海炭市叙景

海炭市叙景

924円 (税込)

4pt

北の町に暮らす人々を描く悲運の作家の遺作

「海炭市叙景」は、90年に自死を遂げた作家、佐藤泰志(1949-90)の遺作となった短編連作です。海に囲まれた北の町、「海炭市」(佐藤の故郷である函館市がモデルです)に暮らすさまざまな人々の日常を淡々と描き、落ち着いた筆致の底から、「普通の人々」の悲しみと喜び、絶望と希望があざやかに浮かび上がってきます。この作品が執筆された当時はいわゆる「バブル」時代でしたが、地方都市の経済的逼迫はすでに始まっていました。20年の歳月を経て、佐藤泰志が描いたこの作品内の状況は、よりリアルに私たちに迫ってくると言えます。
函館市民たちが主導した映画(熊切和嘉監督・加瀬亮、谷村美月、小林薫、南果歩などが出演)の公開は2010年12月。映画化をきっかけに、心ある読者に愛されてきた幻の名作が、ついに電子書籍となって登場!

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海炭市叙景 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    著者が生まれ育った函館市をモデルとした連作短編集。

     海炭市に居住する人々の小さな日々の物語で18編が交錯しそこに生活する人間の場面場面が海炭市を浮かび上がらせながら小さな存在で何でもない平凡な登場人物の心を映し出す柔らかくも愛しい至極の作品です。

     特に1編目の”まだ若い廃墟”は胸に響きます。

    0
    2021年04月17日

    Posted by ブクログ

    映画を見て興味を惹かれたので手に取った。映画の雰囲気ほど暗くはない、独特の淡々とした文体で進行する18の物語は、ワインズバーグ・オハイオを想起させる。

    0
    2020年12月09日

    Posted by ブクログ

    初めて読む佐藤泰志が、まさかの彼の遺作だった。
    函館市をモデルにした"海炭市"に暮らす人々の話。
    冷たくて灰色で、厳しい海炭市の冬。


    まだ若い廃墟について。

    「待った。ただひたすら兄の下山を待ち続けた。から始まる、冒頭のひと段落が、私は素晴らしいと思う。
    過去のことを話して

    0
    2020年08月06日

    Posted by ブクログ

    著者の未完の遺作となった連作短編。ついこないだ同じ著者の『そこにみにて光輝く』を読み、すくいようがないくらい閉塞感がありながらもその眼差し=筆致のやさしさに引かれて2作目を読んでみた。やさしさに引かれてと前述したけれど、多分に著者が自死した人であることを意識しているであろう自分。自死してしまうほど考

    0
    2019年06月23日

    Posted by ブクログ

    著者の故郷である函館市をモデルにした「海炭市」に住む
    人々を描いた群像劇。

    連作短編集の形式で、海に囲まれた北国の街を舞台に静かに
    営まれる人々の生活を優しく淡々と描いている。

    登場する人々の大半は、いわゆる「負け組」というカテゴリー
    に分類されるだろう人々。その悲惨なところが客観的に冷静に

    0
    2018年11月18日

    Posted by ブクログ

    続編ありと予告されていながら、作者の自殺によって本前編だけしか読めなくなってしまった訳ですね。この中でも前半と後半で若干色合いが異なっていて、前半はゆるい繋がりのある連作短編で、後半はほぼ独立した短編たち。どこかに憂いを抱いた人たちがそれぞれの主人公で、結末までは語られないこともあり、読者の想像如何

    0
    2018年04月18日

    Posted by ブクログ

    やがて春となり夏の初めとなるわけだが冬から始まるためか、切々と暗く寒い。真夏から秋は作者がいなくなってしまうのでない。暗いが身近に感じ温かさもある18編。気づけば海炭市の地図が頭の中に出来上がり自分もその叙景の中にいる。一話目の妹が今どうしているだろうかと読み終わっても気になる。

    0
    2018年01月22日

    Posted by ブクログ

    文体の、何たる瑞々しさ。
    熟した葡萄の皮に、
    ぷちっと歯を立ててその果汁と果肉を味わった時の、
    酸味、甘み、渋みのコントラストのような、
    冷えた視線の中にある瑞々しい文体に、
    何度もはっとし、
    ひどく安易な言葉であるが、感動した。

    その場所で、その時を全力で、
    働きながら食べて、町を歩く人々に宿る

    0
    2015年10月26日

    Posted by ブクログ

    海と炭鉱のある地方都市に暮らすさまざまな人びとの人生の断片を切りとって活写している連作短編集です。

    本作の舞台になっている海炭市は、著者の出身地である函館をモデルにしているようですが、日本のどこにでもある地方都市といえるように思います。えがかれているのは、人びとがいまだパソコンも携帯電話ももたない

    0
    2024年11月26日

    Posted by ブクログ

    函館〜。種々様々な行き当たりの遠景に炭鉱から観光都市に変わる町があって、地方の閉塞感が生々しい。でも書かれた時代のせいなのか、今よりはまだ世情に勢いがあるような。この間見た映画の原作だと思ったら違った…

    0
    2024年10月10日

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