【感想・ネタバレ】警官の血(上)(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。だが卒業後、その血を見込まれ、過酷な任務を与えられる。大学生として新左翼運動に潜りこめ、というのだ。三代の警官の魂を描く、空前絶後の大河ミステリ。

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Posted by ブクログ

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暗い内容だが、その奥深さを目の当たりにしている。前半、清二が戦後すぐに下町で警官として勤務し、後半は清二の子・民雄が父親の自殺の真相を知るべく警官となり暴いてゆく。前半の清二は戦後の混乱期の土埃の匂いのする中、ホームレスと関わりながら警官として生きていく。妻の多津がとても賢明で夫を支える姿に共感。後半の民雄、亡き父親の友人に支援を受けながら高校まで卒業し、警官となり北海道大学で長期間の囮捜査員として勤務。精神的に厳しい捜査により不安神経症となり日々苦労する。警官や家族の苦労は見えないが壮絶な仕事ですね。

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2020年08月15日

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ネタバレ

上下巻読んでの感想
安城清二、民雄、和也。三代に渡り警察官として生きた男たちの物語である。
終戦直後に警察官採用試験を受けた清二は、警察練習所で同期だった三人と共に警察官になる。
それぞれに将来に向けた希望はあったけれど、清二の希望は駐在所勤務だった。
やがて希望通りに天王寺駐在所に配属された清二だったが、ある日突然に謎の死を遂げる。
万引常習犯の少年と父親との場面が印象に残っている。
警察官でもあり父でもある清二。
民雄にとっても印象に残る出来事だったのだろう。
父として警察官として清二を尊敬していた民雄だからこそ、突然の清二の死が納得できなかったのだ。
いつか事実を突き止めたい。
それは自然な思いだったように思う。
公安というと後ろ暗いイメージが付きまとう。
組織だった左翼運動は次第に暴力化し、民雄が任官した頃は公安の果たす役割もいまよりは大きかったのかもしれない。
仕事なのだから。そう納得はしていても、神経が擦り減っていくのはどうにも出来なかったのだろう。
学生運動では多くの犠牲者が出たという。
命を失った者も、その後の人生が変わってしまった者もいた。
民雄もまた、その多くの犠牲者のひとりなんだと思う。
PTSDなんて子どもだった和也にわかるはずもない。
警察官なのに、家では母親に暴力をふるう父親。
父親への反発もあったのだろう。成長し同じ警察官になって、あらためて父親が理解できた部分もあっただろう。
父親としてはけっして立派な父親ではなかったけれど、警察官としては誇れるような父親だったと和也は思っていたはずだ。
事実を突きつけられたときの和也の対応が、三代にわたる警察官の血を感じさせた。
したたかであるけれど、間違ったことはしていない。
父である民雄ほど弱くもなく、祖父である清二ほど純粋でもない。
利用できるものは利用し、したたかに組織の中で生きていく。
それが和也の選んだ道なんだろう。
読んでいて長さをまったく感じなかった。
それぞれの時代を感じさせるように、物語の中に流れている当時の空気感がいい。
重厚さも、構成の巧みさも、人間描写も、細かな設定も。
すべてが面白く、すべてを楽しむことができた。
犯人は途中で「この人怪しい」と思った人物だった。
やっぱり・・・とは思ったけれど、ガッカリはしなかった。
犯人当ての物語ではないし、そこにはあまり重要性は感じずに読んでいたからかも。
読みごたえは十分!!

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2017年03月02日

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ネタバレ

祖父・父・そして息子と
3代に渡り警察官となり
1つの事件を追い求める。
そんな話である。

と有る事件が柱であるが
その事件だけでは無く
その時代の主人公を中心とした
人生が書かれている点で
戦後段々人々が
裕福になるそんな
移り変わる時代背景も
一緒に読むことが出来る。
確かにスケールの大きな
読み応えのある本である。

「上」は祖父と父の人生の途中まで・・・
現在「下」のいよいよという所まで来ている。

勿論未だ犯人の予想も立っていない。

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2016年06月08日

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ネタバレ

親子3代に渡る、警官の物語。
戦後すぐの焼け落ちた日本から、高度経済成長を経て、成熟社会と移りかわっていく、社会派ドラマとしても楽しむことができた。

タイトルにある、警官の血、とはなんなのか。

警官=「正義の人」であるべき、と世の中は当然期待をしているだろう。悪に対して敢然と立ち向かう、それこそが警官の本分であり、警官の血であると。

ただし忘れてはならないことは、
警官もまた「唯の人」である、ということである。1人1人の性格があり、価値観があり、生い立ちがあり。そして、家族があり、恋人があり、それ故の苦悩もある。葛藤もある。

警官の血、とは、唯の人の血、でもあるのだ。
警官の血、とは、「警官」という職業への誇りや憧れや夢を描きながらも、その一方でこの職業が放つ独特の「粘着質な匂い」に、好む/好まざるとにかかわらず惹きつけられた、その「血」を持つ、3人の血族の話である。

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2016年03月19日

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作者の作品はエトロフとか戦時もの以降、読む機会を失っていたので、警察ものとして初読。作者本人も書いているように、警察署長の様な警察大河小説。

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2014年07月05日

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ネタバレ

2008年版このミステリーが凄い!第1位
と、帯に書いてあります。
ミステリーって謎が一つでもあったらミステリーって事ですか?

父の清二と息子の民雄の2部構成。
民雄の話の方が面白かった。
学生運動?の話とかスパイ活動とか。

何故そこまで精神的に参ってしまうのかの描写が足りないんでは?と思ってたけど、この小説に限らず人がどの程度メンタルがやられてるかなんて、こっちがどれだけ想像出来るかによるよなぁと。

酒癖悪くてカッとなったら手を出すのも、酒飲んでようが無かろうが手を出す時点で性根に問題あるだろ?
と瞬間的に思うけど、カッとなって手を出すのも、私が瞬間的に手を出すとかあり得ないと思うのも、描写が足りないと思ってしまったのも、大差ない気がしてきた。
だって彼はカッとなって手を出した後反省してるし。
ということで、カッとなって手を出すのはあり得るということになりました☺️

下巻はこれから読みます。

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2023年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私が今まで読んだ警察小説で、
複数世代に渡って話が展開するのは初めてなので、
興味深く読んだ。

過去の事件を調べて~というのは幾つもあるけれど、
基本的にその事件を再捜査している世代で
解決するので個人的には目新しいなと。

清二・民雄編は時代背景になじみが無いので、
ややとっつきにくさを感じた。

基本的に話は面白いと思うのだが、
登場人物に対して思い入れができる前に
次の世代に移っていくのは個人的に物足りない。
でもこれ以上各世代の話を長くしても冗長と思うだろうし、
世代をまたぐ話って難しい。

上巻は民雄の駐在所勤務手前まで。

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2014年03月26日

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