江口泰子のレビュー一覧
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匿名
購入済み資本主義を純粋に経済のシステムとして捉えるのではなく、社会全体に権力を行使するシステムとして、拡張して捉えなおすことの必要性を本書は何度も説いている。その例として、資本主義社会システムに埋め込められた人種差別、女性差別(女性にケア労働を押し付ける)、自然破壊、国家権力の溶解を挙げる。これらの領域の問題はしばしば資本主義とは無関係なものとして認知されているが、資本主義社会システムがその根本原因となっている、と本書は述べる。資本主義はそれらに依存することで、問題を引き起こしつつも、それらとの関係を否認する。
著者は社会主義を鍛え直して、現在の資本主義へのオルタナティブとして提示せんとするが、著者も -
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資本主義は欲望を作り、富を独占する社会
これは資本主義の後の世界を求めた思想家、経済学者、IT技術者によるSFチックな世界を妄想し、現実の史上分析からなる創造力豊かな世界を描いた小説だ。「資本主義」とは「私たちの中に欲望を作り出す世界」だから富む者はより富む社会システムであり、人々の間には様々な格差が生じる、と言う。その資本主義が滅びた後、GAFAのような独占巨大資本が失くなり銀行は中央銀行だけとなる。富の分配を公平にする世界が始まり、企業が納税者となり国民は納税の義務はなくなる。よって富の根源である投資・株市場も一変し社員が一人1株、議決権1票を持ち企業、個人を評価することで給与・ボーナスは -
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Posted by ブクログ
ネタバレ読むまではぼんやりとサイバー戦争の脅威を理解していたが、本書を読むことで、取材ベースでの現実味のあるストーリーと、人に焦点を当てたテーマに触れ、その脅威を身近に感じることができた。
大なり小なりITないしインターネットに関与する現代人ならば、一度は目を通しておくべき一冊。
サイバー戦争は以前は技術力が高く攻撃手段を独占していた米国が優位であったのかもしれない。
しかし、サイバー攻撃手法は個人のスキルとインターネット環境があれば、誰もがチャレンジでき、そして発見された攻撃手法は市場の中で金銭で取引が可能だ。
つまり、他の通常兵器やNBC兵器などとは異なり、世界の誰もが関与することができ、大国以 -
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サイバー空間での戦争が現実世界に影響を与える頻度が多くなり、近い将来にも大惨事が起こる可能性への警告本だということが、読み進めるにつれ腹落ち。
便利なネット社会は性善説で造られているが、ダークに落ちた人間にとっては、やりたい放題になる。サイバー空間のバグを米国、ロシア、中国、北朝鮮、その他多くの国が兵器として仕えてしまう根底には、性善説でつくられたネットやアプリを余りにも多くの公共物に使ってしまったことがある。マイクロソフトのバグを使ったエターナルブルーが、米国諜報機関専用のつもりが世界に広がり、米国のインフラを攻撃するのに使われたという簡単な事実から、バグを世間に内緒で兵器として使うことはリ -
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『「あんた。人が痛い目に遭ってるって時に、SF世界の夢物語は贅沢品だよ」聴衆のひとりが叫んだ。「資本主義とSFには共通点がひとつあります」コスタが冷静に答えた。「どちらも架空の通貨を使って、未来の資産を取引することです。たとえそれらのツールがいまだSF世界のものだとしても』―『第一章 現代性に敗北する/コスタ』
今年一番の刺激を受ける。オルタナ右翼という言葉を最近聞くけれど、それに対抗するのが詰まるところ新オルタナティブ・レフト(差し詰め新・新左翼という感じ?)というか民主社会主義ということであるとすれば、識者が語るその世界は専制的な政治制度に基づく共産主義よりは緩やかな社会主義に基づく統制 -
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[真に問われたものは]欧州だけでなく世界に衝撃を与えた2016年6月のEU離脱を問う英国での国民投票。その内幕を首相側近の立場から目にした人物が記す回顧録です。著者は,キャメロン政権の首相付政務広報官を務めたクレイグ・オリヴァー。訳者は,渡英を経て翻訳業に従事するようになった江口泰子。原題は,『Unleashing Demons: The Inside Story of Brexit』。
目まぐるしく動いた国民投票の実情を知る上ではもちろんのこと,英国政府とメディアとの関係を理解するためには避けて通ることのできない作品。国民投票をめぐる残留派と離脱派のマスメディアにおける「空中戦」が生々しく -
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Posted by ブクログ
「努力は必ず報われる!」(但し、良い社会的ネットワークに繋がり社会的に評価される、自分がリーダとして活躍している組織が成果を成すなどの諸条件が重なった場合に限る)
成功が運ゲー要素もあるが、自分の才能を正しく発揮できる場を探す、社会的ネットワークに属するよう社交場に顔をだす、生産性を絶やさず年齢を言い訳にしないなど成功を引き込む心持ちや指南を科学的な知見から提示してくれる。
成功が成功を呼び込む「優先的選択」やら、ライバルを萎縮させてパフォーマンスを低下させる「タイガー・ウッズ効果」などおもろい小話にもなりそうなネタがあり、新しい発見も多数。勢いだけの成功本とは一線を画す良書でございます。