あらすじ
一気読み必至。常識が変わる生物学講義!
生物にはオスとメスという、異なる生殖器官をもった性が別個に存在するのではなく、オスとメスとはじつは連続する表現型である――生物の「性」の本質をそのように捉える驚きの研究が、生物学の最前線で進んでいる。逆の性に擬態して生きる鳥やトンボ、何度も性転換する魚、ホルモンで組織を操るネズミ……。興味深いいくつもの事例と、私たち生物の雌雄が形作られる仕組みとともに明らかになるのは、「生物の性は生涯変わり続けている」「全ての細胞は独自に性を持っている」という驚きの事実だ。第一人者である著者が、生物の体の精密な構造とそれを駆動するメカニズムを平易に解き明かす。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
オスとは何でメスとは何か?
性スペクトラムという最前線 諸橋憲一郎 NHK新書
全部で100%の内
オスが〜%でメスが〜%という数え方ではなく
100%のオス度の内〜%という数え方をするらしい
細胞一つ一つにオス度があり常に変化している
そのバラツキを調整するためにそれぞれ専属のホルモンが仲をとりもつのだと言う
Posted by ブクログ
とても楽しい。やさしい語り口で読みやすいので中学3年生ごろから読める。生物学、医学基礎研究の楽しさがわかるので、進路選択前の高校生にもおすすめ。遺伝子に関しても分かりやすく学べる。
Posted by ブクログ
遺伝子とホルモン分泌によってオス・メス化、脱オス・脱メス化がされることで、性がスペクトラム上に決定される。
この原則によって、性指向、性自認の多様性の蓋然性が示される。
なるほど人間の直観的な理解というのは往々にしてアテになるが、また往々にしてアテにならない。社会科学だとか、理系の基礎研究だとかの重要性を「直感的」に理解するためには、こういう「目から鱗」を体験するのが1番いいかもしれない。
Posted by ブクログ
トランスジェンダーは人間だけの問題なのか。
男と女の狭間に存在する生殖における生を繋ぐ駆け引きでもあり、同性同士の競争であり、そのことが承認欲求や自己防衛本能、そのための集団化戦略だという事を考えれば、「人類の抱える悩みの根源は人間関係にある」とアルフレッドアドラーは言ったが、そのもっと本源には「性差」があるのだとも言える。トランスジェンダーを考えるという事は、「性差」とは何かを考えるという事にも近い。
性にはグラデーションがある。女を好きな男っぽい男。女を好きな女っぽい男、男を好きな男っぽい男、男を好きな女っぽい男、どちらも好きな・・・と、身体的な男性だけでも、複数パターンが存在する。人間に関しては少しずつそうした存在が市民権を得てきているが、この男と女という二つの性を対立する表現型として捉えることが必ずしも適切ではないと思わせるような生物が、実は自然界に数多く存在する。
例えば、エリマキシギ。襟巻とかげのような襟巻をもつ、シギ科の鳥だ。こいつが、「メス擬態型オス」という生存戦略を取る。これは面白い。本格的なオスっぽいオス(男の中の男、的な)存在は、ライバルのオスっぽいオスと競争になる。しかし、「メス擬態型オス」はメスにそっくりなので、オスから追い出されない。そして、強そうなオスの目を盗んでメスと交尾することで、自らの遺伝子を残してきたのだ。
女装しながら女性を狙う。何だか最近こういう事件があった。この女装家は被害者なので、徐々にメディアの論調は変わっていったし、例として不謹慎だが、率直に言うと私が思い出したのは、週刊文春に「女装はするけど、好きなのは女の子」と書かれたとある札幌の事件である。
で、こういう存在って、人間以外にも結構いるという話。それだけではなく、必要に応じてメスになったりオスになったり。オスを吸収しちゃったり。人間だけが、男女を単純化して捉えて、その古びた物差しで測りえない存在を異物として扱ってきたのかもしれない。しかし、一方で、人間は知恵を働かせて見抜くのだから、そうした擬態による生存戦略に対して危うさを感ずる本能も当然である。
だからこの問題は難しい。
Posted by ブクログ
私達にある2つの性。言葉にすると、2つにしっかり別れた、別個のものと感じる。
しかし現実世界ではそうだろうか?
2つの性の関係について、科学的知見から語ったもの。
面白いし、ラベリングの理解しやすいという良い点と、良くない点について考えるきっかけになった。
Posted by ブクログ
精子を作るのがオス側で、卵を作るのがメス側で、性別は両極端だけではなく、間に100%から0%までスペクトル上に分布している、
性ホルモンと遺伝子がその位置を決める、
という話。
魚の中にはオス側からメス側にジャンプするものもいる。
人間においては成長過程でスペクトル上を移動するのが一般的である。
性ホルモン受容体遺伝子に変異が起きて、ホルモン受容体の機能が完全に消失するのが性分化疾患の一例で、性自認の変化につながったりする。
「男は〜」「女は〜」みたいな大きな主語で語ることに意味はないということはよく分かる。
Posted by ブクログ
性は連続する表現型として捉えるべきという性スペクトラムの概念を知り、前提に考えることによって、オス・メス(男・女)という2極だけでは理解しづらい事柄、現象、行動について、より正しく受け止め、理解ができるようになると思う。性の意味合い、性とは何なのかを改めて考えるきっかけになった。生命の不思議と奥深さに敬意を示したくなる。多様な性の存在を認識することが、多様性の尊重の第一歩となり、豊かな社会につながっていくのだろう。
Posted by ブクログ
性スペクトラムは人間では最近の概念だが、生物的にいうと進化の過程で当たり前に取り入れられてきた概念であり、サバイブするために必要とされている考え方ということがわかった。つまり、人間は遅れてるんだな。早く男・女という考え方がもっとニュートラルになったらな…
エリマキシギのオスとメスは、縄張り型・サテライト型・メス擬態型オス(それぞれ、ジャイアン・スネ夫・のび太っぽい)がいる。縄張り型は1番強いので、1番にメスを選び交尾する。サテライトはメスが複数いる時に、おこぼれをもらう。メス擬態は見た目がメスっぽいので追い出されることもないので、安心して交尾をする。おもろ。
性は生涯変化する。乳児は性器以外特徴がないため、ニュートラル→第二次性徴を経てオス・メス100%に→老化とともにニュートラルに近づく。
カクレクマノミは状況によって自在に性転換を行う。
チョウチンアンコウのオスはメスの10分の1しかない。メスに食いついたオスはメスに吸収され、精巣だけが残る。
シャチやクジラは生殖可能年齢を超えた「おばあちゃん」が長い経験から餌が豊富な海域を知っているため、餌が少なくなった時期にその海域へと群れを導くことで、群れに利益をもたらす。
ハダカデバネズミは、体が大きな女王のみが発達した卵巣をもち、繁殖することが可能で、その他の小型のメスは卵巣が発達していないので子供は産めない。女王は女性ホルモンがたっぷり入った糞を他のメスたちに食べされることで、養育を担わせている。
Posted by ブクログ
一気に読んだ。おもしろかった。性スペクトラム。
以下メモ。
オスとメスは対局な存在ではない。
エリマキシギ3種のオス、ブルーギルスニーカーなど。メス擬態化のオス。オス何%?これは生涯変わり続ける。
環境、化学物質による人工的なメス化が進行。
魚、一夫多妻制はオス縄張り、小さいオスが100%メス化、たまたま出会ったオス同士でも子孫が残せるようになど。
チョウチンアンコウ、オスはメスの1/10でメスに吸収。
ウミガメやワニは産んだ卵の温度で性別が決まる。温度依存的性決定。
ハダカデバネズミは女王ネズミしか子ども産まない。小さい周りのメスネズミは女王が産んだ子を育てる。女王の糞を食わされてホルモンを上げて。
おじいちゃんは役に立たないから短命。
Posted by ブクログ
オス/メスはゼロイチで確定されているモノじゃなくて、一個体でも行ったり来たりするんだよ、という話。昨今の性多様性みたいな風潮に対して、生物学としてどんな知見があるのかと期待して読んだが、明確な答えは無かった。なので、ちょっとモヤる感じ。丁寧な説明で、良い本だとは思うけど。
内容としては、前半は人間以外の動物における性の動態の事例。鳥・魚・昆虫などを例に、メスに擬態するオスやオスに擬態するメス、状況によって一個体でもオスになったりメスになったりする魚がいたりと、かなり興味深い。
中盤は、性を決定するメカニズムとして、遺伝子と性ホルモンが解説される。これに関しては、割と常識的な話という印象。「第二次性徴までの子供は見た目の男女差って小さいよね」とか、「すね毛が生えてない男性もいるし、ガタイがデカくて筋肉ムキムキな女性もいるよね」というのが、生物の仕組みとして裏付けされる。
最終章では、性指向や性自認などの脳の問題が取り上げられるのだけど、これに関しては「現時点では、よく分からん」ということで、少し肩透かし。今後の研究が待たれる、という感じ。
総論。
帯に「常識が変わる」とあるけど、人間の性の話については、常識的な説明で誇大広告気味かな。環境によってオス/メスを行き来する魚がいたとしても、人間はそうなってはいないのだから、それをもって人間社会の常識が裏返る話ではない。というのが自分の感想。
でも、丁寧に解説されているので、本としての好感度は高い。そんな感じ。
Posted by ブクログ
「性は2つの対立する極として捉えるべきではなく」とある割には、オスメスが両端にある1軸のスケールであることに変わりはなく、ゼロイチのデジタルではなくてオスメス両端が100で真ん中0の連続値、というだけで拍子抜けした。
オス軸メス軸の交差で2変数の4象限じゃないんだ?そういう表現の方が適切な場合もありそう。
細胞に性がある、という話も、性ホルモン受容体の遺伝子の活性化の効かせ方に性差があるから、だとしても、性差を見えなくするくらいの個体差=遺伝的多様性もあり得るのが遺伝子の発現では?
一度オス寄りまたはメス寄りにスイッチ入ったなら一つの個体に0を越える細胞はあり得ないってことだろうけど、そのオス100%メス100%の特徴の最大値の位置取りは何によってそうなっているわけ?という疑問。細胞の性がどちら寄りか?は雌雄での遺伝子の発現のしやすさの差→機能差、というのはわかるけど、性別でしか生まれない差なのか?とか。
性差があるとして、じゃあその性別での分布は?ていう。だいぶ重なってんじゃね?
Posted by ブクログ
生き物の知識が増えてくると、不思議だなあと思うことがいろいろと出てくる。
オスとメスの多様な在り方もそのうちの一つ。
・カクレクマノミは多くがオスでもメスでもない個体で、群れの状態によりオスになったりメスになったりする。
具体的には、群れの中で1番大きいものがメスで2番目がオス、その他はオスでもメスでもない。
メスがいなくなるとオスがメスに性転換し、その他の中で一番大きい1匹がオスになる。
・オキナワベニハゼはオスになったりメスになったりする。
メス同士が出会うと大きなメスがオスになり、オス同士が出会うと小さなオスがメスになる。
・ウミガメやワニは孵化するまでの温度の違いでオスかメスかが決まる。
・昆虫はオスがいなくてもメスだけで子孫を残せるものがたくさんいる。
オス・メスの識別は、精巣を持つのがオス、卵巣を持つのがメス、という定義らしい。
だが、そのように2極化するのではなく、両者は連続していてその中でどの位置にいるかと考えるのが「性スペクトラム」。
本書はこの仮説をもとにして遺伝子と性ホルモンの研究・調査の結果を説明したものだ。
ときおり男性脳・女性脳という言葉を聞くが、魚での研究でも脳に性差があるという調査結果が得られている(らしい)。
「性自認」と「性志向」が脳の性を議論するのに重要らしいが、これはヒトで調べるのが信頼性が高そうだと思う。
魚に性自認がありますか?と聞くことはできないですから。
自分は「男」「女」「男でも女でもある」「男でも女でもない」が性自認。
自分の恋愛対象は「男」「女」「男と女の両方」が性志向。
だが、脳の研究がまだまだ進んでいないので、脳の性の識別などはまだまだ先のこと。
何をどう調べればいいのかも分かっていないので、膨大な数の調査をヒトで行う必要がある。
脳を調べられて、「あなたは男でも女でもなく、恋愛対象は男と女の両方ですね」などと診断されることは当分ないでしょう。
生き物は複雑すぎて不思議なことだらけだ。だから謎を解きたくて興味が湧くのですけれど。