あらすじ
28歳の若き研究者、瀬戸口の計算式は、マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることをしめしていた。十年前の神戸での震災、あのとき自分は何もできなかった。同じ過ちを繰り返したくはない。今、行動を起こさなければ……。東京に巨大地震が起こったら、高速道路は、地下鉄は、都心のビル街は、いったいどうなるのか。最新研究に基づいてシミュレーションした衝撃の作品。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
"違う、と瀬戸口は思った。しかし声に出しては言えなかった。人間は本来自然の一部なんだ。自然とともに生きてきた存在なんだ。それがいつの間にか、人間だけが特別であるかのように考えるようになった。自然を支配するとか、共存するとかおこがましいような気がする。"
科学は凄まじく進歩しているけども、地震の予知は未だ為せていない。
けれども、今の私たちが予知されてどれだけ本気で準備しようとできるか。
この本ではそんな私たちの怠慢を指摘しながらも
いつ来るかわからない地震に対して"そのための準備さえしておけば、地震なんてけっして恐ろしいものじゃない"と言い切っている
被害は免れなくても、それを最小限にする事はできる、と
あと、学者の縦社会の弊害を浮き彫りにしている
今回は判定会を信じるか無名の学者を信じるか、という場面もあるが
少し緩くなったとはいえまだまだ上に物申せない場所が多い
全てを許すわけではないが、間違いを素直に認め、正しいことを正しくやろうとすることができたら。それが理想なのだろうな。と思った。
Posted by ブクログ
本著は、阪神淡路大震災後、東日本大震災前に書かれたものである。地震予知の技術的及び心理的な難しさというのがよくわかる。我々は地震の恐怖について、どこまで実感しているのか。私の住む北海道でも大震災があり、電気が数日に渡りストップしたものの、自分の身の回りは電気が復活したとたんに通常を取り戻した。どこかに「あのクラスの地震があっても、生活にはそんなに大きな支障はなかった。」という油断の気持ちがないだろうか。油断自体を悪と言っているわけではないが、結局油断によって身を亡ぼすのは自分たちなのだ。生き残るために、常に備えを万全にしておかなければならないことを感じた。
物語としては、地震の中でもそれぞれのポジションで役割を必死で果たそうとする人々を見事に描いており、楽しく読めた。結局みんないい人になってしまったので、もっと悪役がいてもいいかな、とは思ったが、全体的には面白かった。
Posted by ブクログ
こういう地震などの災害系は難しい科学的な事が書かれているパターンが多いんだけど、これはその辺が最低限にされていて、とても読みやすかった。
しかもリアリティでもあるし、地震の怖さを認識できます。
これが東日本大震災より前に書かれているというのがスゴい。
逆にこの作品が東日本大震災より前に映画になるなどして話題になっていたら東日本大震災の対策も変わっていたのかもと思ってしまう。
自分も東日本大震災の時には関東にいたからより物語に入り込んでしまった。
おすすめ!
Posted by ブクログ
東京直下型地震を扱った作品。
地震予知と地震に伴う被害、その中での人間模様。
どれもしっかりと読ませてくれた。
先日、南海トラフ地震に伴う臨時情報が出たが、この作品を読むことでさらに身につまされる思いがした。
自然によって引き起こされた事は、自然の復帰力みたいなものが働く。他作品でも読んだが、何かそういった事が起きるのは願望込みでも、確かにそうかもと思わされるな。
そんな中で人間はどうなるのか、どうするのか。人間という大きなくくりてはなく、自分や家族などの単位でもどうなるのか、色々と創造が働く作品でした。
ただ、地震が起きるまでが長かった。
地震予知やそれに伴う組織について、地震予知の価値や扱い方などについて強調したかったのだろうが、そこへの力のそそぎ具合が自分のこの作品の期待とは少しずれていた。
地震発生後の都市でのパニックやそれへの対応などがもうちょっと読みたかったかな。
Posted by ブクログ
マグニチュード8規模の首都直下型大地震をテーマとした衝撃的な作品でした。
東京に巨大地震が起こり高速道路・地下鉄・都心のビル街がどうなるのか変わっていく様を綿密な文章で書かれていてかなり圧巻でした。
Posted by ブクログ
巨大地震を扱ったヒューマンドラマ。
救出にむかったヘリが墜落するシーンが圧巻で今でも鮮明に覚えている。
自然からの警告を聴ける人でありたい。情報は隠蔽するものではないはずだ。
人は相手を切り裂く鉤爪も持たず、相手を噛みちぎる鋭い牙も持たぬ。
では何が強かったのか?
①集団の力。②創造力。
人は集団の中で類まれなる個としての力を発揮し社会を支える生き物だと思う。飛行機、自動車、携帯電話などは、最初は頭の中の産物で、それを形にしてきた。
間違っていれば文明は滅ぶ。幾度となく繰り返されてきたのは歴史を見ても明らかだろう。どんな世界を自分が亡き後も残すのか?改めて問いたい。
Posted by ブクログ
東京都は防災マニュアルと一緒にこの小説を配ったほうが良いのでは。
色々な場所やタイミングで被災する人々を描いており、自分ごととしていつか来る首都圏の地震をシュミレーションすることが出来る小説です。
東京都民なら読んでおくことをオススメします
Posted by ブクログ
この作品の後に東北の震災が起きた 実際の災害は何の斟酌も手心も加えてくれなかった 地球と共存なんてオコガマシイ でも俺も17回忌のクチだから・・・・
Posted by ブクログ
所々で人間のやるせなさを感じた。
まず1つは地震が起こる前、地震シミュレーションに対して全く見向きもしなかったところだ。阪神淡路大震災が起こる前に失敗して以来、シミュレーションに対する信頼が無くなったのか、1ヶ月以内に地震が起こるという差し迫っている状況でも耳を傾ける人間は少なかった。人間は過去の失敗の怖さから新しい技術に対する不安感を払拭できないのだ、ということを突きつけられ、やるせなさを感じた。
また、実際に予告ができたとしてもあの時こうすれば良かった、というように後悔が残ってしまっており、全体の数字で見て被害を減らすことができたとしても、被災者遺族にとっては何も意味がない。マクロ的に見てよくても、ミクロで見た時にどうしても後悔が残ってしまうということに結局人間は無力なのだということを感じてしまった。
しかしこの本を読んで、地震に対する危機感を思い出すことができた。
非被災者は東日本大震災のことを忘れかけていて、地震に対する危機感が薄くなっていると思うので、防災について考えるきっかけになってよかった。
Posted by ブクログ
マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることを予知してしまったら、、、。いつか起きると認知しながら起きて欲しくない心理で見なかったことにしてる『今』読んでおきたい一冊。
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
28歳の若き研究者、瀬戸口の計算式は、マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることをしめしていた。十年前の神戸での震災、あのとき自分は何もできなかった。同じ過ちを繰り返したくはない。今、行動を起こさなければ…。東京に巨大地震が起こったら、高速道路は、地下鉄は、都心のビル街は、いったいどうなるのか。最新研究に基づいてシミュレーションした衝撃の作品。
Posted by ブクログ
三つの大陸プレートが重なる日本では、地震の脅威から逃れられる場所はありません。
建物が倒壊する大地震が、いつか襲ってくることを受け入れて、自分にできる備えをしておくことの大切さを改めて痛感しました。
非常食、ファーストエイドキットの準備。そして、伝言ダイヤルの使い方。個人でできることはしておこうと思います。
Posted by ブクログ
"首都直下型地震、M8(マグニチュード8)クラスの地震が発生。
地震の予知の科学的根拠、現在の学問的な位置づけ。
行政の対応。交通網への影響。火災発生のメカニズム。
など、小説の中で語られる。
個人の地震への備えについては多くは語られていない。
行政に携わる人には参考になるだろう。
この小説は文庫本の末尾には2007年8月が初版。
3.11以前に書かれた小説。3.11東日本大震災を経験した後に読むと被害想定を実感をもって想像できる。
この小説では原子力発電所については触れていない。
放射能についての正しい知識も我々が学ぶべき事柄になった。
小説として楽しめ、防災意識の啓蒙にもなる。"
Posted by ブクログ
瀬戸口誠治、28歳。
10年前、阪神淡路大震災で家族を亡くした経験から、地球物理学を学び、学会では異端視されている地震予知を可能にするシミュレーションプログラムを研究テーマとしている。
12月3日、瀬戸口は静岡の研究施設で観測した群発地震のデータから、約半年後にマグニチュード8(M8)クラスの首都直下型地震が起こると予測するが…
この著者の作品は初読。
林檎飴甘さんのレビューを読んで、手に取った。
あらためて、『いいね!』させていただきました。
いい本に出会えました。感謝。
瀬戸口、亜紀子、松浦の、阪神淡路大震災当時高校生だった3人。
当時50代の働き盛りだった、遠山教授、植村教授、堂島議員。
家族を失い、心身に大きな傷を負いながらも、それ以上に『次の震災』には負けまいと心に刻んだ10年だったのだろう。
阪神淡路大震災、東北震災と原発事故。
そして今現在、熊本の震災に続いての集中豪雨が、またたくさんの人々の運命を断ち切り、また生き残った人たちの心に運命を刻み、変えていっている。
大災害に限らず、事故や病気や…あらゆる悲劇は、いつ起こるかわからない。
いま、何だかんだ生きて動ける幸運な私が、何を言っても…という気持ちもあるけれど。
それでも、いつか来る災いからは誰も逃れられないのなら、受け止める力、再び立ち上がる力、誰かのために差し伸べる力を持ちたいと思う。
Posted by ブクログ
日本は地震国である。
阪神大震災、そして記憶に新しい東日本大震災。
繰り返しテレビで流された映像・・・流されていくたくさんの家屋、跡形もなく消え去った街、そして失われた多くの命。
決断を迫られる人々。
どう行動すべきか、自分や家族を守るために何をすべきか。
そして政治家もまた決断を迫られる。
リスクを恐れ瞬時に決断できない総理大臣、被害を最小に食い止めるために積極的に動く都知事。
何のために政治家になったのか、思いっきり問い詰めたい気持ちになった。
首都圏だけの問題ではない。
東海・東南海・南海地震の危険が言われるようになってかなりの時間が経った。
はたして防災対策は進んでいるのだろうか。
海沿いの高速道路。橋脚ばかりが続く高速道路。
津波を防ぐことができるのか?と疑問を抱くような防波堤。
そして、海沿いには停止中とはいえ原発がある。
物語は現実ではない。
けれど、書かれている内容はとても現実感にあふれたものだった。
いま出来ることは何か。
そして、いざ地震が来たときにどう行動出来るか。
普段の心構えがあるかないかで大きく違ってくるだろう。
東日本大震災の映像をけっして忘れない。
リアルな怖さとともに、大きな教訓が込められた物語だった。
Posted by ブクログ
東京に大地震がくると予想→行政に訴える→実際にきた→対応→これから頑張る。ざっくりいうとこんな内容。
地震のパニック小説ではあるが、地震学者の主人公が地震を予想しそれを政府に訴えるまでに内容の1/3ぐらい使っていてちょっと長いと思った。
地震発生時の様子描写にリアリティがあって面白かった。
実際に地震が来た時のことが想像できて実生活でも役立ちそう。
ハラハラ・ドキドキ感はないが安心して最後まで読めるという感じ。
Posted by ブクログ
地震の予報は、相も変わらず難しいものだ。物理学レベルでいかに精緻なモデルを作っても、実際に代入できる変数は観測データであり、方程式の変数そのものではないため、統計モデルとのハイブリッドモデルとなり、応力破壊の時期をピンポイントで求めることなど、できはしない。
重要なのは、本作は3.11前に書かれたものだということだ。
Posted by ブクログ
地震大国日本。
つい先日、南海トラフの注意が出されたあとだったので本当に怖かった。
あまりの大惨事に読んでいても情景が思い浮かばないほど。
他人事ではないのでいつどこにいても備えだけはしておかなきゃな…
Posted by ブクログ
南海トラフの巨大地震注意報が出されたことで目に入り、読んでみた。
これを読むと今回、注意報を出すことは相当な決断だったと分かる。
その内発表されるかもしれないけど、お盆時期に重なったこともあり、とてつもない経済損失だったと思う。それをわかっていながらの苦渋の決断だったんだなと。
結果的には何も起こらなくて良かったけど、それは地殻のエネルギーを蓄積しているだけかもしれない。
地震大国に住んでいる以上、地震に関する知識は持っておいて損はないと思う。
Posted by ブクログ
前半は地震予知研究がテーマ。
先日岐阜大のH先生も、もう地震予知は研究自体畳んでいるんだな的なことを書いていた。そう、きっと予知まではきっとできないんだろうと思っているが、「仮に予知ができるとしたら(or世の中が諦めてないとしたら)」的なフィクションとして読む面白さということかな。
※加えて、やっぱり洪水対策はある程度「予知」ができる点で、全然違う現象だよなと改めて思い知った。そういえば以前に面接で「一週間後に洪水が来るとわかったら、何をする?」ってきいたこともあったな(今思っても良い質問だ)。
後半は、発災後の惨状や対応の様子が並ぶ。確かに、(数多のレビューにもあるとおり)被害のリアリティーには驚くことも多い。特に、沿岸部の石油貯蔵タンクの爆発を止めるために上空から決死の放水をする下りは、福島の原発事故をまさに予見していたかのようでさえある。
名大のF先生の「見たくないものを見る」にも通じるリスクだし、こういうイマジネーション豊かな作家の作品は、実際に地震災害の対策を考えるうえでも役に立つかもしれない。
そう、一国民として言えば、タイムラインもしくは目黒巻的な効果さえありそうなのである。
トイレに逃げ込むのが意外に安全、とか、サバイバルのための考えるヒントがある。
政府の対策を考えるにあたっては、どうだろうか、、一石を投げた側面のしては、予算を投じての事前防災の意義や、交通の計画運休、職員の増員、など。。
少なくとも、洪水は地震と違って「予知」ができるのだ。
Posted by ブクログ
豪雨やウイルスと違って、一瞬で起こるのが地震。そのうちホントに来ると言われ続けるも、その直前までが日常と変わらないので対策の意識を継続するのは難しい。地震対策は票に繋がらない(だから政治家が本腰入れない)のも納得。
Posted by ブクログ
二十八歳の研究者が東京の大地震を予測しそれが当たる。過去阪神・淡路大震災で被災したことも派手さはなく回想され、見えない所で圧死した家族の描写がこわかった。進行形の東京は災害に対する抵抗が描かれていたから希望を持って応援したくなる風。トラウマと対峙し少女を救出する友人女性等。東日本大震災を思い出した。
Posted by ブクログ
28歳の若き研究者、瀬戸口の計算式は、マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることをしめしていた。十年前の神戸での震災、あのとき自分は何もできなかった。同じ過ちを繰り返したくはない。今、行動を起こさなければ…。東京に巨大地震が起こったら、高速道路は、地下鉄は、都心のビル街は、いったいどうなるのか。
Posted by ブクログ
首都直下型地震発生のシミュレーション小説。
阪神淡路大震災後、東日本大震災前に書かれた物語。
阪神淡路大震災を経験した3人が首都直下型地震発生に対してどう行動していくかが描かれています。
前半部分は、そのうちの一人、ポストドクターが首都直下型地震の発生を予知します。そして、その内容をどうやって、世の中に知らしめるのか?が語られていきます。
後半部分は、実際に地震発生後の世界が語られます。
さまざまな人が地震発生後どのように行動していくのか、そして、主人公たち3人はどうしていくのか?が語られます。
まず、一番の山場は、地震発生予知でしょう。
ポストドクターが予知した地震について、どうやって政府にインプットするのか?その予知を信用するのか?
予知したとしても、実際に非難指示を出すことができるのか?そんなジレンマが描かれています。
結局、都知事がその予知を信じて行動を起こしたことにより、東京での被害を最小限におさえることになります。
地震予知とその報道、対処の難しさの課題を突きつけられたという感じです。
最近では自然災害に対しては、テレビでも緊急の避難を呼びかけるなど、対処ができるような風潮がでてきているような気がします。
そして、後半の山場は、地震発生後の2日間。
リスクをすべて飲み込んで対処に当たる都知事のリーダシップと、後手後手に対策が遅れる政府の両極端の対応が特徴的です。また、この2日間、どのようなことが発生し、どう生きるかが、いろんな人の視点で描かれています。
この後半部分については311を思い出しました。
311をはじめ、その後も熊本地震など、さまざまな大きな地震が発生しています。
いつか来るであろう東海・関東地域の地震に対し、備えだけはしておかなければと思います。
自然相手にはどうしようもない
津波(TSUNMI)に続いて読む。
実際は、この東京の震災があってから、津波があるという設定なので、これから読む人はこちらを先に読むことをオススメする。
シミュレーション小説なので、小説というよりは、なんだろう。実際に起きたらどうなるかとか、その時の状況などに興味関心が多くなる。その分、登場人物のストーリーがうまくつながっているようなつながっていないような。
瀬戸口を中心とする主要3人物の心を描いていくかと思えば、地震があってから心情を表現されていく。うーん、ちょっと突然であまり心情移入しにくかったかなぁ。
この本では、地震予知というか、地震が起こる前までのこと、準備などねを中心に書いている。加えて、都とか国のあり方も書いてある。
で、次の津波では、地震や津波が起きた時の対応の仕方を書いている。同じ瀬戸口が偉くなって登場してくるが、この瀬戸口でさえ、予知よりもその後の迅速な対応を中心に書いている。(もちろん、日々できる準備は必要なのだろうけど)これは、著者の考え方が変わってきたということだろうか。
津波では、それに加えて、草の根のネットワークが最後に活躍する姿が描かれている。
一人は小さな存在だけど、人間にできることは手を結びつながって行くことなのだろうと改めて思う。