あらすじ
「日本のジーヴズ」と讃えられるユーモア・ミステリ!
大学の怪事件に挑むヘタレ教員・クワコーと奇人ぞろいの文芸部員。教員の自虐と女子学生の暴言が衝突するとき、謎は解かれる!
解説・辻村深月
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「クワコー」こと桑潟幸一は、消費者金融会社の取締役だったという経歴をもつ鯨谷光司(くじらたに・みつじ)とともに、千葉県権田市のたらちね国際大学に転任することがきまります。「レータン」に勝るとも劣らない大学事情を知って落胆しつつも、下流学者生活に適応していくクワコーでしたが、そんな彼の研究室に幽霊が出没するといううわさがあることを教えられます。
一方、クワコーは大学文芸部の顧問を務めることになり、部長の木村都与(きむら・とよ)、ホームレス女子大生のジンジンこと神野仁美(じんの・ひとみ)、ギャルの早田梨花(はやた・りか)、コスプレ女の山本瑞穂(やまもと・みずほ)などのクセのある部員たちが彼の研究室に押しかけてきて、うっかり彼が漏らしてしまうミステリの謎解きをおこないます。
もともと前作『モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』(文春文庫)でも、キャラクター性の強さは前面に押し出されていましたが、本作ではいっそう明確にそちらへ振り切った作風になっています。いまとなっては納得できるのですが、それにしても当初は、著者にこの方面の才能があることが意外に感じました。
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再読。やっぱり面白い、純文学作家×エンタメの最高峰。
自分はやっぱり、純文学なら純文学、推理小説なら推理小説として、それぞれ徹底してくれないと楽しめない。
まあ、純文学とかエンタメとかの区分の意味が何なのかと言われても困るけれど、本来「純文学」の作家であった著者が、純文学的でない作品をものしたとき、それは必然的に純粋に非純文学的になるのではないか。
ますます何を言っているのかわからなくなってしまったが、こういう作品は本当に読む方も余裕を持って読める。福永武彦の探偵小説のように、純粋に余技的というか、遊戯的なものとして書かれる(読まれる)ものであって、読む方も気が楽であるし、書く方も力を抜いて書けるのではないか?
「ノヴァーリスの引用」のようにやや純文学的な要素を持ち込んだようなミステリ?(あるいはミステリ的様子のある純文学か)は(同作が秀作であることは間違いないにしても)、やっぱり読む方も集中して読まないといけないから、疲れる。面白くても、疲れる。
その点、本作はただ、面白い。ただただ面白い。
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再読。
本屋でクワコー先生が文庫になっているところをお見かけ。
やっぱりいいなぁ、クワコー。
底辺の底辺でそこになじんじゃう感じ。
実家から様々なものを持ち帰る、
嫁に行った娘みたいになってるとこもいい。
しかし、底辺といっても
大学の先生である。
実家のお母さんも、
大学の先生のクワコーが
まさか月給手取り「十一万とんで三百五十円」とは思わないだろう。
まさか学校の備品を持って帰ってるとは思わないだろう。
まさか底辺の学校の生徒に
危機を救ってもらってるとは思わないだろう。
そして、半分以下に減った給料で
なんとかやってこうとするけなげクワコー。
もっと頑張る!とか理不尽と戦う!とかないのである。
もう、ダメダメにもほどがあるよ。
やっぱり大好きよー
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前回の『モダールな事象』は殺人が絡みオドロオドロしい作品であったが、今作はスカッと爽やかにミステリーが展開していく。
廃校が決まったレータンから辛うじてたらちね国際大学に転任するも、最底辺大学には変わりなく、クワコーはやる気なさ、優柔不断さ全開でスタイリッシュ(?)に突き進む。
最底辺と言いながら、文芸部の学生達は各々個性的で優秀であり、クワコーに降り掛かる難題を解決していく。なかなかに楽しい大学生活を謳歌していらっしゃる。
方やクワコーはどんどん生活が苦しくなる一方。しかしながらこれがなかなかにある意味楽しそう。頑張れ、頑張るなクワコー
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3流私大准教授のドタバタ自虐コメディ風ミステリ
「なんか、この話し知ってるぞ!」と途中で気付いた
前にドラマ化してたんだよね
主演が佐藤隆太で倉科カナと桜庭ななみが出てたやつ
教師陣はまともな人間がいない(笑)
学生も学生でFランの大学生のイメージそのまんま
太文字になっているところがあって(ありすぎる感もある)
どこが面白いところかはわかりやすいけど、全てが面白いわけではない
ま、ライトな読者にはよいのではないでしょうか
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沈没寸前の短大から何とか抜けだし、千葉の底辺大学の准教授として赴任したクワコーこと桑潟幸一。
相変わらず風采も上がらずやる気もないクワコーだったが、教授職とは思えない超低収入に節約生活を余儀なくされ、顧問となった文芸部の生徒達に研究室を占拠されたり、教授達の派閥抗争に巻き込まれ使いっぱしりをしたりする毎日。
そんなクワコーを、怪事件が毎月のように襲う―。
ああ…クワコー面白すぎる!
学園を舞台にしたライトミステリなのですが、クワコーの小説を楽しむにあたって、わたしにとってミステリ部分はメインではありません。
クワコーシリーズの最大の魅力とは、彼の煩悩のかたまりのような俗人っぷりなのです!(たぶん)
何しろ彼ってば、卑屈なくせに努力も大嫌いだし、無駄にプライドも高いのに意志薄弱で長いものにすぐ巻かれるし、思うようにいかないことは全て他人や環境のせいにするような、ネガティブで打たれ弱いどうしようもない人間。
ほんと、すごく共感できる(笑)し、読み進めていくうちにクワコーがだんだんいとおしくなってきちゃうのです。
人間の醜い部分をぐりぐりとほじりながらも自虐がくどくなりすぎないよう調節される、綿密かつ闊達にすべっていく筆とあいまって、彼の冴え渡る自虐の詩をあますところなく楽しめる、奇跡のようなシリーズなのです。
そしてまた、ゆとり世代のオタク文芸部員たちの人物造形も秀逸でした。
彼女たちの言動もすごく自然で、まるで目の前にいるみたい。
クワコーと彼女たちの噛み合わない会話もシュールすぎて、おかしい。
タイトルからして、スタイリッシュって・・・。脱力するわ!
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「モーダルな事象」に続く、クワコー(=桑潟幸一准教授)シリーズ(?)の第二弾。
前作はユーモアミステリ的な要素とホラー的な要素が融合した不思議な作品だったが、今作はひたすらユーモアミステリに徹しており、とにかく笑えました。
芥川賞作家であり、ミステリー畑でも「グランド・ミステリー」のような大傑作を書く一方、このようなおバカな作品も書ける作者の引き出しの広さには、素直に脱帽するしかないですね。
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こういう作風でもいけるのか、と作者の力量に感心。
楽しいユーモアミステリーってところなのかな。
でもこういう描写の仕方って、とっても世代を感じる気がする。人によっては古いと思うかも。
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「モーダルな事象」は結構重い小説だったが、今作は表紙カバーに偽りなし、お気楽小説。
ミステリとしてはメタを使わずしっかりしているが、いかんせん登場人物の少なさから容易に真相を推測できる。
わかりやすくてドラマ向き。
だが面白いのはやはり奥泉さん独特の会話劇だ。
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「電車の中では読まないほうがいい」
このアドバイスに従ってよかった。本書を読みながら何回吹き出したかわからない。
読みどころとしては謎解きではなく、著者の語り口である。学生の話し方をよく観察されているのだろう。「なんかこういう喋り方のヤツいるよな」と思わせるほど、学生とは何十歳も離れているのに、うまいのだ。また、古典的な語り口がしばしば見られると思うのだが、エンタメとの組み合わせが妙に笑える。