山岸俊男のレビュー一覧
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誰のオススメ本だか定かではないのだが、素晴らしい気付きをいただきました。(読んでいる最中に、TBSラジオで尊敬する宮台真司氏もこの著者、山岸俊男を尊敬しているとかたっていました)
第一章
・ 「安心」とは相手が自分を搾取する意図がないという期待の中で、自己利益の評価に根ざした部分。
「信頼」とは相手が自分を搾取する意図がないという期待の中で、相手の人格や自分に対して抱いている感情についての評価にもとづく部分(*社会的不確実性が
存在している場合に意味をもつ)という言葉の定義と、
これまでの日本が安心してこれたのは、社会的不確実性が存在しているにもかかわらず、集団や関係の安定性がその内部での勝 -
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利己的行動が集団全体に不利益をもたらす問題について、人間関係から国家レベルまで考察されている。
進化によって獲得した行動ゆえ、誰しも少なくとも無意識には理解していることだろうが、実験結果などによって構築された理論からは大いに学ぶところがあった。自分のやっていることが絶対的に正しいと考える人には関わりたくないと思う理由が、よく理解できた。最終章の「質量限界グラフ」が見事だが、モデルにすぎないのか、実験データなどの裏付けがあるのかがわからない。累積グラフでS字カーブを描くためには、分布が山なりになることが必要なのだが。
この本になぜ今まで気づかなかったのかと思うほど。
・協力的な人と非協力的 -
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安全社会とは、監視統制を基本として、内と外を明確に区別し、基本内側に閉じた社会。悪いことをすると仲間から外されるので、誰も悪いことや抜け駆けをしないので安心して共同仕事ができる。
信頼社会は、自らの席んでリスクを覚悟で他社と関係を積極的に築く人が集まった社会。リスクもあるがメリットも大きいと考え、まず信頼することから始める社会。フェアや信頼、評判等の比重が高い。
農耕時代から、高度成長期までの殆どは安全社会だったが、価値観が多様化しまた監視統制の目が利かなくなった現代では、信頼社会への移行が急務だが、いじめのあるクラスとないクラスで傍観者の割合や、安全社会と同じ根の「武士道」などを用いて、正義 -
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ネタバレ挑発的なタイトルに思わず購入を躊躇いましたが、流石は山岸先生。文章は解り易く、そして現状分析に留まらずに先生独自の解決方法まで記載していて、文句なしに秀逸の作品です。
これからの時代には社会心理学がその地位を確かなものにし、そこから見える世界によってどう行動するか。そこが問われているような気がします…(少なくとも読後感は)。
『日本人は集団主義』『欧米人は個人主義』のステレオタイプが誰にでもあると思われますが、著者はそれを科学的手法を用いて否定。欧米人より日本人の方が個人主義的である。しかし、『みんなに合わせて行動する方がトクをする』もっと言えば『集団に合わせなければならない』外部環境にあると -
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学術的に「信頼」という用語を使うときの必須文献だろう。発刊から12年が過ぎても、その価値は色あせていない。
精緻に、その定義を分類し、とりわけ、「安心」と「信頼」が混同されて用いられていることへの論証は見事。
また、学術的な「実験の意味」(P144~)に触れたところも、ちょうど読み進めていくうちに、モデル化、単純化して人を試すことの限界を感じた直後に、説明されており、その切れ味は抜群である。いわく「実験が目指している一般化は、結果そのものの一般化ではなく理論の一般化である」。
全般に謙虚であると同時に、だからこそ裏打ちされた確信も感じられ、学問的な良心すら感じた著書であった。
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どうするかね。とにかくシンガポールあたりで仕事できるようにしておくしかないな。
p.108「信頼する心」がないと都会生活は送れない
山深い農村に住む人が都会に出て仕事をするようになったら、その人は都会の生活にどのような感想を抱くと思いますか?きっと、田舎からいきなり都会に出てきた人にとっては、都会の生活は不安で心配事だらけに違いありません。なぜなら、それまで「安心」を与えてくれた、村の暮らしの仕組みは都会には存在しないからです。いろんな人がたえず出入りしている都会のような社会には、お互いを監視しあい、何か悪事や非協力的なことをしたときに
、かならず制裁を加えるようなシステムはありません。
身 -
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第一のパラドックス:
信頼が最も必要とされるのは、「常識的」には信頼がもっとも生まれにくい
社会的不確実性の大きな状況においてであり、また「常識的」には信頼が
最も育成されやすい安定した関係では信頼そのものが必要とされない。
第二のパラドックス:
社会関係や人間関係がより安定して永続的であり、それらの関係が相互信頼によって
成り立っている程度がより強いように思われる日本社会での方が、アメリカ社会でよりも、
他社一般を信頼する傾向が低い。
第三のパラドックス;
他者一般を信頼する傾向が強い人間は、通常考えられているように「騙されやすいお人好し」
ではなく、むしろ逆に、他人が信頼できるかどうか -
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ネタバレ他人を信頼することが本人にとって有利な結果を生み出す社会的環境と、他人を信頼しないことが有利な結果を生み出す環境が存在する。そしてその環境は我々自身が作り出している。
アメリカに代表される西欧社会における「信頼」崩壊に対する危機意識の高まりと一般的信頼の低下により。1990年代に入ってから、「信頼」に対する関心が急激に高まってきた。
お役所仕事は非効率の典型とされるが、その原因は無数の煩雑な規則にあり、それらは役人に対する国民の不信から生まれている。逆に、人体資本につながる関係資本が充実している社会では、煩雑な規則が生み出す非効率さは存在しない。
日本型システムに対する不信の拡大は、経済 -
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ネタバレ(p.17)社会的ジレンマの定義
• こうすれば良いと「わかっている」協力行動をとると、その行動をとった本人個人にとっては好ましくない結果が生まれてしまうような状態
• 一人一人の人間にとっては、協力行動をとるよりも非協力行動をとる方が、個人的には有利な結果を得ることができる
(p.37)小さな伝統的な共同体では、社会的ジレンマはある程度解消されていた
• 小規模な集落では、住民がお互いに役割を分担し、協力関係を築いている
• 一人だけ非協力的行動をとった場合、いざという時に協力を得られず生きていけない
• 「とりあえず協力しておいた方が得」という環境で生活している
→現代社会の常識で考え