あらすじ
ナチによるユダヤ人虐殺といった史実について、意図的に歴史を書き替える歴史修正主義。フランスでは反ユダヤ主義の表現、ドイツではナチ擁護として広まる。1980年代以降は、ホロコースト否定論が世界各地で噴出。独仏では法規制、英米ではアーヴィング裁判を始め司法で争われ、近年は共産主義の評価をめぐり、東欧諸国で拡大する。本書は、100年以上に及ぶ欧米の歴史修正主義の実態を追い、歴史とは何かを問う。
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Posted by ブクログ
サブタイトルは「ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで」。著者は二つの理由で日本の歴史修正主義は扱わない、と言う。一つは、著者の専門が西洋史であるということ、もう一つはヨーロッパと日本では「枠組み」が違うと言うこと。
ヨーロッパでは、歴史修正主義の問題は「歴史の否定の法規則」とともに展開してきた過程を明らかにする。ホロコースト、ジェノサイドは否定することのできない事実であり、それを否定することは「ヘイトスピーチ」を禁止することと同意である。つまり、歴史を問題にしているように見えるが、実は人種偏見や民族差別、特定集団への敵意を煽る行為である、と言う。ヨーロッパはもうそこまで「行っている」。
著者は日本の歴史修正主義は扱わないと言いながら、所々に日本の現状、問題を忍び込ませている。そうしなければならないくらいに、この国の学術界は危ういのか、とすら思えてくる。