現代日本に生きる私たち自身が、「国家とは何か」という根源的な問いに改めて向き合う機会を与えてくれる。ぜひ、多くの人に手に取って読んでほしい。安倍晋三という一人の男の言葉が、きっとあなたの心の中にも、静かで力強い火を灯してくれるはずだ。
Posted by ブクログ
総理大臣は、そんな事を考えて仕事をしているのか、ということを端的に知ることができた。
数多の決断の中にはミスや失敗もあったのではないか、それでも話の辻褄が合うように上手に誤魔化して話している部分もあるのだろうと想像した。
それでも、一部には発言のミスなどについて正直に謝罪を述べる箇所もあり、総じて正直な内容をお話しされたのだろうと感じた。
いわゆる保守派が何を大切にしているのか。理想を語るだけでいい野党と、現実とのすり合わせをして政策に落とし込まなければならない与党・政府との立場の違いも描かれていたように思う。
最後に掲載されている野田元総理の追悼演説は、よく言われているように非常に良い文章で、胸が熱くなった。
Posted by ブクログ
安倍晋三がどれだけ日本の国益を守るために闘っていたかという事がよく分かる。左翼やメディアに嫌われ続けたが、それでも国民の支持が強かったからこそ、憲政史上最長の任期を務めた日本の歴史に残るリーダー。
特に興味深いのは外交や各国首脳に関する記述。メディアを通じてしか知らなかった、外交の真の舞台裏が描かれており、それだけでも読む価値はある。
理知的で実務派の元弁護士オバマ大統領は、ジョークにも反応せずに直ぐに本題に話を戻したという。銀座次郎でのすし会食では米国の自動車が道中で1台も走っていない事を安倍に文句を行った処、安倍はドイツ車はたくさん走っている、彼らは日本の実情に併せて右ハンドル車を作っているからであって、アメリカの自動車メーカーはそれをしていない、と言うと黙り込んだという。
一方、トランプ大統領は報じられているイメージとは全く異なり、人の話をしっかり訊くタイプで安倍さんは色々なことを相談されたという。中には「ウチの国務長官をどう思う?」といった場合によっては内政干渉と言われても仕方のない答えようのない事までも含まれている。そして、偶然安倍の誕生日に行われた会談では突然照明が消え、ローソクを差したケーキを持ったトランプが突然がハッピバースデーを歌ってくれたという。イランの核開発合意破棄を巡る外交では、対外的に強行な姿勢を見せていたトランプも、同国にパイプを持つ安倍に対しては仲介の可能性を見出しており、事態の打開の道を探っていた事も明かされれている。
安倍は地球儀を俯瞰する外交を標榜していたが、具体的にそれがどのように行われていたかが描かれており、各国の思惑が渦巻く魑魅魍魎な世界において、日本の国益を常に考えて活動していたことが伺い知れる。
また、国内においても敵は野党だけではなく、財務省もそうであったという。彼らは自分たちの意向に沿わない政権がでてくると併記で倒しに来る。財務省は参加に国税庁をもっているので、国会議員を脱税などで強制捜査する協力な武器をもっているのである。党内でも増税を是とする財政再建派が一定数おり、財務省はこうした議員を応援する。
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