あらすじ
ボラクチンの計略によるオゴタイ暗殺未遂の件で捕らわれたドレゲネを救出したファーティマ。帝国と戦うべく自分たちが魔女となることを誓ったふたりは、ボラクチンの秘密を利用し彼女に接近、ドレゲネは第二妃の地位を得る。1233年、オゴタイはペルシア総督府を定め、帝国の支配領域を着実に拡大していく。
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怒りを原動力にすることは、強さにも弱さにもなる。
13世紀のイランで奴隷となった少女シタラ。彼女は自分を奴隷として引き取ったファーティマ家に最初こそ反発するも、ファーティマ家の息子ムハンマド坊ちゃんに知識の大切さを説かれ、勉強に身を入れるようになる。しかし、モンゴル帝国の襲来によってファーティマ奥様は目の前で殺され、ムハンマド坊ちゃんの消息は不明。自分自身もモンゴル帝国の奴隷となってしまう。モンゴル帝国の奴隷となったシタラは「ファーティマ」と名乗り、第四皇子の第一皇后に仕えるも、モンゴル帝国への復讐心をずっと抱え込んでいた。そんなとき、似た境遇の第三王子第六妃・ドレゲネと出会い、知恵を使って二人でモンゴル帝国の転覆を誓う。ところが、第二代皇帝の第一皇后・ボラクチンはまた別の立場から、モンゴル帝国をより強固なものにしようとする。
それぞれの大義が、そして、それぞれの感情がぶつかるモンゴル帝国の行く末は……。
シタラはこの時代に文字が読めることで、奇妙な縁に巻き込まれていく。ファーティマ家から受け継いだ知が、彼女の復讐を手助けすることは、美しくもあり悲しくもある。強大な権力によって様々な人の思惑が絡み合う重厚な人間ドラマから目が離せない。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「新しいモンゴルを作る」(p22)
オゴタイにはそのための素養は備わっており彼自身にもそれが見えているのだろう。
皇后ボラクチンも聡明であり、帝業を妨げるものは排さんとする。
「今やモンゴルは広大な世界を手に入れた」(p61)
帝国の都「カラコルム」の建造にも着手し、街道が整備され遠く離れた人と物が行き交うようになった。
「交易の「道」 生産の「都市」 これこそ大カアンが望んだモンゴルの姿だ」(g80)とボラクチンが語るように、歴史上でも未曾有の大国家建設は着々と進んでゆく。
華々しく発展を遂げるモンゴルだが、憂いが無いわけではない。
「後継者だ 大カアンの そして私の」(p84)
いつの世も適切な後継問題は明暗を分ける一大事である。ボラクチンは第三皇子である〈クチュ〉を推す。大カアンも彼をほぼ勝ち確である南宋征伐の総司令官に任じ、その功をもって後継に据えるつもりであった。のだが。
ここで我らがファーティマがクチュと接点を持つのである!なんという大胆なifストーリー。
確かに史実の流れではこののち、クチュが遠征途上で急死し、そこへドレゲネの介入が起こるのだが…。この史実の出来事を膨らませて、二人の女性の野望譚へ昇華するとは寒気がするぜ。
オゴタイは過去に語った。「お前たちがここで幸せになったら俺の勝ちだ」と。
ファーティマとドレゲネは栄えてゆくモンゴルで幸せを、満ち足りたと感じてはならない。それは彼女らにとって‘負け’となるからだ。
「私はきっと負けないだろう たとえ私が負けを望んでも」(p67)とファーティマは自答する。
そしてこの「負けない」という感情こそが、拡がりゆくモンゴルのあちこちで、やがて国を傾ける火種となるのである。
世にいう「バトゥの西征」がいよいよ始まり、ルーシ圏にも版図を伸ばそうとする前夜。
ペルシア総督府では現総督が急死、〈コルグズ〉が総督を継ぐ。
華北をオゴタイ領へ取り込もうとする動きと、反発するトルイ家(ソルコクタニ・ベキ)。トルイ家の当主は〈モンケ〉。クリルタイでもソルコクタニは不穏を見せる。
ジュチ家当主のバトゥも西域へ派遣され、足元である華北に隙が生じる。
俄かに存在感を増し始めるドレゲネの子、〈グユク〉。
いやー、面白すぎる。
世界史の授業や受験勉強では覚えるのに必死で「どうしてこうなった」なんて考える余裕はなかったけど、確かに何故このタイミングでドレゲネが出てくるのか、グユクなのか、等々よく考えたら不思議。
5巻の表紙を飾っているモゲ。彼女がこの先物語へどんな影響を及ぼすのか。「あたし…嘘はわかるんだ」(p171)って、意味深な台詞。
アニメも楽しみですな。
1刷
2026.7.25
Posted by ブクログ
戦争・侵略・統治下の内部における勢力争いの物語であるならばさけて通れない綺麗事抜きの道を、タイトルの通り「ジャードゥーガル」とし踏みしめさせていることに感嘆する。
Posted by ブクログ
オイラト族への粛清、南宋、キプチャク、高麗への同時遠征、そしてクチュの急逝までを描く第5巻。
オイラト族への粛清は、それが淡々とスムーズに進んでいく分だけ、機械的な不気味さや気持ちの悪さを感じさせた。まるで、悲恋や悲劇を美しく描かない、という意思もまた見せられたようで圧倒される。
今巻で初登場したコルゲンの表情が魅力的。(彼が今後の展開でどんな役割を担うかはまだ分からないけれど)物語の面白さだけでなく、こういう絵を出してくるから、辛い展開が多い物語でも読めてしまうのだなと思う。
Posted by ブクログ
既刊読み終えた!
面白いけど慣れてない名前や単語などで、既刊をすぐ手に取れるようにし、確認しながら読んだ。
新刊出たら思い出すために何冊か読み直そう。
またも
史実にあって、謎のままの出来事なのだろうが、
そこに独自の味付けをして描くのが上手い。
当時は色々な理由があり得たのだろうが、本作では
誰かの陰謀では?と思ってしまう。
Posted by ブクログ
人の恨みというものは、基本的に消えない。どんな幸せも代替え品にはならない。
ファーティマもドレゲネも恨みを捨てない道を選んだ。帝国規模の相続問題をうまく利用して、敵であるモンゴルを潰すことを生きる目的にする。
シリアスなシーンの進次郎構文に笑う。
ジャムチとか、世界史でやったなぁ。ルールやインフラ整備の妙。頭が良いなぁと感動した事を思い出した。
Posted by ブクログ
なかなか込み入った話で理解が難しい。それぞれに思惑がありつつ、外からの影響もあり。この先、ファーティマが周りをあっと言わせる逆転劇を見せるのではないかと期待。