トゥルゲーネフのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とんでもない話です。
10代半ばかな?今で言うと中学生かな?みたいな男の子が、20代前半くらいの女性に惚れちゃうわけです。
それでまあ、別段エッチなことがあるわけではなくて、精神的に振り回されたりもてあそばれたりするんですが。
実はその娘さんは、男の子のお父さんと不倫の関係でした。どっとはらい。
という話なんです。
それが、男の子目線から、実に繊細と言えば繊細に。
理屈抜きで、とにかくキレイなお姉さんにのぼせちゃってる。
もう、身もだえするほどに恥ずかしくて、自殺したいくらいみっともない。
そんな10代のアホな恋ごころが、恥ずかしくて恥ずかしくてもう、たまりません。
1860年に発表された小説です。
つまりこれ、江戸時代(笑)。すごいですねえ。
日本では、坂本竜馬とか新選組がうんぬんしてた時代ですよ。
そんな頃に書かれた小説が、今読んでも面白い。
19世紀の西欧の世の中が、貴族や王様という時代から、資本主義で経済でという時代へと変わっていく。
商品としての小説が生まれる。
この頃に書かれた小説は、21世紀の今も、読めるものだなあ、と。改めて。
語り口がやや時代めいていたり、全体が中年になった主人公の回想ということになっていたり、
そういう枠組みに関しては、無論の事19世紀ぽいなあとは思います。
それに、当然ながら物語の中の固有名詞とか習慣とかモラルとかで、「?」というところも、たまにあります。
光文社の古典新訳シリーズは、そういうつまづきの小石をなるたけ排除してくれている気がして、読み易い(と、僕は思います)。
こういう「思春期初恋、苦く終わりぬ」的な小説は山ほどあると思いますが、その原点みたいな小説。
オリジンに特有の、堂々たるその恥ずかしさ。素材剥き出し、ゴロンって、転がした感じの手ざわり。
止まらず読めちゃう面白さでした。 -
Posted by ブクログ
少年ウラジーミルは隣に引越してきた年上の美しい女性ジナイーダに恋心を抱く。しかし彼女は自身に好意を寄せる何人もの男たちを家に集めては、いいようにあしらい楽しんでいた。そんな彼女の型破りな言動に驚きつつもウラジーミルの想いは募る一方。しかし、ある日を境に彼女の様子が一変する。ツルゲーネフの半自伝的恋愛小説。
恋は盲目というように、好きという気持ちが湧いてしまうと許されない恋だとしても止まらない。辛くても苦しくても、会えるその一瞬に幸せを感じる。そんな切ない恋を経験する者と、目の当たりにする者。好きになった相手だからこそ、微妙な変化には良くも悪くも敏感に気付いてしまう苦さがよく描かれている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ近代文学の分類になるんだろうけど、子どもと大人の間を揺れ動く主人公の瑞々しい初恋の心理描写は今の時代でも十分読めるものだった。あと情景描写もかなり良い。
タイトルの通りテーマは「初恋」。冒頭で三人の男達が各々の初恋について語るという話になり、主人公が回想(ノートに回想を書く)形式で、初恋の人ジナイーダとの思い出を語ることになる、というもの。
ロマンスものはあんまり好きじゃないけど、主人公がまだ半分子どもで、その恋愛も初々しくて甘酸っぱくてでも苦しくて抗いがたくて…で良かった。それにしても主人公と、主人公の父と、初恋の人の三角関係というのはすごい……というか字面だけみると完全にインモラルになりそうなのにこれだけ爽やかに書き上げたツェルゲーネフがすごい。時代的に当時はこれぐらい普通だったんだろうか。
解説で「初恋」が書かれた1860年代に触れられているけれど、私でも知っている作品名が並んでいて驚いた。一気にロシア文学の黄金期、というイメージになってしまった。
●あらすじ
ジナイーダ。それが彼女の名前。
そして少年は人生の苦しみを知った
ロシアの帝政が、崩壊の予兆にふるえる時代に誕生した、トゥルゲーネフの自伝的中編。主人公の告白をやわらかな語り口調に変えた、みずみずしい感性があふれる新訳。
16歳の少年ウラジーミルは、年上の公爵令嬢ジナイーダに、一目で魅せられる。初めての恋にとまどいながらも、思いは燃え上がる。しかしある日、彼女が恋に落ちたことを知る。だが 、いったい誰に? 初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる。作者自身がもっとも愛した傑作。
(光文社HPより引用) -
Posted by ブクログ
ネタバレ衝撃的な小説だった。
おじさん3人で初恋について語り合う、ノスタルジーを感じる設定。
主役であるウラジーミルの初恋相手ジナイーダは、美しく気品に溢れ、天真爛漫な女性。モテモテのジナイーダは、男達を魅力し、翻弄する。小悪魔、いや、悪魔的である。
ジナイーダに陶酔し、どんな要求でも喜んで叶える男達と、彼らを手のひらで転がし楽しんでいるジナイーダ。その奇妙な関係は、まるで見てはいけないものを見ているよう。
さらに奇妙なのは、ウラジーミルの父親である。
ジナイーダと密かに交際するのだ。奥さんは健在である。その上、ウラジーミルがジナイーダの虜なのは明白なのにも関わらず。
ジナイーダと父親は一目見た時から惹かれ合っていた。
ジナイーダを取り囲む男達が、1人、また1人と交際関係に気づく中、ウラジーミルただ1人が何も見えていない。
ジナイーダは誰かに恋をしているようだ、一体誰に恋をしているんだろう、と悩むばかり。
ウラジーミルがいつ父親の裏切りに気付くのか、ハラハラしながら読み進めた。こんな状況に追いやられる彼が可哀想で仕方がない。
小説の中で最も奇妙なシーンは、終盤に訪れる。
父親がジナイーダの白い腕を鞭で打ち、赤く晴れた腕にジナイーダがそっとキスをする。
それを見たウラジーミルは、「これが本当の恋なんだ!本当に愛しているなら、ぶたれても受け入れられるんだ!」と大興奮。この世の心理を発見したかのようだ。
わたしは思わず、え???いやいやいや、ちがうちがう。ただのDVやん。ウラジーミルよ、これ本当の愛ちゃうで。と本に向かって話しかけた。
しかしウラジーミルの勢いは止まらず、物語も濁流のように展開する。父親がジナイーダに裏切られショックで死亡。ジナイーダ、結婚相手との子どもを生み死亡。ウラジーミル、2人が安らかな気持ちでいられることを祈る。爽やかな雰囲気で物語が完結。
これが作者トゥルゲーネフの実際の経験だと言うのだから、ますます衝撃的。
事実は小説より奇なり。これはイギリスの詩人バイロンの名言だ。本小説「初恋」の中にバイロンの名が一度出てくる。トゥルゲーネフは、バイロンの名言を誰よりも噛みしめていたに違いない。
最後に、お気に入りの一文を紹介する。
「詩人や作家はたいていそうですが、マイダーノフもかなり冷たい人間でした。」
ジナイーダの取り巻きの1人、詩人マイダーノフの紹介文である。作家であるトゥルゲーネフが、詩人や作家は冷たい人間とこき下ろす言葉。眉間に深いシワを刻んだトゥルゲーネフによる、皮肉たっぷりのこの一文に、ユーモアと人間らしさを感じずにはいられない。