あらすじ
温室効果ガスの排出量をゼロにするしか、我々が生き残る道はない。「気候大災害」を回避するために、ビル・ゲイツは政治・経済・科学のあらゆる側面から分析を進めてきた。10年の調査が結実し、パンデミックをも予期した著者の描く未来像が明らかに。20年ぶりの著作。
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Posted by ブクログ
すごく面白かった。温室効果ガスの排出を510億から0にしなければならない理由、現状の問題の細分化が簡潔にまとめられていた印象。
具体的な行動も第11章以降で述べられている。
第11章 ゼロ達成に向けた計画
イノベーションの供給を増やす
[1] これからの10年で、クリーン・エネルギーと気候関係の研究開発予算を五倍にする。
必要な技術
炭素を排出せずに生産される水素
フルシーズンもつグリッドスケールの電力貯蔵
電気燃料
次世代バイオ燃料
炭素ゼロのセメント
炭素ゼロの鋼鉄
植物由来や細胞由来の肉や乳製品
炭素ゼロの肥料
次世代核分裂
Fガスを含まない冷媒
核融合
炭素回収(直接空気回収と局所的な回収)
地下送電
炭素ゼロのプラスティック
地熱エネルギー
揚水発電
蓄熱
干魃や洪水に強い食用作物
炭素ゼロのパーム油の代替物
[2] 高リスク高リターンの研究開発プロジェクトに、より多くの資金を投じる。
[3] 研究開発を最大のニーズとマッチさせる。
[4] はじめから産業界と協働する。
イノベーションの需要に弾みをつける
購買力を行使する。
コストを下げてリスクを減らすインセンティブをつくる。
新技術を市場の送るインフラをつくる。
新技術がほかと競合できるようにルールを変える。
炭素に値段をつけるカーボン・プライシング。
グリーン電力基準。
グリーン燃料基準。
クリーン製品基準。
古いものを追い出す。
Posted by ブクログ
地球温暖化に疑いの余地はない。国連の報告書でもこの事実が確認される。
CO2の世界の排出量は年間で510億トンでこれを2050年までに0にする必要がある
内訳は電気を使う27パー、ものをつくる31ぱー、ものを育てる19ぱー、移動する16パー、冷やす暖める7パー。
電気をつかう:現在世界の3分の2が化石燃料。
太陽光や風力は間欠的エネルギーだが電気は常に必要。再エネを普及させると間欠性の問題が大きくなるため、安価なバッテリーの開発や他のエネルギー源が必要。原子力は有効な手段。
ものをつくる:コンクリートや鋼鉄を作る際、炭素を結合する過程でCO2が発生する。
工程の電化、炭素回収、効率的な資材活用が必要。
貧困国の人々がより良い暮らしをできるように、エネルギー使用量は増やすべきで経済成長を止めるべきではない。そのエネルギーがクリーンなものである必要がある。
気候変動の被害は貧困国である。農業が主要産業であるため。気候変動の原因になることをほとんどしていないのにその影響を受けることとなるため、最も貧しい人たちを救うためにもゼロを達成する必要がある。
ゼロ達成は慈善事業ではない。新しい技術でブレークスルーを起こし、産業を生み出すことで、雇用創出と排出削減の両方が実現できる。
そのために、グリーンプレミアム(既存技術と新技術のコスト差)を小さくする必要がある。市場原理、経済合理性から。
それには必ず政策として取り組む必要がある。民間だけでは研究開発にコストがかかりそのリスクをとれない。
また、2030年ではなく、2050年ゼロをゴールにして取り組みを進めるべき。例えば石炭火力発電から石油火力発電に更新したら2030年は達成できても、耐用年数を考えるとその時点で2050年の達成は難しくなってしまう。
Posted by ブクログ
新型コロナで経済活動が落ち込んでも、CO2排出量はわずかしか減らなかった。
温室効果ガスは年間510億トン。どのくらいの割合になるのか計算する。1%年間5億トンを超える技術に投資する。
鉄鋼とセメントの製造は全排出量の10%を占める。発電は27%。
電気量は、1メガワットで小さな町、5000ギガワットで全世界。
空間が必要=太陽光、風力、水力、だけでは賄えない。エネルギー空間密度が低い。
費用はいくらかかるのか=グリーンプレミアム。これが高すぎると誘導するのは無理。マイナスなら自然とそちらを選択するはず。
DACで吸収するのは年間5.1兆ドルかかる。最も費用がかかる方法。
グリーンプレミアムが低い電気を作って、エネルギーを電気に依存することが近道。
水力発電は、土壌の炭素がメタンに変わり放出される。逆効果になる。
経済発展には安いエネルギーが必要。中国は石炭火力を75%下げて経済発展した。
太陽光や風力、水力がただなのにグリーンプレミアムがかかるのは、化石燃料が非常に安いから。
場所によっては再生可能エネルギーが利用できない=送電にお金がかかる。
安定供給のために化石燃料が求められる。バッテリーでは対応できない。原子力は必要。
クリーンなエネルギーは、今後さらに必要になる。人口増加、経済発展のため。現在の発電量の3倍以上必要になる。
電気が占める割合が多くなると送電網のスマート化が必要になる。
原子力以外にはない。発電設備の資材量も最も少ない。太陽光が一番多い。テラパワーの原子炉。
核融合はいまだに実験炉段階。プラズマを発生させるための電力が、発電よりも多い。
養生風力は有望。
バッテリー、揚水発電、蓄熱、安価な水素。燃料電池のための水素を得るために電気を使うと持ち運べるが、エネルギー効率は落ちる。
炭素回収=コンクリートの中に埋め込む。
電力使用量を平準化、または減らす。
ヒートポンプによる熱源にする。
セメントは製造過程で二酸化炭素が出る。エネルギーの問題ではない。
製鉄は電炉で解決可能。
プラスティックは、炭素を使って製造する。閉じ込めて置ける。
結局、可能な限り電化し、脱炭素した電力網から獲得する。残った排出は炭素回収、資材をもっと効率的に利用する、という方法がよい。
食用に動物を育てることは大きな要因。牛のゲップにはメタンが含まれる。
ボーロッグは(
(緑の革命の引き金)、茎を短くした小麦を開発した。トウモロコシと米も同様のものができた。半矮性の小麦。肉食の方が餌のカロリーを使う。
肉の代わりに植物由来の肉をつくる。細胞肉、培養肉をつくる。食材の無駄をなくす。
ハーバーボッシュ法で合成肥料ができるようになって農業革命が起きた。肥料のおかげで、微生物が窒素を作らなくなった。製造に二酸化炭素を排出させる。
亜酸化窒素は回収できない。
森林破壊は人口増加のための食料と燃料を作るために起きる。森林破壊を補う植林はできない。
ガソリンほど安く密度が高いエネルギーはない。輸送のためのエネルギーは排出量の16%しかない。
電機自動車は、グリーンプレミアムはほぼゼロに近づいている。しかし、ガソリンが安ければバッテリーが高くてそうはならない。充電に時間がかかる。
代替え燃料には第二世代のバイオ燃料がある。食用ではない植物から作られたエネルギー。空気中の二酸化炭素を回収して炭素エネルギーを作る電気燃料。
バッテリーはガソリンの35倍の重さになる。
長距離の大型トラックは実用的ではない。
船と飛行機は、必要な動力が多いので電化できない。バンカー重油はとても安い。
小型のものは電気、船は原子力で。飛行機は代替燃料。
電気の飛行機は、二人乗りで3時間まで。
電気自動車が広く使われるとガソリン税の収入が減る=見かけよりもガソリンのコストが安い証拠。
冷暖房は電気のほうがすでに安い。ヒートポンプで熱を賄えばグリーンプレミアムはマイナスになる。=電化、電気を脱酸素化、省エネを進める。
収入が上がるほど炭素を排出するようになる。
最貧国では電気自動車よりワクチンのほうが重要。
マングローブは、防波堤より安くつき、浸水の被害を防ぐ。
ティッピングポイントに達して、海底のメタンガスが放出されるようになると取り返しがつかない状態になる。
ジオエンジニアリング=大気を一時的に変化させて気温を下げる=1%太陽光を減らせばよい=雲を白くする。
安上がりだが、世界的な合意が必要。
電気はクリーンでもそうでなくても同じ使い勝手。義務付けなければ安いものが売れるだけ。
アメリカはガソリンの10%がバイオ燃料になっている。
次世代バイオ燃料の研究が進まないのは、市場があることを確信できないから。
太陽光や風力を普及させたのは買取制度や補助があったから。技術開発によってグリーンプレミアムは少なく、またはマイナスになる。
2030年までに削減、と2050年までにゼロを達成、は同じ方向ではない。技術開発の目標が違う。
炭素に値段をつけるカーボンプライシング=温室効果ガスの排出は高くつくことを市場に示す必要gあある。
グリーンプレミアムを下げることは慈善事業ではない。これが新しいイノベーションのチャンスである、と捉えるべき。