蓮見圭一のレビュー一覧

  • 誰の中にでもいる彼

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    安っぽいドラマだと思われるかもしれない。
    でも私が蓮見圭一の小説にハマるのは、そのどれもが「誰の中にでもいる彼」というタイトルが象徴するような、誰にでも何かしらあるであろうドラマにこそ価値を求めるからである。
    わかったようでわからない、それでもそれに振り回され、囚われる人生に各々がどう取り組んでいるか、取り込んできたか、小説を読みながらいろんな像が頭の中に浮かんでいる。

    収録されている短編の「テレーゼ」、「夜行虫」は怖かった。著者の「八月十五日の夜会」も併読しているせいか、戦争のことを考えることが多くなった。道端を歩いてすれ違う人の顔を見ながら、私はこの人達と同じ日本人として一緒に戦争に向か

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    2011年08月13日
  • 誰の中にでもいる彼

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    表題作と「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」、「アーノンクールのネクタイ」がよかった。
    表題作の、「彼」との会話が凄く好き。「会社の金だと思って、この馬鹿。」〜「ワインぐらい、選ばせてやりましょうよ」の流れがほんとうに秀逸だと思う。「彼」は曲者のようですごく純粋な、妙に味のあるキャラクターですてき、奥さんを口説く台詞なんて。
    でもなんだか全体的にはどことなく散漫で冗長な印象。破線をなぞっているような感覚で読み終えた一冊。

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    2009年11月01日
  • 八月十五日の夜会

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    主人公の秀二が、祖父の死をきっかけに出向いた沖縄で出くわす、太平洋戦争終結前後の沖縄のとある離島での出来事を吹き込んだテープが物語の大半を占める。
    戦争の悲惨さというステロタイプのことばでは表しきれない、凄惨さ、やりきれなさ、人間の業などが丹念に描かれる。
    こんな戦争の体験は、われわれにしっかり語り継がれているのだろうかと感じる。

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    2009年10月04日