あらすじ
対金戦争の英雄・トルイが没し、直接の仇だった人物の突然の死に動揺するファーティマ。歪なまま保たれていた帝国の勢力図が一変する。一方、急接近中の帝国第一皇后・ボラクチンから「知恵を存分に使って共にこれからの帝国を作ろう」とスカウトされ一瞬揺らぐファーティマだが、状況に違和感を覚え、大カアンに毒を盛った容疑で連行されたドレゲネを救出するため走りだす。
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怒りを原動力にすることは、強さにも弱さにもなる。
13世紀のイランで奴隷となった少女シタラ。彼女は自分を奴隷として引き取ったファーティマ家に最初こそ反発するも、ファーティマ家の息子ムハンマド坊ちゃんに知識の大切さを説かれ、勉強に身を入れるようになる。しかし、モンゴル帝国の襲来によってファーティマ奥様は目の前で殺され、ムハンマド坊ちゃんの消息は不明。自分自身もモンゴル帝国の奴隷となってしまう。モンゴル帝国の奴隷となったシタラは「ファーティマ」と名乗り、第四皇子の第一皇后に仕えるも、モンゴル帝国への復讐心をずっと抱え込んでいた。そんなとき、似た境遇の第三王子第六妃・ドレゲネと出会い、知恵を使って二人でモンゴル帝国の転覆を誓う。ところが、第二代皇帝の第一皇后・ボラクチンはまた別の立場から、モンゴル帝国をより強固なものにしようとする。
それぞれの大義が、そして、それぞれの感情がぶつかるモンゴル帝国の行く末は……。
シタラはこの時代に文字が読めることで、奇妙な縁に巻き込まれていく。ファーティマ家から受け継いだ知が、彼女の復讐を手助けすることは、美しくもあり悲しくもある。強大な権力によって様々な人の思惑が絡み合う重厚な人間ドラマから目が離せない。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
4巻も面白かった。
激動の3巻から再起の4巻へ。ファーティマの心の底に今も燃える怒りが、単なる復讐劇ではなくいろいろな方面に流れて複雑に影響していくのが面白い。
人々の持つ自民族や故郷への誇り、愛、それらを美しいものとしつつその反対にあるものや裏で苦しむ人々のことも同時に描く。モンゴル側でいえばソルコクタニがまさにそうだが、ファーティマやドレゲネにとっても同じである、それが残酷で丁寧に表現されている。
平和とはなにか。身も蓋もない結論を感想しそうだったので口をつぐんでおく。ただそんなメタ的次元の言葉を述べるよりも、当事者たちの目線から物語を追うほうがよほど真に迫るものがあるはずだ。彼女たちの旅の果てまでしっかり見届けさせてもらいたい。
Posted by ブクログ
好きが高じて学者先生スレスレまでいってるオタクさん(褒めてる)すごく尊敬する。書かれてないだけで先生の資格お持ちかも分からんが。
百田さんもモンゴルの本を書かれてるし、密かなブームなのかしら…
ウズベキスタンの遺跡はモンゴル軍の破壊の上に作られていたことを思い出す。
チンギス、オゴタイ、クビライは学校でも習うけれど、ファーティマは出てこなかった。皇妃についてもさして習わなかった。歴史の流れは変わらずとも、どんな人生があったのか、先がとっても気になる。
そして絵が独特でとっても可愛い。ネットで続きとコラムが読めるので嬉しい。
Posted by ブクログ
副題の『A Witch's Life in Mongol』が示すとおり、モンゴルにより全てを奪われたファーティマ、そしてドレゲネがいよいよ「魔女」となり始める第4巻。
しかしその復讐でまず犠牲になるのは、モンゴルの中枢部ではなく周縁部の弱い者であることも匂わされていて、被害者であることが免罪符になりえ続けるのか、それともそんな懊悩は飛び越えていってしまうのか、しんどい展開もありそうだけど次巻の刊行を待ちたい。
Posted by ブクログ
ペルシャやモンゴルや周辺の様々な部族の風物も美しく描かれて、それぞれの故郷や属する部族や国への想いがあるもの、諦めないものの物語。武力ではなく豊かなマーケットを広げていこうと考える大カーン、賢く聡明で人間的な感情も豊かでそれゆえに冷酷でもある女性たちの行動。
とても面白い。これからどうなるのか。しかし登場人物相関図を見返しながら読むのはなかなか大変。