佐藤泰志のレビュー一覧

  • きみの鳥はうたえる
    映画をずっと観たり、顔馴染みの飲み屋で突然サッカーをはじめたり、どこか懐かしく、また羨ましくもある。
  • 移動動物園
    ひりひりするなー。そこ書きますか…という汚さもふくめ、不器用な若者たちの、仕事をし、生きていく様子が胸に響く。自分はもう若くないわという実感とともに。
  • そこのみにて光輝く
    同名映画を観てから読んだ。これは映画の方が確実に良い。原作は1センテンスがかなり短めの文章で淡々とした印象。主人公の二人も映画のイメージが強く、少し淡白に感じてしまった。しかし、映画の続きと思われるストーリーも語られており、セットで悪くない。
  • そこのみにて光輝く
    久し振りに、こんな本を読んだかな。純文学作品なのだろうか。
    大衆小説が読みなれているが、この作品はスラスラ読める。
    しかし何が言いたいのか考えみると、どん底でも踏ん張って生きている家族に、色んな愛を忘れた男が介入していく物語。
    その中で起こる事は、かなり現実的なのではないのだろうか。そう考えると、今...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    ぬめぬめしている。腐った魚の死体がぷかぷかしている川の上に夕日が落ちるような、夏の夕方のべたべたした感じ。今よりマシになりたいと思ったら何かしら選んで嫌でも捨てていかなきゃいけないんだろうけど簡単に捨てられるものばっかりじゃないから捨てられないゴミが腐っていく。捨てたらもう見切りつけるしかないのにう...続きを読む
  • 移動動物園
    生前は目立つ評価を受けずに夭折したものの、近年の再評価が著しい佐藤泰志のデビュー作。

    表題作をはじめとしてここに収められた3つの短編は、いずれも寄る辺なき労働者の生活をビビッドに描きだす。この時点で、独特の言語感覚に基づく風景や心理描写のテクニックが荒削りながらもみられ、その後の傑作に繋がる片鱗を...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    なんていうんでしょう。確かに三島賞の候補となっただけの不幸感。
    最初から、本全体に漂う不幸な終末に向けての疾走が予想される本。売春を生業として家族を助ける千夏と激化するストライキに巻き込まれて仕事をさった達夫の恋愛を主軸とした話。重要な存在なのが、二人を結びつけた千夏の弟、拓児。よくある社会の底辺の...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    ドックを辞め、毎日を漫然と過ごす男。被差別部落に生まれ、貧困のどん底で生き、時に身体を売りながら家族を支える女。そしてその家族。その出会いと日常が淡々と描かれていく。
    第一部では、女の最も過酷な状況が明らかになり、男がそれを受け入れるところで終わる。
    第二部では、女は既に男と一緒に暮らしている。男が...続きを読む
  • 移動動物園
    1977年発表の表題作と1982年、83年発表の2作品を収めた短篇集。
    普段は芥川賞の候補になるような作家の作品は読まないのであまり比べることは出来ないが、このように内面を掘り下げる作家はやはり、2015年近辺の現代にはそう居ないだろうなと思う。
  • 海炭市叙景
    18話からなる、架空の市に暮らす人々の物語。
    新年から初夏までが描かれている。

    作品の印象としては、
    とにかく重たい。
    重く、閉塞感の強い世界。
    暗いエピソードばかりではないのに、鉛色の空みたいな負の空気が至る所に漂っている。

    本来は全36話で、春夏秋冬ーー1年間が描かれる予定だったらしいが、半...続きを読む
  • 海炭市叙景
    昭和60年代、バブルの頃。18の異なるストーリーが、架空の街「海炭市」で交錯する。舞台になってる海炭市が、作者の故郷である函館をモチーフにしてるのはすぐわかるから、情景を想像しつつ読み進んだ。優しさを感じる文章ではあるが、どうも救いが無い…。首都がバブルで賑わってた頃、地方はこの今の時代に通じる救い...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    行きたかったのに映画を見そびれたので、まず小説から読もうと手にとった。
    映画の予告動画を見ての印象を持って読み始めたのだが
    どうも映画のあらすじと比較すると、映画は結構設定を変えているようだ。


    全体に漂う倦怠感は心地よく感じる部分もあり
    注意深く具体的な名称を出さないが、分かる人にははっきりとわ...続きを読む
  • 海炭市叙景
    廃れ、変わっていく地方都市と
    そこに生きる人々それぞれの人生。

    一人一人に悩みや苦しみがあり、
    ズレを感じ、時に小さな幸せがある。

    それは私自身、
    そして私の田舎にもあるように。

    未完らしいのが残念。
  • 移動動物園
    夢中になって頁を繰るとまではのめりこめず。
    でも、「水晶の腕」はそこそこがっつり読めた。
    淡々とした筆致の中に、宝物が隠れてる気配。
  • 海炭市叙景
    年末恒例の「おすすめ文庫王国」からのチョイスはまず3位のこの本から(だけども今年のベストテンは今イチ食指が動かんなぁ…)。
    さてこの本、函館市と思しき北国の地方都市・海炭市に暮らす18の人々を淡々と描く。
    バブルの末期に開かれていく街並みに反比例しながら衰退していく人々の暮らしや心根。冬から春へ季節...続きを読む