あらすじ
石田三成とは、何者だったのか。加藤清正、片桐且元、福島正則ら盟友「七本槍」だけが知る真の姿とは……。「戦を止める方策」や「泰平の世の武士のあるべき姿」を考え、「女も働く世」を予見し、徳川家に途方もない〈経済戦〉を仕掛けようとした男。誰よりも、新しい世を望み、理と友情を信じ、この国の形を思い続けた熱き武将を、感銘深く描き出す正統派歴史小説。吉川英治文学新人賞受賞。(解説・縄田一男)
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Posted by ブクログ
とても良かった。
石田三成は、元々日本史の授業で名前を聞いたことがある程度だったが、とても好きになった。
まず、小姓組の絆が良かった。
若い頃の青い日々やかけがえのない仲間、大人になって立場やプライド、背負うべきものが増え昔のように会えないもどかしさ、大人になってしまった寂しさ、それでもどこかで繋がっている絆など、色んなことを感じた。
そして佐吉の真っ直ぐで信念を持ち続ける生き方、深い深い慈愛は、とてもかっこいい。
佐吉のように、大人になって持つべきものが増えても、若い頃の情熱や真っ直ぐさを捨てないようにしたいと思った。
Posted by ブクログ
石田三成の聡明さ、先見の名、人間らしさが、どれも初めて知ることで、さらに知りたくなった。
落ちぶれてしまった権平が、落ちた理由を真正面に伝える、彼が理解できることを信じて自分の策を伝える、また信じられた権平はそれを12年もの時をかけて立証する、すべては佐吉の聡明さを証明するため。権平の物語がもっとも刺さった。
秀吉に仕えた8人の仲間の絆が、成長してそれぞれの事情を生み出してもなお、生き続ける物語だった。
新しい視点からの戦国絵巻!!
2022年6月読了。
新しく見付かった一次史料等も織り込ませて、「もう書く事が無いだろう」と云うくらいに沢山の小説や映画で取り上げられてきた秀吉~家康の時代を、全く新しい発想・視点から描き出した、大変に優れた連作短編集である。
確かに「賤ケ岳七本槍」自体は有名だが、その一人一人に着目した小説は意外と少なかったかもしれない。
その七人の青春時代(出逢い)から人生や様々な想いに至るまでを緻密に描くことで、実はその七人と密接な関係に有った「八人目」の石田三成を、鮮烈なイメージで浮かび上がらせる、この着想が先ず素晴らしかった。
主題の七人も、それぞれ複雑な事情やコンプレックスを抱えて何とか生き延びてきたが、過去を振り返る時には必ず傍には佐吉(=三成)が居て、「今にして思えば…」と感慨を持つ者や、「あの時自分が賛同してあげたら…」と後悔する者も居て、最後には「佐吉が、この日本と云う国に本当に必要だと云うもの」とは…が浮かび上がってくる結末には、気宇壮大な理想が表され、感嘆せずには居られなかった。
勿論、現実に石田三成がそんな「日本の未来は〇〇〇〇が良い」とまで考えていたとは、全く思わないが(その時点の南蛮国にすら欠片も無い思想)、何かと評価を貶められがちな彼であっても、これだけの事を実行し、後世の事まで考えていたのかもしれないと云う歴史小説ならではの浪漫は、読者の心を掴んで離さないだろう。
歴史小説の世界を全く新しい視点で照らし、「まだまだ我が国も(歴史も)捨てたもんじゃない」と思わせてくれた作者には、最大級の賛辞を送りたい。
「幸村を討て」はかなりミステリーの要素が強かったので、本書は「これぞ新しい時代の歴史小説だ」と万人にお奨め出来る作品だと強く思った。
Posted by ブクログ
七本槍の面々の目から見た三成が語られる。秀吉の子飼いたちがなぜあんな裏切り方をしたのかが、作品に書かれている。なかなかに入り組んでいたが、すんなりと楽しめた。
Posted by ブクログ
今を見る武士とはるか未来を見る武士の溝が見える作品。
秀吉と七本槍の視点から形作られ、語られる石田三成という人物。
助作と権六の話が好き。
七本槍の出自〜関ヶ原という大筋を味変で7回連続読むという感覚に陥り、今の僕の趣味とは異なるものでした。
加藤純一さんが言っていた、今の積み重ねの先が未来っていう言葉を思い出し、見えすぎるのも辛いだろうなと思いました。
当時を生きていたら、虎之助のように今生きている人の命を救いたいと思うのが人情なのかなと。
五葉のまつりは、5人それぞれが主役になって、異なる物語が読めるといいな。
文庫本p.254の、
水の張られた田に陽射しが差し込み、銀の鱗を撒いたように輝いている。
この一文が、すごく活き活きした表現で好き!