あらすじ
ロングセラー
『スーツケースの半分は』の著者が贈る極上のミステリー
祖母の依頼で請け負った観劇代行アルバイト。
行く先々で奇妙な出来事が起こり――
職場でハラスメントを受け退職した岩居久澄は、
心に鬱屈を抱えながら家事手伝いとして日々を過ごしていた。
そんな彼女に観劇代行のアルバイトが舞い込む。
祖母に感想を伝えるだけで五千円くれるという。
歌舞伎、オペラ、演劇。
初めての体験に戸惑いながらも、徐々に芝居の世界に魅了され、心が晴れていく久澄だったが――。
私が行く芝居に必ず「親切な老紳士」がいるのは、なぜだろう?
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Posted by ブクログ
歌舞伎など敷居が高いものだと思っていたが、それは中身を知らないからであった。観覧時の服装も含めて事前の知識が必要なこともあるが、素直に楽しめば良い部分もあることを知り、興味を持つきっかけになった。
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「好きなことは世界を広げてくれる。好きなことのためなら、わたしも積極的になれる。」このフレーズが好き。久澄が好きなことを見つけ、新たな一歩を踏み出していく姿は生き生きとしていた。新しい人間関係ができ、今まで避けていたことに対して前向きになり、視野が広がる。この生き方が好き。舞台演劇に関する具体的な描写が初心者の久澄目線で丁寧に書かれていて、興味深く一気に読み進めてしまった。
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温かく、ずっと手元に残しておきたいと思った小説。
タイトルに惹かれて買ったが、この本に出会えて良かった。
歌舞伎ではないが、自分も最近舞台にハマり始めたところなので久澄が舞台と出会って世界が広がっていくところにとても共感できた。
エピローグの久澄の決意が胸に響く。
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すごく読みやすくてあっという間に読み終わったが、示唆に富んでいた
自分の辛さは自分でしか救えないが、変わりたいという気持ちを持って外に出ていくことが重要だと思った
ミステリーの要素もありとても面白かった
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主人公の前職で患ったパニック障害から社会復帰までのストーリーが複雑で面白く描かれており、私自身も元気になりました。
主人公以外のストーリーは割愛させていただきますが、祖母から贈られる歌舞伎やオペラチケットを用いて、主人公が舞台鑑賞に興味を持つ姿、そして成長していく姿に勇気をもらいました。
1日でサクッと読めてしまうので、会社や学校、家庭でモヤモヤしている方にオススメの一冊だと思います!
Posted by ブクログ
久々に夜ふかしして読むくらい、とても面白かった!!
主人公の久澄と同じく、私も歌舞伎の知識がゼロだったこと、仕事を休職していたこと、実家にいることと共通点が多く、自分自身と重ねて読んでいたから面白かったのかも。
「好きなことがあると明日への活力になる」と書いてあったように、歌舞伎でも何でも好きなことを持つことは大切だと思う。
もし、好きなことがないなら、久澄みたいに知らなかった世界に飛び込んでみるのも楽しいかもしれない。
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久澄のそばに寄り添いたい
初めはそう思って読んでたのに
だんだんと久澄に寄り添われているようでした
私も心身を壊した経験があります。
人に傷つけられ、人を傷つけた経験もあります。
こんなことがしたいわけじゃないのに…!
何度も何度もそう自分を責めてました
他の人はこんなことしてない
もっと真っ当に生きてる、大人になっている
自分の親はこんな娘にするために私を産み落としたわけでもなかろうに、ごめんなさい…
そうやって自分を責めることで
ある意味許しを得ようと思っていたのだと思います
嫌なくらい自分を責めてるからもう許して。
立ち上がることをしない私を許して、と。
久澄もそうすることもできたはず。
だけれども歌舞伎と出会って、久澄はきちんと立ち上がった。
清く正しく見える人生だけが人生ではないと気づけた久澄に私もハッとさせられた。
好きなものを追いかけるためにちょっと頑張る。
そんな人生だって美しい。
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歌舞伎はまだ一度も観に行ったことがないのだけど、これを読むと行きたくなる。主人公はひょんなことからもらった歌舞伎のチケットで興味の薄かった歌舞伎を観に行ってハマっていくのだけど、ポイントは背景を読み取る知識と、幕前に購入して読んでおく筋書にあると見た。字幕が見られるガイドもあるみたいだし、サポートがあるならチャレンジしてみたくなる。
歌舞伎やオペラを見にいくシーンがあるのだけど、決して押し付けがましくない。知らない人にも優しい説明と、興味が持てないとしても受け入れてくれる文章が心地よい。
1話ごとに日常の謎が出てきて、普通に犯罪も入ってたりするんだけど必ず解決してくれるのもスッキリ。
高校の友達と口論になった話しが、そのラストと相まってすごい印象に残った。摂食障害はキツいよね。。。
歌舞伎座の怪紳士も最後の最後に正体がわかり、エンディングも希望が見えるもので読後感爽やか〜。
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舞台ものが読みたくて購入。
本書を通して、歌舞伎のいろはを学べた。歌舞伎は格式高いと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。一度歌舞伎を観に行きたくなった。
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オペラ座の怪人ならぬ歌舞伎座の怪紳士。
観劇代行のアルバイトで足を運んだ芝居には必ず「親切な老紳士」がいるのは、なぜだろう?その真相がステキすぎて、ラストはスタオベしました私!
それにしても、近藤史恵作品は相変わらず優しい。甘やかすんじゃなくて、寄り添ってくれる。
悪行を働いた人間にも、寄り添う優しさがある。主人公が、自分から遠い人間とは思わないと言っていたように、人間の持つ感情って、そんなに違わないように思う。さまざまな人の心模様と、芝居が重なる物語。紳士の謎も相まって、歌舞伎なんて見たことなかったのに本を捲る手が止まらない。
新しいことに出会って、興味をもって、のめり込んでいく感覚はオタクなのでよーく分かる。そして、好きなことがあるって改めて素晴らしいことだなと思う。ミステリとしては説得力に欠ける部分もあるなと思ったけど、それ以上に読後感が最高だったから良し!
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私の劇場通いは主としてなんばグランド花月と祇園花月なのですが、この本を読むと、どちらも至近距離にある大阪松竹座と南座をスルーしとったらアカンやん私、と思うのでした。
これとか三浦しをんの『仏果を得ず』を読めば、歌舞伎や文楽などの日本の伝統芸能は決してとっつきにくいものではないということがわかるし、ミステリー要素もあって読みやすい。難しいという先入観を持たずに何でも観てみることで世界が広がるのだなぁと思えます。
鬱々とした毎日を送っているときは新しいものに目が向かなかったりするけれど、そういうときこそ試してみればいいのかも。そもそも私が花月通いを始めたきっかけもそうですから。
Posted by ブクログ
人生につまづき立ち止まってしまう。それが何かのきっかけで前に進めるようになる、という話好きで読む機会が多い。この作品もそういう話なんだけど、きっかけが歌舞伎というのが私の中では斬新で面白かった。歌舞伎を全く知らない私が言うのは生意気になってしまうのだけど。
色々な事情によりパニック障害になってしまった主人公の岩居久澄。引きこもりがちな久澄に祖母のしのぶがあるバイトを頼む。それが歌舞伎などの演劇のチケットを渡すので、しのぶの代わりに演劇を観に行きその感想をしのぶに教える、というバイト。
そのバイトで歌舞伎などの演劇に出会い、久澄の気持ちが明るい方向へ向いて行く。
久澄が初めて歌舞伎を観て、ずど〜んと心に響いてしまったのが、歌舞伎を知らない私にも伝わってきた。久澄にとてつもない衝撃を与えたんだろうな。歌舞伎とはどんなものだろうか?人生経験で私も一回観てみたいな、と思いました。テレビとかではなく劇場で。
この作品で忘れてはいけないのが、老紳士の堀口。この老紳士と久澄は毎回劇場で会う。何故か。
久澄は堀口と話をしてると気持ちが落ち着き、久澄にとっては癒しの老紳士。この方が素敵だ。
劇場で毎回堀口と会ってしまう理由、しのぶが久澄に演劇のチケットを渡す理由が最後には分かるのだけど、とにかくジーンとくる。淡い恋の話は好き。久澄が色々な人に助けられ、最終的には自分で立ち直っていく姿にもジーン。そして私も頑張ろうと思いました。今、仕事が忙しくて疲労困憊だけど、元気を貰えました。
読んでいると、アガサ・クリスティーの『謎のクィン氏』が頭に浮かんだ。久澄がサタースウェイトで堀口がクィン氏。久澄が劇場で困っていると堀口がそっと助けてくれる。『謎のクィン氏』もそんな感じだった気がする。
Posted by ブクログ
博識な近藤先生の本は、読んで知識が深まるだけでなく、ミステリーあり、恋心ありと読んでいて飽きない。今回も歌舞伎や演劇など、興味をくすぐるような表現であらすじを教えてくれて感謝!読んでひとつも嫌な気分にならない近藤先生の本、また好きな作品に会えました。
Posted by ブクログ
好きな物語。ちょこっとミステリーもあり、歌舞伎やオペラ、演劇について知ることもできて面白かった。歌舞伎を観に行きたくなる。読んでいるときは登場人物それぞれのエピソードをもう少し深掘りして欲しいと思ったが(え?それで終わりなの?って思っちゃった笑)読み終えた今思うと深掘りしなくて良かったのかもしれない。丁寧に描写される歌舞伎や主人公の心情がより際立って印象に残ってるのでそう思った。
終始ゆるやかな雰囲気だったので、読んでいて癒されたし主人公が一歩踏み出して好きなことを楽しめる日々を送れるようになって良かった。私もいつまでも好きなことを楽しんでいきたいな〜
Posted by ブクログ
老紳士と女の子のバディミステリーモノかと思っていたが、いい意味で裏切られた。観劇を通して自分の人生を見つめ直す久澄が、新たな一歩を踏み出すまでの前向きな物語だった。観劇の描写も生き生きとしていて著者の造詣の深さを感じた。特に久澄の自己肯定感が低いが故に出てくる言葉たちの重さは深く心に刺さった。自分が夢中になれたからこそ得られるものは大きい。自分と他人の人生を比べなくても完璧な人はいない。みんな過去の自分と戦って生きてる。読後感が良い作品だった。
Posted by ブクログ
つまづくことは誰にだってある
成功を積み重ねてきたしっかりした人も
充実しているように見えるまぶしい人も
そして、完璧に見える人でさえも。
誰だって、手探りで毎日を生きているのに、
自分だけがなんだかうまくいかないで足踏みをしているような気持ちになる。
歌舞伎をはじめとする観劇の魅力に、
ステキな登場人物とちょっとした謎解きだけど・・・
スラスラと読める優しい文体の奥底に、そんな分厚くて頼もしいメッセージが隠れている気がする。
それにしても、それぞれ違うお話の積み重ねだと思っていたのに、ラストに向けて少しずつ、密やかに物語が収束して、最後のページまで来ると、
待って終わらないでぇぇ
もうちょっと見せてぇぇぇっっ
ってなるの、ズルいと思う 笑
Posted by ブクログ
ミステリーを期待して選んだのに読み終わるとそことは別にあった物語の核に気持ちを持っていかれてしまう、という嬉しい誤算。
物語の冒頭では久澄は弱くて、1人では生きていけない、でも母も姉も祖母もみんな強く、自立していて…というような描写があるのですが、お芝居と紳士との出会いが彼女を少しずつ変化させて行き、物語の最後は久澄が芯のある魅力的な女性という印象に変わります。
この本に出てくる女性陣、みんなかっこいい!
Posted by ブクログ
とても良かった。グイグイと引き込まれて一気読み。『誰かがあなたを責めようとして発することばは、自分がいちばん言われたくないことば』『だから、あなたが傷つく必要はない。』というセリフが心に響いた。主人公が自分のペースで自分を変えるべく前に進んでいく姿に応援したくなる。
Posted by ブクログ
再就職に、転職に、自分と向き合うことに、敷居が高いと思われている歌舞伎に
1歩踏み出してごらんと言ってくれるような本
久澄のように自分の何もかもに自信が持てないと
高級なレストランやデパートに行くこともヒールを履くことですら躊躇してしまうのだろう
私なんて…と
過去私はそんな人に寄り添えず、頑張れ頑張れ、やれば出来ると押すことしか出来ていなかったと反省した
人それぞれペースは違うし考えも違うことを肝に銘じて寄り添える人になろう
Posted by ブクログ
音のひとつひとつが、雨粒のようだった。大きな雨粒がひとつひとつわたしの身体の上に降ってくる。皮膚の上で冷たく弾けて、わたしを濡らす。わたしはあっという間にずぶ濡れになる。
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え〜ん、これまた面白かった〜!!!
え〜、そゆこと?!堀口さんとしのぶさん切なくて泣いた…。
ちょいちょいオペラ座の怪人のオマージュはさんでるのが素敵。
好きなものがあるって…大切
久しぶりに著者の作品を読みました。
生の舞台っていいよね、と思うと同時に好きなものがあることの大切さを、改めて感じました。
道楽かもしれませんが、好きなものに触れることで働く、或いは生きる活力になるのは、自分も実感するところです。
さぁて、次はどの舞台に行こうかな!
Posted by ブクログ
「強がって生きないといられないくらい弱いから」とか「弱いところを見せられるくらいには強くなって」とか、20代のころにそんなルートを通った結果、多分自分は結局、ある程度強い人間だったんだなと、うっすら思う今日この頃。
ゆえに、どうにも主人公の弱さのようなところにもやもやしてしまう。
強く見える人も、その後ろにいろいろ抱えているものがあるよね、という気づきを得るまでの作品なのは重々承知の上で、自分とは少し、相性が悪かったんだなと。
ハラスメントをうまく受け流せ、とは言わないけれども、自分の弱さ・かわいそうさをずるずると引きずられていると、どうにもこうにも。
歌舞伎のチケットをポンとくれるなんて、羨ましい以外の感想がない。
いただきものだとしたって、それをいただくだけの環境だということだしねぇ……。
とはいえ、チケットをもらうのではなく、自分で買えるように働きたい、というモチベーションはすごく分かる。
歌舞伎もオペラも縁がないけれども、バレエは時々見に行くので、年々高騰していくチケット代に嘆きつつも、こういうときに躊躇なくチケットを買うために働いてるんだと自分に言い聞かせて買っている。
歌舞伎やオペラ、演劇のストーリーにも絡めつつの、ちょっとした謎解きはなかなか楽しいけれども、そう毎回謎にまきこまれては、せっかくの舞台がもったいない。
舞台の醍醐味は、日常も、気がかりも、謎もすべて忘れて、どっぷりとその世界に浸るところにあるはずなのに。
Posted by ブクログ
新しいことに興味を持ち、それが好きになれば人生が好転することもある。きっかけは大事だし主人公は辛い状況にいたけど周りに恵まれて良かったなと思う。誰もが辛さを抱えているけど勇気づけられる話で良かった。歌舞伎も見たくなっちゃうし、オペラもいいなぁ〜
Posted by ブクログ
歌舞伎にはまったく興味がないけど、この本を読んで一度行ってみたい気になった。歌舞伎という、自分の知らない世界を少し見れた気分。
ラストは、想像していないような展開だった。
Posted by ブクログ
会社で先輩からセクハラパワハラを受けて現在家事手伝いの久澄。祖母のしのぶさんの依頼で観劇に行き魅力にハマっていく。自分を卑下してばかりの久澄、状況的にしょうがないのかもしれないけどイライラした。ワルサの留守番不満で拗ねる様子が可愛い。
歌舞伎昔は観に行ったのですが最近の有名役者は女性関係のだらしなさが目について「女遊びは芸の肥やし」とかいまだに思っている男の集まりだと思うと見に行く価値もないかと思ってしまう。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ優しい女性の再生を描いたミステリでした。
主人公の久澄だけでなく登場人物それぞれの傷に寄り添い、そして包み込んでくれるような作品だったように思います。
主人公となる久澄は、会社を辞め実家の家事をしている女性。現状に対して焦りはあるものの、働きに出る勇気も持てず、母や姉に甘えて日常を過ごしています。
そんな彼女に舞い込んだのは、祖母からの観劇代行のバイト。
外に出ることが難しくなった祖母に代わり、頂きもののチケットで観劇し、その感想を伝えるというもの。
久澄はこのバイトをきっかけに少しずつ歌舞伎をはじめとした舞台の魅力に惹かれていくが、行く先々で小さな事件と、なぜか毎回老紳士が現れ……
読みどころとしては、歌舞伎の観劇、老紳士との出会い、そして行く先々で出会う謎を通して描かれる久澄の再生が一番大きいかなと思います。
各劇場で起こる事件と作中の舞台で演じられる劇のストーリーをリンクさせ、それぞれの事件の裏にある人間心理を浮かび上がらせる。そうした物語のリンクもうまかったです。
前半は久澄とは直接関係のない人が起こす事件が中心ですが、彼女の友人であったり、姉がストーリーに絡んでくると物語の奥行きがグッと増す。
社会からいったんドロップアウトしてしまった久澄と比較すると、彼女の友人も姉も自立した立派な女性。そうした女性たちと自分を比較してしまったり、あるいは反目してしまったり……。
そうして久澄はまた落ち込んでしまうのだけど、それを救うのもまた舞台と謎の老紳士。そして久澄自身でもあったりします。
そして自立した強い女性たちと思われた彼女たちの秘密が明らかになり、人間だれしも弱さを抱えていることに気づかされる。
そして久澄が彼女たちの弱さを受け入れられる強さや、優しさを取り戻していることもわかってくる。
作中でも触れられているけど、物語の力、趣味の力、好きな舞台俳優といった推しの力は、不要不急と言われつつも、一方で人生を前向きにしてくれる力もあると思います。
この本を読み終えるころには高尚に思われた歌舞伎やオペラといった舞台も、マンガ、アニメと変わらないとっつきやすさを持ち、そして人を元気づけてくれるものだということに気づくことができました。
そして最後に明かされる老紳士の謎。謎は明かされつつも、一方で当事者たちの心理は完全に明かされないところもあり、そこがまた奥深かったし、彼らの関係性を否定しない、著者の近藤さんの優しさも感じました。
個人的にもう一つ好きなポイントは、本編とはあまり関係ないけど、久澄の飼い犬の描写。近藤さんの作品は犬の描写が毎回素晴らしいと思うけど、今回もかわいらしかった。
ストーリーもそうだし、この犬の描写にも癒されたように思います。
Posted by ブクログ
職場でハラスメントを受け退職した岩居久澄は、心に鬱屈を抱えながら家事手伝いとして日々を過ごしていた。
そんな彼女に観劇代行のアルバイトが舞い込む。祖母に感想を伝えるだけで五千円くれるという。
歌舞伎、オペラ、演劇。初めての体験に戸惑いながらも、徐々に芝居の世界に魅了され、心が晴れていく久澄だったが――。
私が行く芝居に必ず「親切な老紳士」がいるのは、なぜだろう?