柏木惠子のレビュー一覧
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ネタバレ[ 内容 ]
90年代以降、少子化は社会的問題としてさまざまな議論を呼んできた。
しかしそこには、少子化が出産・結婚をめぐる女性の心理の問題であるという認識が欠けている。
日本では「親子は一心同体」とその絆を強調されるが、そうした考え方もいまや普遍的とは言えず、変化してきている。
現在「子どもをもつ」とはどういう意味があると考えられているのか。
少子化を心の問題として捉える人口心理学を提唱、その視点から考える。
[ 目次 ]
1章 「子どもの価値」展望―子どもの価値の古今東西
2章 人類初の人口革命―子どもの命と親の愛情の変質
3章 「なぜ子どもを産むか」―「つくる」時代の子どもの価値
4章 -
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ネタバレいやー、とても興味深い。
特に男性は子どもって結婚したらそりゃ産むもんだろ、という感じの人多いと思うけど、子ども産むか産まないかというのは女性の心の問題に密接に関わってるっていう、言われてみれば当たり前のことを恥ずかしながら認識した。
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●いまの日本では子どもの価値というのは当たり前に認められている。親はお金をかけて子どもに良い教育を受けさせようとする。子どもが生まれたら夫婦2人の時間より子どもが優先されるようになる。
でもこんな価値観は実は現代の日本だけ。歴史的にみても子供に投資するようになったのは最近になってから。現代の欧米でも、子どもは親とは違う人格を持った個人と -
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おとなも発達する、というか能力に偏りがでてくるという主張。日本でのおとなの発達課題をアイデンティティやジェンダーというキーワードから紐解く。夫は幸せ妻は不満という典型的な家庭が熟年離婚となるには、コミュニケーションの方法やコミュニティの広げ方に問題があった。今後は「働く母」とか「イクメン」とか言ってないで男女子供ともに自分のケア、そして他人のケアが出来るようになることが大事とのこと。p169「ああはなりたくない」は、動物のようにモデルをそのまま模倣せず、モデルから逆の「なりたい」自分を考える、人間ならではのこと。能動的に学ぶ姿勢と力です。という言葉が良かった。図や表があまりにきれいにまとまって
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これを手にしたお父さんは、真摯に自分と向き合っている人であろう。権威的にしがみつくのではなく、自分とパートナーと子供にとってのあるべき姿を求めているような。
小学生と中学生の子どもを持つ、日本の父親である私にとって、本書は意識変革を自身にも社会にもともに迫られる良質な啓蒙書であった。
男性の過労死、女性の育児不安にも触れた本書の意義はこれから発揮されるだろうが、もっと早く出会っておきたかった気もする。
次の課題は、雇用の安定か。
・子どもの泣き声を否定的に受け止めるのは、子どもとの日常的な関わりがない人。
・父親の家事時間が少ない場合、出生率が低くなる。
・母に重きをおく愛着理論の妥当 -
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ネタバレおとなの発達障害というのが話題になっていて、ふと手にとってみた本。学力よりも実務能力が「賢さ」の指標。
大人の未発達の原因を、基本的に家族における性役割に求めている。すなわちジェンダー論からの指摘のため、家事分担や育児に関わらない夫は妻の重荷になる「大きいだけの子ども」「退職後のネットワークがないため孤独」という、いささか既婚男性に厳しい論評が繰り返されている。女性も女性で未婚であるために幼稚な人や、既婚でも精神的に大人じゃない人も多いにいるわけだが、それについてはほとんど論じられない。
発達心理学からというよりも、ジェンダー、フェミニズムから考えた本。
超長命社会化で、男も女も、仕事一 -
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もっとも印象に残った一節を引用します。
「最近、日本の社会を語る時、「少子・高齢化」がまるで枕言葉のように使われています。特に少子化は有史以来初の大事件、大問題であるかのように。それを耳にするたびに、私は子どもが少なくなったこと以上にもっと大問題があるのにーーと思わずにはいられません。眼をむけるべきは子どもの数の減少ではなく、子どもの価値に生じている変化、親にとっての子どもの意味・価値の変化。それこそ有史以来の一大変化です。」
という指摘が痛切です。数の変化は人為的に社会政策で対応策を取り得ますが、意味・価値の変化を再逆転させるのは至難の技です。 -
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【読書その59】父親の意味を家族心理学及び発達心理学の研究からわかりやすく書いた本。岩波ブックレットでわずか70ページの本だが、得るものは多い。
本書では「子育ては母親中心」や「父親の出番は子供が青年期になったから」といった考え方を、他の動物との違いを明らかにすることにより、人間の子供の誕生や育ちにおける特徴から父親が育児に関わる必要性を論じている。そして、父親が育児に関わることで、子供の成長、妻の心理、さらに自分自身の成長・発達に多大な良い影響を及ぼすことを説明している。この本を読んで、尊敬する政治学者である丸山真男の「日本の思想」の有名な論文「であることとすること」を思い出した。「父親であ -
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働く女性として賛同することが多かった。子どもは生みたいけど、自分の仕事に支障が出るのは困る。自分のキャリアアップの道が閉ざされるのは悲しい。でも仕事だけの人生は嫌。子どもがいる充実した家庭も欲しい。
避妊や不妊治療などの普及で、子どもは両親の意志でつくられる存在になり、親の価値を押しつけられる存在になった。そんな時代の子どもに親はどういう価値を見いだすのか。
時代や国家間による子どもの価値観の違いや、話は日本の少子化の原因から、日本の母親・父親の抱える問題、子育て論にも波及し、興味深く読めた。
共働きで子育てをすることに筆者はとても前向きで好意的な理論を持っていて、その理論に勇気づけら -
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「母親というアイデンティティ」について一時期盛り上がっていた。たとえば
・金原ひとみ「母の仮面が苦しいあなたへ 『自分』は今もそこにいる」(2023年11月)、
・イスラエルの社会学者オルナ・ドーナト「母親になって後悔してる」(邦題、新潮社刊、2022年)
でも別に最近の発見というわけではなくて、以前からあった言説が、より女性中心の視点で、より繊細に語られるようになったという感じかな?
こちらの2001年の本は、以前は「生まれてくる」ものだった子どもが、医療や技術の発展により、計画的に「つくれる」ようになったこと、女性が教育を受けたり働いたりするようになり、母親以外の役割を持つようになったこと