あらすじ
『しゃばけ』『まんまこと』の著者が描く、幕末痛快小説!
新銅山の開掘、面扶持の断行、藩校の開設、大型船の造船……。
七郎右衛門は幾度も窮地に陥りながら、”わが殿”利忠の期待に応え続ける。
だが、家柄もないのに殿の信頼を集める七郎右衛門に、悪意が向けられ――。
そんななか黒船が襲来、日本に激震が走る!
新時代を生き抜く知恵に満ちた、幕末最強バディ小説。
解説・細谷正充
※この電子書籍は2019年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
銅鉱山の拡大から始まった大野藩の新規事業は商社機能を持つ大野屋の設立から北前船による海運業、北方蝦夷の開拓へと広がっていき実質石高1万2千石から実質15万石へ。明治維新を迎えるも土井家に忠義を尽くし続けた内山家の大野屋は新時代を迎える。
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実在の大野藩の財政を立て直すべく奮闘する七郎右衛門。
主君土井利忠の政策の断行や部下への思いやりあふれる魅力的な人柄への忠誠心。
銅山で新たな坑道を探す挑戦、新しい学問所の開設。
そんな七郎右衛門が周囲の嫉妬を受けてひどい目にもあったりするなんて、理不尽すぎる。
不可抗力みたいな災難がふってきたりするし。でも、それに対する七郎右衛門の反応に悲壮感がないのは救いだった。
幕末から明治にかけて、長い長い時間をかけての2人の戦いを読み終えて、ほーっと大きく息をはいていた。
本当に、お疲れ様でした。
テーマゆえではあるのだろうけど、七郎右衛門の妻の存在感が薄かったかな。
Posted by ブクログ
越前大野藩は明治になった折に、借財がとても少なかったという。たった4万石、実高2万8千石にしては異例。その要因を取材して構成された作品になる。
身をもっての戦いなどの場面はないものの、借金を返すための事業やら、そのせいでの軋轢、成功させるための大きな博打!など。
生きる上で現在でも行われる経済的な戦い。
武士は金に頓着せぬ物といい、金勘定に長けた人を下に見る風潮があった。そんな中、藩の歳入の10倍にもなる借財を返して事業をおこしてお金を稼いでいく。刀での戦いよりよほどしんどい努力が必要だと思った。
無理難題のような新企画を打ち出す殿だが、種痘や洋式軍備の必要性など、未来への嗅覚はとても鋭い。それに家臣を信頼してケツ持ちをする度量がある。ついていきたくなる、わが殿。
そして主役の内山七郎右衛門、今まで知らなくてすまなかった。
あなたは偉人だ。
4歳ちがいの主従の、武器を使わない精一杯の戦い。
お互いへの信頼が、読んでいてたまらなく心地よかった。
Posted by ブクログ
大人の超青春物語だー。
今の会社の業務なんて目じゃないレベルで、当時の殿と家臣の、共に担う感は半端ないよなぁ、と、最後、じんわりきました。
命掛かってる。
それは、自分も家族も殿も。そして、領民も大変脆弱で、一つまかり間違えば、影響甚大。
藩の経営を、軍事ではなく、政治でもなく、出納・金融・経済の面から切り取った歴史小説。面白かったです。
しかもどうやら、わりと史実らしい!という驚き付き。
そろばん武士道、という、別の作家さんの本で、同じ人物が取り上げられているらしいので、是非読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
お金のやりくりの話が多いから 読んでで自分まで財布の紐を締め直してしまう
七郎右衛門は幸せな人生だったなぁと。中々こんなにいい上司?には出会えない
幸せ者だ。
Posted by ブクログ
激動の幕末から明治の世へ、世の中の動きにつれやり方は変わっても七郎右衛門の心の基は変わりないように見える。殿のため藩のため、それだけを見据えて歩き続けている。弱気な時も迷う時もあったろうに芯のところには粘り強さというか頑固さというかしっかりとした物があったのだろう。
そして、尊敬でき認めてくれる”わが殿”だったのですね…
Posted by ブクログ
後で調べるまで、恥ずかしながら大野藩や主人公が実在の存在とは知らなかった。
主人公は悩みはするものの次々に事業に成功して更に樺太開発まで手を出すなんて、まるでIF戦記を読んでいるような気分だった。
武士の商法と馬鹿にされるが、幕末の激動の時代に故郷の存続のために武士が商売に挑み、大政奉還後も旧藩士の生活を守ることができた。打出の小槌の完全な勝利ですね。
素敵な話でした。
Posted by ブクログ
名君と言われる土井利忠の藩政改革を支えた財政は、大野藩の特産品の取引で作られた。
短期的施策と中長期の施策。通例、常識の枠を越えた投資。そして成功に導く実行力。今の日本にも゙欲しいねぇ。
Posted by ブクログ
「米」本位制から脱却できなかったことが、武士の時代の終焉に繋がった。
日本史の授業に出てくる「○▲改革」は緊縮財政ばかりで積極財政は稀なのだろうか。
経済発展の段階というものを考えれば、現代の感覚で批判しても詮無い事だが。