蓮見圭一のレビュー一覧
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ネタバレ許されざる恋。
隔たる立場のカベを越えられず、それでも越えようとあがく2人。
時代と世間が胎動しようとしはじめた矢先の恋、あともう少し遅ければ成就した、あともう少し早ければ出会う事すらなかった。
戦後を区切る節目の1970年、その象徴たる大阪万博をバックに2人の恋は21世紀の俺たちにどんな物語を見せてくれるのか…
とまぁ、こんな感じの恋愛小説なんですけど、俺はその物語の本筋も去ることながら、主人公直美さんがなんともエエキャラで、そっちの動きが楽しかった。生活を崩した才女、もうちょっと脱線できたら、直美さんはオノ・ヨーコだったかも知れないのになぁ
恋の相手の臼井さんも、没落貴族(?)の両親も -
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夜光虫、テレーゼ、結構な人生、心の壁 愛の歌。この4作が良かった。良かったと感じた順番も、この通り。
蓮見さんの文体には、彼の哲学/美学が、そのまま表れているように思う。センテンスが短く、端的で、言葉の選択に無駄がない。まるで詩歌のような美しさを湛えている。短編だと、その美質がより冴える。
前述の作品は、題材と相俟って素晴らしかった。
これほど彼の作品には好感を持っているのだが、ただ一つ、ミソジニー的な視点が散見されるのが、本当に残念。
ある時代を描く際に、登場する人物や背景が、旧弊な意識を纏っていることは「作中の事実」で構わないが、作者の価値観/蔑視が「現実」として響いてしまうことは、いい作 -
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いつもミステリーばかりなので、たまには恋愛小説でも思って読んだ作品。
序盤は引き込まれるような入りだったが、途中から少しサスペンス要素が入り込み、刑事やら公安やら、ややきな臭い展開に移っていった。
そしてそれと同じくして、ところどころ首をかしげたくなるような登場人物たちの言動が目につくようになってきた。
例えば、よく知らない土地で気になった人物を見かけたシーンで、自分と知人の子供をほとんど素性のわからない男に預けて車で追跡するとか、「それはオカシイやろ」と言いたくなるような場面や会話が、少なくなかった。
最たる例は、エンディング。なぜああいう結末に至ったのか、さっぱりその心理が理解できないし、 -
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標題作を含む7編の短編集。
ーー人生には忘れがたい瞬間があるーー
「水曜の朝、午前三時」でも直美と臼井が出会うシーンで使われたこの言葉が、この短編集の作品「誰の中にでもいる彼」と「ハッピー・クリスマス、ヨーコ」でも使われている。歳月と共に恋は色あせ、危機を迎えた夫婦の夫が、妻に出会った運命の時を思い出して語るシーン。燃えるような恋とその顛末を語るにつれ、心境に変化が生まれる過程がなんともいい。
1話だけ趣向が異なる「夜光虫」は、戦争中、潜水艦の中で激しい爆雷の攻撃を受け、死に直面して考えたことを孫に伝える元海軍医官の話で、これも秀逸。このモチーフがのちの作品「八月十五日の夜会」に引き継がれて -
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久々に蓮見さんの小説を読んだ。 ベストセラー”水曜の朝~”以来の長編恋愛小説。 しばらく恋愛ものから遠ざかっていた分、期待して読みました。 はて、蓮見さんの文体ってこんなに、「まどろっこしい」感じだったけ? と思いながら読んでいたのですが、当人が元編集者だからか、それとも個人好みか、余計な抽象的描写は省かれていて、淡々と内容が進み、読むスピードが段々と早くなっていく、とどのつまり、夢中になった次第なのです。 大人の、しかもバツ1・子持ち同志の恋愛ですが
身も心もドップリ浸かりきった重々しいものでない為に、真実味がありましたね。 劇団員の伊都子の元男の素性が素性なだけに、主人公の男は
翻弄されま -
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微妙です。
心に引っかかりそうで引っかからない・・。
そんな感じの小説でした。
実は大分と前に読んでいたけれど・・・
もう1度、今の自分の現状で読んでみよう・・
と思い、、、。
以下、本文より引用。
「迷った時は急がずに立ち止まりなさい。慌てたって、いいことは一つもありはしないのです。物事を理性的に、順序立てて考えるのは悪いことではないし・・・・・・・・・(省略)
何にもまして重要なのは内心の訴えなのです。あなたは何をしたいのか。何になりたいのか。どういう人間として、どんな人生を送りたいのか。それは一時的な気の迷いなのか、それともやむにやまれぬ本能の訴えなのか。耳を澄まし -
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ノスタルジック。古き良き恋愛。現代の基準とは多少のズレはあるものの、潜在的な価値観によってどこか惹かれてしまうような魅力を持つ女性や男性が出てくる。特に臼井さんの独特な翳りのある雰囲気は、大人の男性を思わせ、身を委ねたいと思ってしまうと同時に、垣間見えるやわらかな表情に母性をくすらぐられてしまうという純粋な魔性である。こういう男性はなかなかえがけない。ましてや、男性作家がえがいているとは考えられない。しかし、語り手である僕にこそ、蓮見圭一自身が反映されている。秘めたる羨望にも似た恋心は、きっと誰もが持つ、少年時代の秘密だ。
ストーリー自体はおそらく母親世代なら懐かしんで読めるであろう万博が中