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Posted by ブクログ
やるせない、すくいようがないようでいながら不思議と清貧的なさわやかさがある小説だった。しっとりと読み応えのある小説らしい小説だった。
特に第二部「滴る陽のしずくにも」のほうがよかった。それはたぶん、気だるく無頼に生きていた達夫が、結婚し子どもをもってそれなりに生きている様子が描かれていたから。独り身が好き勝手に生きることなど簡単で、結婚したりして守るものができても守りながら自分を捨てずに生きている達夫の姿がよかった。
義弟の拓児を介して出会った松本と達夫のやりとりがなおよかった。どちらも世のなかがどういうものかを感覚的に知っている男どうしという感じで。そう、男のなかには若いうちから実体験がなくても、自分をしっかりもちながら感覚的に世のなかとうまく折り合いをつけていける人がいるものだ。
Posted by ブクログ
海岸沿いの北方の小さな街での孤独な男が百円ライターがきっかけで出会う貧困と堕落した家族との物語
この小説は2部構成になっており1部は造船会社でリストラに会って間もない孤独で無職の達夫と貧乏暮らしでバラック小屋に住んでいる拓児と姉千夏と母親、痴呆の父親の4人家族に出会って何故かこの家族に惹かれてゆく達夫、特に娼婦である千夏に愛情を抱き初める、千夏は離婚暦があり夜の仕事で疲れ果て家族だけの為に生きていると割り切っているが達夫の事が気になり始める。
そんな二人の心からの遣り取りが夏の海岸と相まって実に鮮やかに描かれている。まさに”そこのみにて輝く”のは社会的にはちっぽけな存在である千夏と達夫の小さな愛です。
2部では二人が結婚しつつましくも暖かい家族を築いてゆく、弟拓児にも慕われ、平和で単調な生活にある時から達夫は水晶を掘る山仕事に興味を持ち始める。
有名な作家ではありませんが、この小説は人と人の出会い、心の深層にあるもの、その描写が実に鮮明で輝いている。登場人物や背景に読者をぐっと惹きつける魅力が有ります。
Posted by ブクログ
海炭市叙景で感じた文体の瑞々しさとは、
また少し違った眩さ溢れる作品。
一文の短さや、
出来事の始まりを回想で蘇らせることで、
特別な瞬間として装飾する方法や、
限りなく内的な移り変わりなはずなのに、
景色で語られるその心情やらが、
すべて抑制的なのに、
夏の光、冬の光、
生々しい底に?
もしくは底から?
薄くても差し込むその光が、
闇を浮かび上がらせながらも、
やはりその先の希望を影絵のように映し出す。
日常性と、非日常性。
安定性と、不安定性。
固定と、流動。
光と、闇。
そのなかに漂い続ける、
あなたと、わたし。
出会いに堕ちていくような一瞬が放つ、
潮の香りと波音に、
人間の本質を見る。
ずっと、薄い日差しのもと、
浜辺にいるようなのだ。
Posted by ブクログ
「とっつきにくい文章だなあ」というのが最初の印象。“文章が重い”とでも言えばいいか。
しかし、読んでいるうち、慣れてくる。
徐々に、心地よい温度に感じられてくる。
決して個性のある文章、文体ではないが、情景描写が徹底されている。いや、風景描写といったほうが相応しいかもしれない。絵を見せるような描写である。
この土地への作者の強い思いが、ここに表れていると思った。
私にとっては、魅力的な人物は出てこなかった。ある程度小説を読んでいる人なら、みたことのあるような登場人物たちである。
しかし、そんな人物同士が出逢ったときに生まれる物語は随一である。
人ではない、人と人の出逢の物語を書いている。
最後に。
松本の元妻は、特に登場させる必要はなかったんじゃないか。何か意図があったのだろうか。ちょっとわからなかった。
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