【感想・ネタバレ】つみびとのレビュー

あらすじ

灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人をマンションに置き去り
にしたのか。

追い詰められた母親、死に行く子供たち。
無力な受難者の心の内は、フィクションでしか描けない。

圧巻の筆致で、虐げられる者の心理に分け入り、痛ましいネグレクト事件の深層を探る。
本当に罪深いのは、誰――。迫真の長編小説。

〈巻末対談〉春日武彦・山田詠美「子どもたちを救う道はどこに」収録

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Posted by ブクログ

ネタバレ

実話かなと思って読んでいたら、フィクションだった。
なぜ、餓死させてしまう程放っておけたのかと思っていたが、育つ環境が悪かったり、物を知らなかったりすると、そういう状況に追い込まれる事もあるのかもしれない。せっかく幸せになれそうでも、自分から意地を張って遠ざけてしまうのはどうしてなんだろう。

0
2025年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大阪で起こった幼児二人を部屋に置き去りにしたまま若い母親が放置して餓死した事件ーー
ここから構想を得たフィクション作品、だが重すぎる。


事件を起こしたのは娘 蓮音。
厳格で真面目な父、でも家庭より自身の立場や理想を優先する。
母の琴音は小さい子どもを置いて逃げた。
父は仕事はすれども家のことはなにもしない。親の代わりに、小学生のころから幼い子二人の世話をした。
歪みはじめる蓮音。自分を自分で大切にできない。

母親 琴音。彼女もまた愛のない家庭だった。
つねに暴力をふるう父親。それを耐える母、怒る兄、怯える自分…
やっと父親から解放されて現れた継父から性的虐待…
守ってくれるはずの母親も壊れていき、琴音の精神が蝕まれていく。精神病院にもかかったがあまりにも深い傷は人格すら壊していく。
そういう彼女が家庭から、子育てから逃げてしまうのも仕方のないことと思えてくる。

この本は幼児置き去り事件にとどまらず、蓮音の幼少期〜事件に至るまでの経緯、そして母 琴音の子ども時代〜結婚、家庭、家を出てからの生活、と二人の母娘の人生がつづられている。
しかも交互に語られる話が、しだいにどちらのことが区別がつかなくなっていく。


「母親不適合」と世間から烙印をおされる琴音だが、彼女なりにどうすればよかったのかを何度も自身に問いかける。
自分が逃げたから、自分が置いて行ったから

琴音は何回も心の中でつぶやく
「虐待は連鎖する」と。
では、虐待された自分が娘のまえから消えたのに、なぜ娘は虐待するのか?
置いて行った娘と縁がきれたのに、なぜ?
遠目に一度見た娘家族は幸せそうに見えたのに、なぜ?

そんな琴音に声をかける音吉の容赦ない言葉が刺さる。
「そもそも置いて出て行ったあなたは言える立場にない」
完全に遮断してしまうほどの強い言葉…
でも琴音はそうしないと精神がまた壊れてしまう。

子どものころに音吉のような、理解ある大人がいて受け止めてくれたなら、なにかが変わっていたかもしれない。いや、変わっていてほしい。

救いのない話で苦しい、、


2010年の事件からすでに10年以上。
いまだに育児や家事は女性の側に負担を強いられている。
母子で孤立している女性の叫びは届かない。

衝撃的な内容だが、学校教育で教えるべきことだと思う。
子どもを産み育てるには覚悟がいることを。
途中で放棄はできない。放棄した行く末のことを。

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2023年08月29日

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