あらすじ
コーンウォールの湖畔荘で起きた赤ん坊消失事件。屋敷の現在の持ち主は、消えた赤ん坊の姉でロンドン在住の高名なミステリ作家、アリス・エダヴェインだった。当時、湖畔荘には三人の娘がいて、消えた赤ん坊はまだ乳飲み子で待望の男の子だったのだ。刑事セイディはなんとしてもこの事件の謎を解こうと、作家に連絡を取る。1910年代、30年代、2000年代、それぞれの時代の秘密を炙り出すモートンの見事な手法。複雑に絡み合う愛と悲しみがもたらすものは? そして、最後の最後で読者を驚かすのは、偶然か、必然か? モートン・ミステリの傑作。/解説=大矢博子
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Posted by ブクログ
玉ねぎの皮をむくように、少しずつ明かされる真実から目を話すことができなかった。
エプロンのポケットに入れ、ほんの少しの時間でも空けば、続きを読む。
読まずにいられない。
そのくらい、次々と現れる新発見、新解釈。
二転三転する赤ん坊誘拐事件の真相。
テンポは速いが、決して浮ついてはいない。
誰もが大切な家族を守りたかっただけなのだ。
父も母も娘たちも。
だからみんなが秘密を抱えることになり、事態は複雑を極めることになる。
ゴシック・ロマンス風に始まった物語だったけど、大河小説並みの家族小説に落ち着きましたな。
それにしても、あれがそう繫がりこうなりますか!の連続で、セイディとピーターの間にさえ、何かかかわりがあるのかと勘ぐってしまったよ。
ほんの小さな違和ですら、あとから思い返せば「そういうことだったのか!」と膝を打つことになる。
丁寧な仕事をする作家さんです。
一つ残念なのは、赤ん坊が誘拐された日、契約期間満了でひとりの使用人が姿を消したが、誰もその後を追跡しないのね。
元々風来坊だから追いようがなかったのかもしれないけれど、普通なら一番の容疑者になるんじゃないのかなあ。
Posted by ブクログ
ロンドンで刑事をしていたセイディはある事件で失策を犯し、祖父の住むコンウェールで謹慎することに。
そこには打ち捨てられた屋敷があり、ここでかつて男児の行方不明事件が起こり、未解決のままになっていた。
この事件に興味を引かれたセイディは現在の屋敷の持ち主であるアリス・ウェダインへ手紙を書き、連絡を待つ。その一方で自ら事件捜査を始めていた。
一方、ミステリ作家となっていたアリスにとって弟の行方不明の事件はすでに終わったことであり、彼女の手紙を無視していたのだが……。
70年前、果たして湖畔荘で何が起きたのか?
長い時を経て真実が明らかになるときがやってくる。
今年、最初に読んだのがこの作品で本当によかったと思います。
消えた赤ん坊の謎。そして、その事件に関与したものは誰なのか、そして彼の生死は?
読みながら、いろいろと考えながら、こうではないか、あーではないかと考えるのはとても楽しかったです。
セイディのような女性もアリスのような女性も大好きですが、私がこの物語でもっとも惹かれたのはアリス、デボラ、ケイトリン、そしてセオの4人の母であるエリナが好きです。
第一次世界大戦で心に傷を負った夫アンソニーと折り合いの悪い母親を抱えながらも、必死で家族が幸せに至る道を探す彼女は勇敢でありながらも辛い日々を送っている。
そこへ差し出された手を取りたくなるのも人間らしくてとてもいいなぁと思いながら読んでいました。
以前読ませていただいたブロ友さんの感想に家族の物語とありました。
確かにこれは家族の物語で、過去へ向かうのではなく未来へ向かうために必要な物語なのだろうと私は思っています。
そしてエリナのような女性にあこがれます。強くて、でも弱い。けれども、その弱さに立ち向かうことが出来る女性。
彼女がいればこそのこの物語は翻訳された青木純子さんや解説を書かれている大矢博子さんが書かれているように尊いのだと思うのです。
昨年は重たい一冊から始まりましたが、今回は素敵な物語から始まりました。(大事なことなので繰り返しましたww)
今年もたくさん素敵な本に出合えますように♪
はぁ、楽しい時間だった(*^^*)