あらすじ
登美彦氏史上、これまでになく毛深く、波乱万丈。(登美彦氏談)「面白きことは良きことなり!」が口癖の矢三郎は、狸の名門・下鴨家の三男。宿敵・夷川家が幅を利かせる京都の街を、一族の誇りをかけて、兄弟たちと駆け廻る。が、家族はみんなへなちょこで、ライバル狸は底意地悪く、矢三郎が慕う天狗は落ちぶれて人間の美女にうつつをぬかす。世紀の大騒動を、ふわふわの愛で包む、傑作・毛玉ファンタジー。
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった!愉快痛快毛玉いっぱい!
読んでいてとても楽しく、ちょっとしんみりもしちゃったり、京都の狸界隈を堪能しました!!森見登美彦の登場人物には、心に粋があるから読んでいて楽しい。
人間の事を怖がりながらも、人間社会に溶け込んで人間を化かしていると考えると、狸というのは阿呆ではないように思う。
自分は狸ではないけど、阿呆の血がしからしむるところがあるのかな。いや、自分にはなさそう。そこまで阿呆に振り切れるほどの才能はない。開花する時を信じて、人間として生きようか。
Posted by ブクログ
「捲土重来!」「くたばれ!」
洛中での狸と天狗と人間の、笑って、呆れて、ちょっと心温まる物語。ラストは疾風怒濤のごとくストーリーが駆けめぐる。飛び回る。
人間は街に暮らし、狸は地を這い、天狗は天空を飛行する。
人間と狸と天狗の三つ巴。それがこの街の大きな車輪を回している。
天狗は狸に説教をたれ、狸は人間を化かし、人は天狗を恐れ敬う。天狗は人間を拐かし、人間は狸を鍋にして、狸は天狗を罠にかける。そうやってぐるぐる車輪は回る。
もうみんな可愛い!狸の4兄弟はもちろんだけれども、金角・銀角兄弟も、赤玉先生も弁天も、わがまま放題やりたい放題。でも、憎めない。
狸の父の器の大きさ母の愛。家族の絆にほっこりしました。
「阿呆の血のしからしむところ」
「面白きことは良きことなり!」
Posted by ブクログ
流石です森見登美彦先生。
なんと言っていいか分からないけれど愉しませてもらった。面白く読むほかに何もすべきことはない、解説にあるようにまさに森見作品に通ずる言葉だ。
狸、天狗、半天狗、人間の愉快で阿呆で破天荒な展開の数々にハラハラしたり、ホロっとしたり。
最後の初詣の終わり方も良かったなぁ
森見さんは黒髪乙女や弁天のような妖艶で皆が憧れる女性を描く天才。海星も好き。
狸やら赤玉先生やら弁天のいる世界に浸っていたい
そんな余韻があります
面白きことは良きことなり!
Posted by ブクログ
京都を舞台にした、下鴨家の狸たちの物語。糺の森や詭弁論部、偽電気ブランなどが登場すると、思わずニヤけてしまう。「夜は短し歩けよ乙女」の李白らしき人物も現れる。
可哀想だけれど、食べちゃいたいほど狸が好きというのは、さすがに引いてしまった。さすが詭弁論部だ。この人も酔っ払うと詭弁踊りを始めるのだろうか。まあ、それでも、鳥が好きなのにからあげを食べる自分のことを考えると、人のことは言えないか。
金閣・銀閣の阿呆っぷりが最高だ。「捲土重来、捲土重来」からの「呉越同舟、呉越同舟」には、笑わずにはいられなかった。
下鴨家の兄弟になりたい。雷が鳴ったら母上や兄弟と一緒にくっついていたい。ちょっとしたことでしっぽが出てしまう矢四郎の手助けをしてあげたい。偽叡山電車に乗ってみたい。矢三郎みたいに、悩むことなく阿呆なことばかりして暮らしたい。
解説にも書いてあるように、難しいことは考えず、とにかく楽しんで読めばよいのだ。
Posted by ブクログ
2008年本屋大賞
森見作品を手に取るのは何作目だろう?
森見ファンタジーワールド全開。
主人公は京都のに暮らすタヌキで下鴨家兄弟三男「矢三郎」。モットーは「面白く生きる」。亡き父「総一郎」は狸界の頭領「偽右衛門」と呼ばれた名狸だったが人間たちの「金曜倶楽部」によって狸鍋にされてしまった。その衝撃的な死を発端に、物語は動き出す。
父の死を受け、次期偽右衛門を目指す長男「矢一郎」と奇人肌の弟たち。それぞれが父から受け継いだ力や誇りを胸に、狸・天狗・人間が入り混じる京都で日々の珍騒動。天狗の大先生「赤玉先生」の世話や、美しくも妖しい金曜倶楽部女史「弁天」との交流、そして夷川家の「金閣」「銀閣」との張り合い。軽妙でユーモラスな日常の裏に、狸社会のしがらみと血族の因縁が深く影を落とす。
とりわけ印象的なのは、下鴨家と夷川家の確執を象徴する存在、叔父「夷川早雲」。彼の暗躍によって次期「偽右衛門」選挙は混迷を極めるが、下鴨兄弟の粘り強さと絆がその陰謀に立ち向かう原動力となる。矢三郎の元許嫁「海星」もまた、複雑な立場ながら矢三郎を案じる姿が胸を打つ。
物語全体を通じて、「狸の血を継ぐ者としてどう生きるか」という問いが浮かび上がる。愚かさも愛嬌もすべて含めて、矢三郎の「面白く生きる」という生き様は、失った父の大きさを乗り越える力へとつながっていく。京都の町並みと奇想天外な狸たちの姿が鮮やかに重なり合い、ユーモアと哀愁が入り混じった独特の世界観が堪能できる一冊だった。
心が楽になる、琴線にふれたフレーズ
「悩みは二つに分けられる。
・どうでもいいこと
・どうにもならないこと」