あらすじ
〔ネビュラ賞受賞〕近未来、治療可能になった自閉症の最後の世代であるルウは製薬会社に勤務しフェンシングを趣味に、自分なりに充実した日々を送っていた……ある日上司から、新治療の実験台になるよう迫られるまでは。主人公の繊細な視点が感動を呼ぶ“二十一世紀版『アルジャーノンに花束を』”
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Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて読んでみた。
原題の"THE SPEED OF DARK"を『くらやみの速さをどれくらい』と訳したセンスが素晴らしい。
ルウ目線の文章と健常者目線の文章がはっきりと違いが分かるように訳されていてすごい。文が破綻している訳でもないのに、これは"普通"の人が書いたものではないなと分かる。
書いていることの中身が違うというのはもちろんあるが、前後の文のつながりが薄かったり、短文が多かったりと"普通"の人と文章構成が全然違って、とても読みづらかった。
読みづらかったがこういう風に考えている人も社会にはいるんだろうなあという想像が広がったので、よい読書体験だったなあと思う。
後半はすっかりトムに感情移入してしまって、悲しさを覚えながら読んだ。
Posted by ブクログ
「21世紀版『アルジャーノンに花束を 』」と言われている作品ですが全然違います。アルジャーノン的な話だと思って読むと、1/3くらい読んだところで不安になってくるので、別物だと思って読みましょう(笑)
※ここからネタバレあり※※
私が感じた大きな違いは主人公・ルゥは、ただ、マイノリティである、ということ。自閉症者であるルゥは、健常者(ノーマル)の感覚や価値観とただ異なっているだけでノーマルに比べて全く劣る存在ではないのです。ですが「障がい者」というレッテルを貼られ、ノーマルに合わせることを強要されます。私も、ある立場においてはマイノリティなので、ルゥの置かれた理不尽な状況に共感が止まりません!
一方で私も(たぶん)ノーマルなので、ルゥの感じ方に「そういう考え方もあるか!」と驚き!…そうだよね、なんでいちいち挨拶とかしてんだろ…。
そんな私のメンタリティはルゥの上司のオルドリンに一番近い(笑)。悪人にもなれず、かといって表立って声を上げることもできなくて、ルゥから「助けたい、と言うということは、なにもしてないということだ」みたいに思われてる、彼のたくらみが実を結んで本当に良かった!
治験を受ける前の秋の公園のシーンは物悲しくて美しかったですね。マジョリティならば決して取る必要のないリスクを取って、結果として、失うものはあっても、たくさんの可能性を手に入れられたルゥ、本当に良かったなと思いました。傑作です!
Posted by ブクログ
アルジャーノンとはちょっと方向性が違うけど、自閉症の人々の感性とかものの見方とかへぇ…って感心した。
どう頑張っても「自閉症の人」って扱いをされてしまうし、わたしだって「自閉症の人なんだな」って思ってしまうし、もう自閉症は自分のアイデンティティだよっていうキャラクターもいたけど「自閉症」から逃れられなくてどうしても「ノーマル」になりたいっていうのもなんかちょっと分かるしラスト付近すごい辛かった。
最後、ルゥは同じ人じゃない…って思ってしまった。
結局、光の速さとくらやみの速さは同じになったのだろうか