蓮見圭一のレビュー一覧
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ネタバレサイモン&ガーファンクルの歌(Wednesday Morning, 3 AM)をタイトルにした本作、久々に読む文芸作品だと思う。再読だけど。
物語に流れるノスタルジックと洋楽、大阪万博を覚えてる世代じゃないけれどなにか懐かしくなる。 死を前にした母が、昔の、いや今も胸を焦がしている恋愛について語る。
いや恋愛についてではなくて母は娘に「人生は宝探し。嫌でも歩き出さなければならないし、それなら最初から宝探しと割り切ったほうが楽しいに決まっている」という言葉を残したかったんだろう。
どんな時代もいろいろな障害はあるし、そしてそれだから人生だ。 -
Posted by ブクログ
友人にお勧めされたので読んでみました。
著者の作品は初めて読みましたが、文体かなり好みです。
1970年の大阪万博を舞台とした恋愛小説ですが、単純な在日朝鮮人との悲恋話として語ることのできない一冊です。
50年前と現代では差別に対する考え方にギャップがあるとは思いますが、そのあたりは当時の世相や風俗がとても丁寧に表現されているので、うまく受け入れることが出来ました。
ましてやA級戦犯となった祖父を持つ家庭に育った彼女では他の選択肢はないだろうなと、だからこそ同情や否定的な気持ちを持つことなく、主人公と一緒になって哀しみや悔恨や苦しさを共有してしまいました。。
そのうえで、心の声に素直に従う -
Posted by ブクログ
主人公がとても知的明瞭で、冒険心が強い。何かしたいけど、うまくやり切れない。大阪万博という華やかだけれど、まだまだ不安定な日本だった時代に、葛藤を抱えながらも、気高く、力強く生きていく姿がとってもカッコいいです。
ツンとしていて、音楽や文学、哲学等にも精通していて、おしゃれ。頑固だけれど、自分の考えをしっかりもっていて、行動力もある。無敵の彼女に見えますが、大きな壁にたちはだっかった時、すごく人間らしい結末を迎え、共感しました。
とてもメッセージ性の強い文が、数多く出てきます。物語としても楽しめますが、生きずらいな、と悩んだときに勇気づけてくれるような小説かもしれません。 -
Posted by ブクログ
大人でなければ読めない小説である。
親が子を想い、恋人に焦がれ、自らの在り方について思い悩む。人生において、一通りの経験を積んだ者にしかわからない哀しさが描かれている。
早紀と隆。この二人の子供が持つ真っ直ぐな正しさが主人公だけではなく、読者の心も苦しくする。そう、「正しいことは人を傷つけやすい」のだ。
大人はいろいろな正しさを計ろうとし、シンプルにAからBへ移動できなくなってしまう。そしてわからなくなる。いつの頃からか自分もそうなっていることに気がついた。
『水曜の朝、午前三時』と同じように、僕は小説を読みながら涙を流した。感動とは趣の異なるやりどころのない悲しみが溢れだす。
本当 -
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45歳の若さで逝った、知的で魅力的な翻訳家で詩人の直美。彼女が娘のために遺したテープには、大阪万博で働いていた23歳の直美と、将来有望なエリート学生・臼井との切ない恋とその後が語られていた。恋の痛みと人生の重みを描く、大人のラブストーリー。
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国籍や肩書きへの固執、亭主関白的な父親像、などなど昭和感漂っていた。
しかし、皆が多くを語らないあたりが、人間的深みがでるというか、趣があり、想像力が掻き立てられた。
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今どきは先がよみやすく、わかりやすいストーリーがドラマ化、小説化されることが多いので、偶にはこういう作品もいいですね。 -
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ー生と死、静寂と激情
友人から勧められた本です。
淡々とした語り口調の中に感情の激しさ、秘められた想い、出会いと繋がりがある小説で、思ったりよりもするする読めました。
45歳の若さで脳腫瘍で亡くなった直美が、娘のために遺したテープ。その中には23歳の直美が大阪万博のホステスとなり、将来外交官を期待される臼井さんと出会い、想い溢れる燃えるような日々を過ごし、万博が終わっていく……そんな思い出たちが吹き込められていた。
ほとんど直美の語りで進む話です。大阪万博という特殊な環境が作り出す唯一無二な出会いを、直美が淡々と語ってきているように感じます。でも相手に恋い焦がれる気持ちの激しさや、決めた -
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ネタバレ編集者の松永は、母の手記に応募してきた毛利伊都子と出会い恋に落ちた。
互いに片親ということもあり、松永と娘の早紀と伊都子と息子の隆はなんの問題もなく交流を深めていた。
その矢先、松永は隆の父親である三田という男の行方を追っているという警察に伊都子の行動について捜査協力を迫られる。
好きな女である伊都子にたいする思いと、彼女に直接聞くこともできずに三田の存在を周囲に触れ回る自分との葛藤。
前半がどういう話になるのか展開が読めず、ずいぶんとだらだら読んでしまった
けれど
警察が出てきたあたりから午前中だけで読み終えた。
三田は最終的に自分で松永の前に姿をあらわして警察に逮捕されるわけなん -
Posted by ブクログ
70年代を舞台にした恋愛小説が好きな私にはドンピシャな小説でした。
日本は高度成長で一見華やかな時代だけど世界は冷戦の最中で、そういう時代を察するとこの主人公の感じる「怖さ=差別」というのが理解できるような気がしました。
(海外で長く過ごした才女である鳴海さんを登場させて「私は差別主義じゃないわ」って言わせてる部分も時代背景を補足しているようで巧いな〜)
最後の方で主人公が亡くなった後に、かつての恋人と主人公に憧れていた義理の息子が飲みながら主人公について語るシーンがあって、こんな事をされたら女冥利に尽きるなあ、と思いました。(夫は完全に蚊帳の外…)
素敵な言葉がそこかしこに散らばれてい