あらすじ
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昨今、タイトルに何がしかMBAと書かれた本は、ときとして西欧的なMBA教育のメリットの礼賛か、冷たく無味乾燥なファイナンス理論の本だと、先入観を持って考えられてしまうところがあるかもしれない。けれどもこの本では、精緻な企業価値評価理論を知るだけでなく、人々の信頼によって成り立つ資本市場を理解し、市場にかかわる人々の「息づかい」さえ感じることができる。
著者はハーバード・ロースクールに学び、投資銀行などの前線における経験を豊富に持つM&Aアドバイザー。全8章立てで、価値評価方法の本質を説明することを目標に、基礎編と実務応用編に分けて構成されている。第3章までの基礎編では、「企業価値」およびそれを決める要因、価値の測り方など、MBA教育とその実践の場における、「経営のグローバル共通言語」を学ぶことができる。
応用編では、「株価算定とM&Aの実務」が焦点になり、会社の値決めの実際や、「価値創造」の仕掛けに関して、最新のトピックスが数多く収められている。単色刷りではあるが図表が多く、M&Aスキーム全体についての理解の助けになる。巻末では、用語索引が日英併記され、参考書としての使い勝手もよい。
本書は、単に理論を伝えようとする図書ではないし、練習問題がたくさん収められたテキストのたぐいでもない。むしろ、著者の「思い」が託された1冊である。ふとした行間で、現場を大事にする著者のメッセージに触れられるため、読んでいて楽しい。また、歴史的背景にまで言いおよぶ、著者の思いやりにあふれた筆遣いが印象的だ。
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Posted by ブクログ
企業価値評価の世界ではバイブル的な位置付けの本。
M&Aの際に投資銀行が行うバリュエーションの実務や考え方のエッセンスが濃密に詰め込まれていて、噂に違わぬ良著だと感じた。
筆者があとがきに「なるべく素朴で原理的な質問を掲げ、普通に読んで納得のいく説明をすることを心がけた」「この本の内容が資本主義や米国流「なるほど」と理解され」と書いているとおり、ファイナンス入門書では手が届かないような細かなポイントまで抑えられており、コーポレートファイナンスはもちろん、資本主義経済そのものに関わる感覚が磨かれる一冊。
以下学びメモ
・指標の関係性
EBITDA=EBIT(営業利益)+減価償却費
NOPAT=税引後営業利益
企業価値PV=c/(r-g) c:収益力, r:資本コスト, g:成長性
※経営の目的はPVの最大化(会社は株主のものという発想に立てば特に)なので、rを小さく、gを大きく
PER=時価総額÷税引後利益
PBR=時価総額÷簿価純資産
資本+時価評価替による資産額+のれん=時価総額(株価×株数)=市場の期待値
※ここにはネットデットは含まれない(=借金をして得たお金はカウントしない)
・企業価値計算のリアル
各数値は教科書どおりには決められず、実務的には感覚。投資家の信頼を背に実績と信用を積み上げた投資銀行の手数料が高いのは、ある種当たり前と感じた。
・LBOの直感的な理解
買収先の株を担保にして大きな額のお金を借りる→それをもとにM&A→金利払いが大きくなる分の税金抑制効果も働く→経営の合理化→数年後に企業価値を維持して売り抜ければ、元手に対して高い利回りが実現できる。
・ベンチャーの時価総額が乱高下する理由
ベンチャーのPVが急に上がる理由は、gの期待が一気に上がるからであり、cが高くなったわけではない。ゆえに市場の期待度が下がった瞬間にPVも暴落することになる。
・バリュエーションにおいてなぜEBITDAが重要なのか
EBITDAは上記の通り、会社の財務構成にかかわらず、事業活動そのものが生み出すキャッシュの金額を表している。M&Aにおいて、金利額や税金額、償却額などは買収側の財務施策によってある程度コントロールが可能であることから、価格算定にはむしろ純粋な「稼ぐ力」であるEBITDAを指標とする方が理にかなっているため。
ちなみにバリュエーションの際にEBITDA倍率を使う際も、その分母はネットデットを含む企業総価値(≠時価総額)としなければならない理由もここにある。稼ぐ力であるEBIDAと比較するのは、財務構成が反映された時価総額ではなく、財務構成は反映しない企業総価値と比べるべき。
→むしろ、この企業価値を財務施策の改善等によってさらに高められそうであるならば買収の余地があることになる。ブルドッグソースの例とかがそう。
・経営本部が担うべき機能
経営企画:cとgを上げる。事業計画を練ってその進捗をモニターする
人事:cとgを上げる。人的資源配置や働くインセンティブの付与
財務:rを下げる。資本コストを絶えずチェックして効率化
IR:rを下げる。市場参加者が感じるリスクを下げて資本コストを圧縮する
コーポレートガバナンス:c,r,gが適切に動いているかをチェックする
・大企業の経営が傾く典型例
技術発展等、なんらかの脅威が市場に噴出→対策を取らざるを得ない→その中で長年の成長の影に隠れた問題点が露呈→とともに対策により従業員に窮屈が強いられる→問題意識の高い人材が離脱→人材流出により危機感が拡大→状況はさらに悪化
DXが起きた際の銀行などは特にこのイメージ
Posted by ブクログ
ファイナンスの名著
本質をついており、非常にわかりやすい。
メモ
・企業価値はpv=c/r-gで表され、収益力、リスク、成長率で決まる。
・市場価格と買収価格が異なる理由。
1流動性がなくなるためでぃすかうんとが働く。
2支配権プレミアムが発生する。