あらすじ
伊豆・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。 現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。 折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の重大な警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせる。 小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。 全国民必読。二十一世紀にも読み継がれる400万部を記録したベストセラー小説。
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Posted by ブクログ
著者初読。
小松左京の『日本沈没 上』を手にしたとき、まず感じるのはその徹底したリアリズムである。地殻変動の兆候、列島を襲う連続的な地震、社会の混乱──それらは単なる娯楽的パニック描写をはるかに超え、読者に「国家の存立とは何か」「民族のアイデンティティとは何か」という根源的な問いを突きつけてくる。
科学的知見に裏打ちされた地質学的考察は冷徹であり、国家レベルでの対応が試みられる一方、人々の生活は無情に崩壊していく。その落差が、現代に生きる我々の現実感覚と響き合う。半世紀前に書かれた作品でありながら、震災大国日本に暮らす者として、ページを繰る手に冷たい汗を覚えずにはいられない。
また、本書は単に自然災害の恐怖を描くだけではない。祖国が消滅するという極限状況において、人は何を選び、何を支えに生きようとするのか。人間存在の尊厳や「生き延びる権利」を真摯に問いかけるその筆致には、文明批評としての重みがある。登場人物の一挙手一投足が、読者に自らの在り方を問う鏡となる。
『日本沈没 上』は、科学小説の枠を超えた社会的寓話であり、人間の本質を抉り出す重厚な叙事詩である。読み終えた後に残るのは恐怖や絶望ではなく、むしろ「人間はいかにして希望を見出すか」という問いの重みであった。小松左京の構想力と洞察の深さに、今なお畏敬の念を禁じ得ない。
Posted by ブクログ
日本SFの古典的名作で、ち密な設定に立脚した災害パニック小説。発表から40年以上たっても、まったく色あせない骨太の内容に驚き。SF愛好者にもかかわらず、喰わず嫌いをして今まで読まなかったことに後悔。上巻は第二次関東大震災まで。下巻にも期待。
Posted by ブクログ
高校生の時に読みました。
小松先生のお話は力強くて情熱を感じていました。
ラストでは泣けてしまったっけなあ。
いつの時代にも自分を捨てて誰かのために人生をかけてくれる人がいてくださるんだよね・・・。
Posted by ブクログ
名作です。
最初に読んだのは中学生くらいかな、概略しか覚えていませんでしたが、今読んでも迫力があり、熱い。
風俗に時代を感じる部分もあるが、主題は今も変わらない、自然と人間の生き方。
熱く語る田所博士と、小松さんが重なって見えます。
地震や津波に対する対応はそのまま予測できている所と時代により変わってきているところがありますが、そこはしょうがないですね。慧眼です。
Posted by ブクログ
え?これ、最近の話?!何度もそういう場面が出てきた。1973年に書かれた日本沈没。大地震の状況は2011年のドキュメンタリーのよう。人間の心理、地震後の場景、全て何十年も前に書かれたとは思えないほどリアルで、フィクションであることを忘れさせる。
上巻では関東地方に大地震がやってくる。きっとこのようになってしまうのだろう、そう思わずにいられない。だから、読み進めると怖くて鳥肌が立ってきてしまう。
「想定外のできごとは起こらない」という態度について、何度も著者からの赤信号が送られている。3.11を経験した今、著者の言葉が身に沁みる。
3.11で起こったことを、40年も前に予想していた著者。震災を見届けるように亡くなったのは、何か深い意味を感じずにはいられない。