【感想・ネタバレ】塩と運命の皇后のレビュー

あらすじ

50年ぶりに湖の封印が解かれるとき、追放された悲劇の皇后の伝説が幕を開ける――。歴史収集の旅をする聖職者チーは、ある時立ち寄った湖のほとりで、ひとりの老女に出会う。亡き皇后の侍女だという彼女に導かれ、チーは皇后が幽閉されていた屋敷を訪れる。そこで老女は思い出の品々を手に語り始める。美しく残酷な真実と運命の物語を……。「あの方には異国風の美しさがあり、それはあたかも私たちには読めない言語のようだった。肩まで垂れた長い二本の三つ編みは墨汁のように黒く、顔は皿のように平らで、完璧に近い円形だった」――著者デビュー作にして2021年ヒューゴー賞受賞作。全2篇。

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Posted by ブクログ

最近こういうのは読んでなかったのだけど、カバー絵が素敵だったので買ってしまいました。トラと同じ気持ちで、それで?それで?って次の展開が気になって一気に読みました。帯にも書いてあったけど、「皿のように平らな顔」ってのは、我ら平たい顔の一族のことかね。

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2024年07月29日

Posted by ブクログ

1本目は読みにくく、「これは挫折するかも」とすぐに思いました。
でも内容は、皇后の辛酸を嘗めた歳月の長さを肌で感じるようだったし、舞台となる架空の世界も、西洋よりは私たちにもう少し近い国の話のようであり、なかなか味わい深かった。
2本目は逆に、どうなるのか先が気になって一気に読めました。聖職者たちと一緒に焚き火を囲み、その話に夢中になって耳を傾ける1人になった気分になりました。

夜に読んだのも良かったのかもしれない。
時間がたっぷりある時に、気長に読む本かなぁ。

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2023年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

二篇のうち、一篇目「塩と運命の皇后」は、幻想文学的でわたしには少々難解だった。聖職者チーと記録する鳥や、老女ラビット、その所有する思い出を纏った小物の数々から語り出されていくひとつなぎの話たち、その中で語られる皇后ーーパーツは魅力的なのだが、どうも好きになれそうにないような味で、これが賞を取るならヒューゴー賞も寝ぼけたものだと思ってしまった。しかし、二篇目「虎が山から下りるとき」は三姉妹の虎とチー、スーウィー、古代象の緊迫感、語られ、次第につよくただされていく物語に、ぞくぞくした読書の楽しみを思い出させてもらった。物語の注にもあったので書いてしまうが、雌虎と学者の卵の女学生の恋、スーウィーがチーに投げかける自由な響きも面白い。作者がクィアであるというのもうれしい。新しい物語が書かれていくのはよろこばしいことだ。……わたしが求めるのは、必ずしもそれでないことは於くとして。

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2023年06月07日

Posted by ブクログ

2021年のヒューゴ賞中長編部門を受賞したファンタジー作品。著者であるアジア系アメリカ人女性の描き出す世界は中国やチベット、中央アジア、小アジアに近いような世界観で、まだ亡霊や人に変態する虎や、古代象(マンモス)などが普通に出てくる。内容的にはタイトル作の「塩と運命の皇后」と「虎が山から下りるとき」の二編がおさめられている。主人公となる大寺院の聖職者、チーが物語を語り、そして物語を聞いて記録することを職務としており、その行為が二篇とものキーとなる。魅力的な物語(の中の物語)と、エキゾチックな世界観に、続編の刊行を望まずにはいられない。

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2023年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 こうした枠物語は大好きです。
 一遍は物語りを聞き取る。
 もう一遍は自らが物語を語る。

 カターサリットーナーガラやマハバーラタ・アラビアンナイトがお好きな方にお勧めしたい一冊です。

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

ファンタジー世界のなかで語られる伝承や伝説を聞き取るという、入れ子構造のような濃密なファンタジー作品集。

舞台となる現在の時系列のファンタジーの世界観ですら全容が語られていないのに、さらにその世界のなかの伝承や伝説にフォーカスを当てます。
書く側からするとかなりの想像力と強固な世界観が必要となる作品に違いない。

それなのに作品の世界観に破綻を感じることもなく、自然と話に入っていけました。
何気ないふうに物語は展開していくけど、実はこれって相当すごいことをしている作品なのではないかと思います。しかも中・短編のページ数で……

収録作品は2編。追放された皇女の伝説をかつての侍女が語る表題作と、言葉を話す虎が、人間界に伝わる虎の伝説を語り直す『虎が山から下りるとき』

表題作は侍女の語りを通して、皇后の気品や存在感がくっきりと浮かび上がる。
世界観や話の展開はもちろん、何より侍女の語り口がよかった。懐かしさのなかに憧れや恐れといった様々な感情を秘められているのをなんとなく想像させる。そのすごみを感じます。

『虎が山から下りるとき』の試みも面白い。人間と虎。同じ伝説が伝わっていても、そのニュアンスや話の細部は大きく違っていて、それをすりあわせていくと伝説がまったく違ったかたちに変わっていく。

ミステリ的な面白さもあるし、一種の恋愛もの、寓話としてもそれぞれの見方から解釈が分かれていくのが面白く読めました。

作品の出来については文句なしだけど、惜しむらくは収録作品の少なさ。2編ではあまりに物足りない…。
4~5編作品が収録されていれば、間違いなくこの世界にはまりきっていました。

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2022年11月15日

Posted by ブクログ

きっとこれから長く続くでしょう。
翻訳がチョット残念に感じる。
英語をカタカナで表記していることに意味があるのだろうか?

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2022年10月14日

Posted by ブクログ

これはこれは極上のシノワ風味ファンタジー。転生したら後宮の悪役令嬢みたいな流行りのエセ中華とは違います。
2編の中編からなり、これがほぼデビュー作とちうから恐るべし。歴史伝承を記録する役割で各地を旅する年若い聖職者チーを中心に、愛と裏切りの逸話が語られていく。
世界観や道具立てもよいが、女性が徹底的に主役であるところがうれしい。時には女つーか雌虎と愛を交わしたりね(姿は人だが)。
これは漫画にするなら、諸星大二郎先生にオドロエロく描いてほしいわあ。

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2022年09月28日

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