【感想・ネタバレ】天使も怪物も眠る夜のレビュー

あらすじ

めくるめく未来版「眠り姫」の物語
――吉田篤弘が挑む、かつてない群像劇!

2095年、東京は四半世紀前に建てられた〈壁〉で東西に分断されていた。曖昧な不安に包まれた街は不眠の都と化し、睡眠ビジネスが隆盛を誇っている。
そんな中、眠り薬ならぬ覚醒タブレットの開発を命じられた青年・シュウは謎の美女に出会い――。

文庫版特典として、「あとがき」と「もうひとつのエピローグ」を収録。
〈螺旋プロジェクト〉の1冊としても話題!

【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みができます】

※〈螺旋プロジェクト〉とは――
「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画


〈螺旋〉作品一覧
朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』
天野純希『もののふの国』
伊坂幸太郎『シーソーモンスター』
乾ルカ『コイコワレ』
大森兄弟『ウナノハテノガタ』
澤田瞳子『月人壮士』
薬丸岳『蒼色の大地』
吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』(本作)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

螺旋プロジェクト(私の中で)最後の作品。

今まで読んだ他の7作品よりも、海と山の対立が前面には出ておらず、途中まで螺旋プロジェクトということを忘れそうになるほどだった。しかし終盤に行くほどその仕掛け(?)が分かり、これまでの7作品が紡いできた最終着地点として感慨深い作品となった。
登場人物が多く、文体も結構独特なので慣れるまで時間がかかったが、このワールドにハマると結構面白い。「未来」にうってつけだったのではないか。最後のあとがきを読むとまた一段と感慨深かった。


【最後に螺旋プロジェクト全体の感想】
このプロジェクトを知ってから1冊ずつ読み進めるのが本当にワクワクして面白かった。
同じ設定でも、作家さんによってこんなに変わるものかという面白さもあったし、初めて出会う作家の方もいて新鮮だった。

螺旋プロジェクトは8作品同時に連載されていたものを今回文庫化したようなので、1冊ずつ読んだ今回と、8作品同時にちょっとずつ読み進めたのではきっと感想も変わったと思う。特に本を跨いで出てくる共通のキーワードや描写などは、文庫だと1冊目に読んだ本では分からない。
第2弾もあるようなので期待したい。あー終わっちゃった!トートバッグが届くのが楽しみだ。

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2023年04月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〈螺旋プロジェクト〉の一冊。

〈螺旋プロジェクト〉とは
「共通のルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家=朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画である。
ルール1 「海族」vs.「山族」の対立を描く
ルール2 共通のキャラクターを登場させる
ルール3 共通シーンや象徴モチーフを出す
(中央公論新社HPより)

私はクラフトエヴィング商會も吉田篤弘も、その作品は大好きだということを先に明言したうえで、この作品には全くハマらなかったと言わねばならない。

細かなディテールにも手を抜かない、精密な作品作りが彼の特徴であると思っていたのに、この作品は必要な時に箱から出して、出番が終わると箱に戻される人形の芝居のような嘘くさいような薄っぺらいような違和感がずっとあった。
後半、それは作者の思惑のうちだとはわかったが(そもそも登場人物の一人は元腹話術師である)、それでも面白さは微塵も感じられなかった。

まず、伊坂幸太郎に引っ張られ過ぎたのではないかと思う。
大勢の登場人物が、ぶつ切りのシーンの中で縦横無尽に動き回るのは伊坂幸太郎の得意パターンであり、吉田篤弘は、周辺部分を丁寧に書き込むことによって登場人物が浮かび上がってくるような作風と思うので、どうにも文体が馴染んでいないような気がする。
そしてキモとなるのが『ゴールデン・スランバー』だよ。
そこまで伊坂幸太郎気にしなくていいのに。

私は突拍子もない設定というのが割と好きだ。
なので、壁で分断された東京というのも、もっとうまく世界に溶け込んでいれば、受け入れるにやぶさかではない。
けれど、舞台が2095年、今からたった70年後に、ここまで東京が荒廃しているのに、壁を作った理由をもうみんな忘れているというのは信じがたい。

そもそも東京23区だけの問題なのだ、壁は。
じゃあ埼玉なり神奈川を経由すれば、交流が途絶えるわけがない。

加速度的に進歩する機械文明に人間は追いつくことができない、というので科学の発展を止める…どころかある程度後退させる〈レイドバック〉が施行された、という設定なのだが。
それが東京だけのことなのか、日本全体のことなのか、世界中の国が「いっせーのせ」で施行したのかは明らかではない。
〈レイドバック〉という概念が政策として浮上する時間、政策として一般市民に浸透させる期間、実行から実効までにかかる期間、を考えると、とても2095年では無理だ。

突拍子もない設定はいいのよ。
その世界で破綻さえしていなければ。
でもこれは、破綻してるでしょう?

全人類が、「いっせーのせ」で手放せるのなら手放したい核兵器でさえ手放せないのに、便利このうえない機械と情報を手放せるか?
だれが責任を取る?
システムを手放すための、壁を建設するための、金と人手はどうやって作った?

読めば読むほど疑問が頭を駆け巡り、目は文字の上をただ滑っていく。
残念。

余談だけれど、私はサルを、脳内で妻夫木聡でイメージしていた。
マコトもキングもいないけど、舞台は池袋じゃないけど。
だから、『もうひとつのエピローグ』でのサルの扱いに衝撃を押さえることができない。
慟哭。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

螺旋プロジェクトの最終話的なもの。
今までの海族と山族が近くにいたら気分が悪くなる、みたいな設定どこ行ったん?と思った。
仲良くなってめでたしめでたしかと思ったけど、伝承では東京がなくなる一因にもなったらしいから、結局また別の時代では争ったんだろうな、と思った。
個人的には、キャラ立ちしてる登場人物が何人も出てくるのが少し読みづらく「え?この人いつ出てきたっけ?」と見返しながら読んだ。

螺旋プロジェクトの全体を通しては、共通のシーンである『時は夕暮れ、何かが壊れる時──』っていうのが最後まで「ここか!」ってのが分からないまま終わってしまった(笑)

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2023年03月20日

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