佐藤泰志のレビュー一覧

  • 海炭市叙景
    ずっと以前に読んでいるはずだが、静かな文章と味わいのあるストーリー、登場人物。村上春樹と同世代で、一時期は期待もされながらも評価されず失意のうちに自死したのは無念だったでしょう。
    作品の舞台である函館に行き、その閉塞感や寂寥感に少しでも触れてみたい。
  • そこのみにて光輝く
    映画を先に見たので、登場人物全員に演者さんたちを重ねて読んでしまったのが、惜しかったなあと思った
    こういうのって本と映画どちらが先がいいのだろう、、
    それでもやはり、千夏は魅力的な女性だと思う
  • そこのみにて光輝く
    千夏と達夫の距離感も、達夫と拓児の距離感もすき。

    映画観た後での原作だったから、結構キャラクターイメージが違ったなあ。拓児は、菅田将暉みたいにガリヒョロではない。
  • きみの鳥はうたえる
    草の響きの映画をみるかDVDを買うか迷って、まずは原作から入った。きみの鳥は〜は、正直、よくわからない。若いとはいえ、古い時代とはいえ、ずいぶんいい加減で行き当たりばったりの男女だなと思っていたら、予想外の展開。そこを突き詰めればテーマは重いものになるのだろうけど、突き詰めることもなく。不思議。映画...続きを読む
  • きみの鳥はうたえる
    映画「草の響き」を観て、「きみの鳥はうたえる」を鑑賞後に小説を読んだ。普段はあまり読まない小説も、映画にのめり込んでしまったので、のめり込んで読み終わることができた。映画とストーリーがちょっと違うけど、きみの鳥はうたえるは今この年齢で読んで良かったと思う。
  • きみの鳥はうたえる
     『きみの鳥はうたえる』に集録されている「草の響き」を先に読み上げた。
     同タイトルの映画を先に観たところ、今の自分の状況と重なるところがあり、原作を読んでみたいと思い購入したもの。
    個人的な感覚では、スラスラ読めて情景が目に浮かびやすい、というものではないが、ところどころで立ち止まりながらゆっくり...続きを読む
  • 海炭市叙景
    20210917
    海炭市叙景を読んで
    函館の文学館の吉田さんの紹介で佐藤泰志の小説を読みたいと思って入りやすいと紹介された海炭市叙景を買った。
    最初の章で出てくる函館山、あまり自分が見た光景が舞台になっている様子を見た事がなかったのでそれだけで感動した。不思議な感じだった。
    吉田さんが佐藤ひさしの中...続きを読む
  • 海炭市叙景
    海炭市という北方の架空の街を舞台にした群像劇、となっている。

    語り手は次々と変わっていき、それぞれの視線で街とそこに住む自分という存在が語られていくのだが、ぜんぶを読み終えてふと誰にも寄り添えきれなかったような気がしている。街という絶対的な共通項はあるのだけれど、転々ばらばらな感情であり、街を統合...続きを読む
  • 黄金の服
    読んでいるときの感覚は「黄金の服」がいちばん好きなのだけれど、たぶん「オーバー・フェンス」のほうが書こうとしていることの確固さはあるのだろうなと思う。佐藤泰志の描く北方の街はそれだけ人物の思いが反映されやすい場所のようだ。
    「黄金の服」の舞台は東京で、そこにいる若者たちはふわふわとどこか浮ついている...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    ずっと読みたかった佐藤泰志作品。終始暗鬱としているけど、ねばついていない独特な雰囲気。結末がまったく読めず、読み進めたい気持ちと読み進めるのが怖い気持ちがずっと介在していた。
    達夫も拓児も千夏も、妹も松本も、全員が人に愛される要素がある人柄なのに、どうしてこうも一筋縄ではいかない世の中なんだろう。血...続きを読む
  • きみの鳥はうたえる
    『きみの鳥はうたえる』と『草の響き』という話が入っていた。
    きみの鳥はうたえるの作中に流れている雰囲気は好き。限りなく透明に近いブルーかな、雰囲気が近いと思ったのは。たぶんいい場面なんだろうなという場面がおおかった。(傘を差して三人くっつき合って歩くところなど)だがそれをじっくり感じる間もなく次に流...続きを読む
  • きみの鳥はうたえる
    21歳の男女三人を描いた作品。
    こういう純文学の主人公はどうしてもきっちりとした日常生活に耐えられない人になってしまうのか。
    書店でバイトをする主人公・僕。しばしば無断欠勤、刹那的、時に暴力的。
    同居人の静雄に至っては職も無く、人の好意にたかって生きている。
    そして主人公の彼女になった同い年の佐知子...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    第一部「そこのみにて光輝く」は息を張りつめたような若さがある。くっきりした登場人物像たちの描写がうまい。特に中心の「達夫」と「千夏」がいいなあ~暗さの中にキラキラしたものがある感じ。

    「千夏」の弟「拓児」に誘われて「達夫」が訪ねた家は、開発に取り残されたようなちいさなバラック小屋だった。両親と姉...続きを読む
  • きみの鳥はうたえる
    若いときを振り返るっていうのは恥ずかしいか、なんとなく盛ってしまうか、飾ってしまうか、照れくさいものだけれど、それも振り返る時期(年齢)にも関係してくるのだろう。
    この『きみの鳥はうたえる』は佐藤泰志氏30代のデビュー作でおとなになりたくもなく、おとなになりきれず、でも、おとなになってしまわないとい...続きを読む
  • 海炭市叙景
    日本のどこにでもありそうな、しかしそれは架空の街。そこに住んでいる人々の暮らしと人生を物語る。一筋縄ではいかぬ人間を見つめる作者の目は張りつめている。(41歳の若さで自殺してしまった作者を想うとなおさら)

    「まだ若い廃坑」「一滴のあこがれ」「夜の中の夜」など、ひとつひとつの短い物語のタイトルから...続きを読む
  • 海炭市叙景
    著者と私は同年生まれ。同じ國學院大學卒。ただし著者は3年遅れて大学入学(哲学科だからただの浪人とは違う?)なので実際に大学生として被っているのは1年間。学科も違うので接触はなかったはず。まあ私はその後職員として勤めていたので学内ですれ違ったことぐらいはあったかも。芥川賞候補の小説家としても残念ながら...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    函館のサムライ部落で、格差社会の底辺で暮らしながらも、女千夏には、芯の強い輝きを見出し、男が引かれていく。映画版の拓児役の菅田将暉が好演。ねっとりとした筆致で、通い合うものを描く。6たび芥川賞の候補になった。小林信彦も宇江佐真理も村上春樹も賞に縁がなく終わった。
  • きみの鳥はうたえる
    映画が良かったので、原作があるというので購入
    初めて佐藤泰志という小説家を知った。

    表題作は、時代背景が80年代始め?と古いのだけれど、
    20代の刹那的考えと、未来への不安とで揺れ動く不安定さ、僕と静雄それぞれのうだつのあがらなさ、等の若者が漂わせてる雰囲気の書き方が良い。
    怠惰感や、閉塞感、それ...続きを読む
  • そこのみにて光輝く
    男と男、男と女。
    ふとした出会いがかけがえのないものになる。
    うらぶれた海辺の町で、流されるように生きていたおとこがえ、生を掴むまで。
    しょっぱい風の中に、まばゆい光が満ちる。
  • 海炭市叙景
    (01)
    現在形で描かれた現代の物語たちで、舞台は比較的大きな地方都市に一定している。18の物語たちには、それぞれ数人の人物が登場し、なぜいまこの舞台にいるのかという背景や、あるいは、この場所にどのように流れ着いたのかという履歴を自ら語るものたちでもあるが、彼女ら彼らへに対する作者の位置は、揺れ動い...続きを読む