あらすじ
28歳の若き研究者、瀬戸口の計算式は、マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることをしめしていた。十年前の神戸での震災、あのとき自分は何もできなかった。同じ過ちを繰り返したくはない。今、行動を起こさなければ……。東京に巨大地震が起こったら、高速道路は、地下鉄は、都心のビル街は、いったいどうなるのか。最新研究に基づいてシミュレーションした衝撃の作品。
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Posted by ブクログ
本著は、阪神淡路大震災後、東日本大震災前に書かれたものである。地震予知の技術的及び心理的な難しさというのがよくわかる。我々は地震の恐怖について、どこまで実感しているのか。私の住む北海道でも大震災があり、電気が数日に渡りストップしたものの、自分の身の回りは電気が復活したとたんに通常を取り戻した。どこかに「あのクラスの地震があっても、生活にはそんなに大きな支障はなかった。」という油断の気持ちがないだろうか。油断自体を悪と言っているわけではないが、結局油断によって身を亡ぼすのは自分たちなのだ。生き残るために、常に備えを万全にしておかなければならないことを感じた。
物語としては、地震の中でもそれぞれのポジションで役割を必死で果たそうとする人々を見事に描いており、楽しく読めた。結局みんないい人になってしまったので、もっと悪役がいてもいいかな、とは思ったが、全体的には面白かった。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
瀬戸口誠治28歳、河本亜紀子、松浦真一郎は阪神淡路大震災の被災同級生(当時高校三年生)で、11年後の2005年、それぞれ大瀬崎地震研究センターを訪問するポストドクター、自民党衆議院議員堂島智子(震災で夫と2人の娘を亡くす)の秘書、自衛官(東部方面隊第一師団施設大隊)として働いている。瀬戸口は両親と妹を、亜紀子は両親と兄、松浦は父と弟を震災で亡くしている。瀬戸口はスーパーコンピューターで計算した結果、6ヶ月後に東京直下型のM8.1の巨大地震が起こると予見し、地震研究家の元神戸大学理学部教授遠山雄次(震災で妻娘息子、研究室の学生4人を亡くす)や植村恒雄(現東城工科大学教授で日本の地震学のドン)に考察と協力を求める。瀬戸口と遠山が東京で会っていた時に静岡でM6.4クラスの地震が発生する。瀬戸口はすぐに静岡の研究センターに向かう。静岡沖地震の被災者への救済に政府も動くなか、『地球シミュレータ』を使った計算では数日以内に東京直下型の巨大地震が起こるとされ、政府にも出来る限りの働きかけを行ったあと(漆原都知事に警戒宣言をださせた)、遠山は生放送のバラエティ番組で、瀬戸口と長谷川はネット上で巨大地震が来ることを訴えかける。午後1時27分南関東をマグニチュード8.2震度6強の地震が襲う。震源は中野区から新宿区の地下30km。伊豆半島の地盤変動は東京の地震に関係があったが東海地震との関係はなかった。
瀬戸口は亜希子の安否を確認しにマンションへ向かい、亜希子が事務所に戻る途中で2人は立花カオルという少女を瓦礫の中から救いだす(亜希子はトラウマから1歩踏み出す)。
地震から1週間。死者19862人、負傷者155046人、全壊43000棟、半壊11万棟、焼失家屋36万棟。
国の防災中央研究所がつくられることになり、瀬戸口は東海、東南海、南海地震のコンピューターシミュレーションをやることになる。今後日本を襲う大災害に備えるためにそれぞれが地震で得た教訓を胸に1歩ずつ歩みを進めていく。
【その他登場人物】
○長谷川行雄 『長谷川鍼灸・整骨院』を営む地震予知市民連絡会の会長で、全国から寄せられる地震予知に関する事例を地域別に月一の会報『予知』に載せている。瀬戸口の助言もありトイレに妻と逃げ込み急死に一生を得る。
○諏訪内肇 内閣総理大臣
○漆原直人 72歳。東京都知事。
○石井副知事
○安藤敏之 気象庁長官。遠山の大学の同級生。
○近藤優一 石油会社東洋フュエルの安全対策課社員で豊洲の石油貯蔵タンク炎上の助言に行く途中に記憶喪失になるが、女性に助けられ、病院で電話を受け任務を思い出す。
○飯田良夫 43歳。消防庁のヘリのパイロット。LPGタンクの温度を下げるため特殊冷却剤を投下し、その後ガス爆発に巻き込まれ海に落下し死亡する。妻と娘も被災して死亡。
○花岡祐二郎 飯田パイロットの助手。消火バケットの絡まったワイヤーを外すためヘリから飛び降り骨折。
○結城忠夫 東京消防庁、中野消防署、特別救助隊、消防司令補。妊娠中の妻と6歳の息子がいる。松浦や近藤と共にLPGタンクの爆発を食い止める。
○畑山美輪子 生命保険の外交員。夫とは離婚し12歳の娘裕子がいる。中野の自宅に風邪を引いた裕子を残したまま東京湾アクアラインを車で走行中に被災する。被災後裕子と連絡がとれ松浦に救助してもらい、美輪子は歩いて裕子の入院先の病院をめざし、避難所で再会する。
【感想】
地震研究家達の会話や政府の被災後対応など難しい話は理解できない所も多々あったけれど、リアルな描写で実際に起きたらと思うと恐怖を感じる。いつどこで大地震が起こるというのが分かるのなら、政府はパニックになるからと躊躇せず早めにしらせてほしい、それがその時は間違いだったとしても。
Posted by ブクログ
所々で人間のやるせなさを感じた。
まず1つは地震が起こる前、地震シミュレーションに対して全く見向きもしなかったところだ。阪神淡路大震災が起こる前に失敗して以来、シミュレーションに対する信頼が無くなったのか、1ヶ月以内に地震が起こるという差し迫っている状況でも耳を傾ける人間は少なかった。人間は過去の失敗の怖さから新しい技術に対する不安感を払拭できないのだ、ということを突きつけられ、やるせなさを感じた。
また、実際に予告ができたとしてもあの時こうすれば良かった、というように後悔が残ってしまっており、全体の数字で見て被害を減らすことができたとしても、被災者遺族にとっては何も意味がない。マクロ的に見てよくても、ミクロで見た時にどうしても後悔が残ってしまうということに結局人間は無力なのだということを感じてしまった。
しかしこの本を読んで、地震に対する危機感を思い出すことができた。
非被災者は東日本大震災のことを忘れかけていて、地震に対する危機感が薄くなっていると思うので、防災について考えるきっかけになってよかった。
Posted by ブクログ
マグニチュード8規模の直下型大地震が東京に迫っていることを予知してしまったら、、、。いつか起きると認知しながら起きて欲しくない心理で見なかったことにしてる『今』読んでおきたい一冊。
Posted by ブクログ
瀬戸口誠治、28歳。
10年前、阪神淡路大震災で家族を亡くした経験から、地球物理学を学び、学会では異端視されている地震予知を可能にするシミュレーションプログラムを研究テーマとしている。
12月3日、瀬戸口は静岡の研究施設で観測した群発地震のデータから、約半年後にマグニチュード8(M8)クラスの首都直下型地震が起こると予測するが…
この著者の作品は初読。
林檎飴甘さんのレビューを読んで、手に取った。
あらためて、『いいね!』させていただきました。
いい本に出会えました。感謝。
瀬戸口、亜紀子、松浦の、阪神淡路大震災当時高校生だった3人。
当時50代の働き盛りだった、遠山教授、植村教授、堂島議員。
家族を失い、心身に大きな傷を負いながらも、それ以上に『次の震災』には負けまいと心に刻んだ10年だったのだろう。
阪神淡路大震災、東北震災と原発事故。
そして今現在、熊本の震災に続いての集中豪雨が、またたくさんの人々の運命を断ち切り、また生き残った人たちの心に運命を刻み、変えていっている。
大災害に限らず、事故や病気や…あらゆる悲劇は、いつ起こるかわからない。
いま、何だかんだ生きて動ける幸運な私が、何を言っても…という気持ちもあるけれど。
それでも、いつか来る災いからは誰も逃れられないのなら、受け止める力、再び立ち上がる力、誰かのために差し伸べる力を持ちたいと思う。