猿谷要のレビュー一覧
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「敗北を抱きしめて」のダワーが、日米戦争中の日米双方の人種主義を分析した本。
「敗北を抱きしめて」はとても面白い本で、戦後の日本復興における日本とアメリカの一種の共同作業のプロセスをリーダーたちの言動だけでなく、庶民の捉え方も含め、言説やシンボルなどの文化的な読み解きを通じいて、とてもエキサイティングであった。
この本が書かれたのは、この「敗北を抱きしめて」より早く、扱われている時代も戦前、戦時中というわけで、「敗北を抱きしめて」の前編ということもできる。
内容としては、いかに戦時中に日米双方が、人種的な偏見、ステレオタイプ化によって、相手を非人間的な存在として、語り、シンボル化して、戦争において、相手の「人権」といったことを考える必要のないものにしていたかということを漫画やポスターなどなどの分析を通じて、明らかにしていく。
戦後の日米の共同関係については、「敗北を抱きしめて」に詳しいが、それにしても、この間まで、鬼畜英米といっていた日本国民がどうして米国の支配をすんなりと受け入れたか、またアメリカが日本をどうして日本を人間として扱うようになったかは、不思議。
そこまで、相手を非人間化しておいて、戦争を終わると、あっさりその比喩は和らげられ、あらたに敵として立ち上がってきたソ連や中国の共産主義に対して、同じような非人間化の比喩が用いられるようになる、その変わり身の速さがまた恐ろしい。
で、その説明もこの本では与えられていて、イメージや言説の連続性はある意味では継続しつつも、意味が微妙に変化しているから、ということ。この辺の説明は、かなり説得力がある。具体的にどういうことかは、この本を読んでほしい。
この本がかかれたのは、1980年代。当時は、日本の経済的な発展がピークで、日米貿易摩擦が問題になった時期。そうなると、一旦、収まっていた比喩がまたでてくる。「経済戦争」「エコノミック・アニマル」などなど。そして、「パールハーバーを思い出せ」的なことをまた言われ始める。
つまり、いつでも利用可能なものとして、人種的な偏見と比喩は待ち構えているということ。そうした言説は、相手が変わっても、そのまま違う相手に対して使われることもあるし、国と国との歴史、固定観念との関係で、ユニークなものもある。
そして、そうした比喩や言説は、日米関係に限らず、いつでも出動をひかえて、スタンバイしているのかもしれない。 -
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著者ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』は、当時の文献研究を通して、敗戦直後の日本の埋もれていた事実を多様な視点から浮かび上がらせた名著だった。本書は同じ著者が、太平洋戦争時の日米双方の敵意あるプロパガンダや世論を文献から掘り起こし、戦争における人種問題の影響を批判的に指摘したものである。日米双方に強い排他主義と自民族優越主義が見られるが、同時に日本における言説とアメリカにおける言説の傾向は大きく違っていることも対比に基づいて指摘されていて興味深い。
人種間の憎悪をあおるような差別意識は過去のものでは決してなく、今も根強く残り、そのため簡単に火がついて蘇ることもある。年配の親戚が、韓国やロシアのことを悪く言うことも普通にいまだにある。また、「黒人」のステレオタイプを自分の親の世代は持っているだろう。「バカチョンカメラ」という言葉が普通に何のためらいもなく使われていたことは驚きだが、過去には他民族に対する優越意識が当たり前のように多くの人の底にあったことを示している。また自身の経験でも、日本以外でも隣国間の根強い差別はあり、例えば一部のギリシア人はいまだにトルコ人を敵と考えていた。アメリカ人はテロリストというカテゴリーを使うことで逃げているようだが、アラブ人に対する差別要素をはらんでいることは簡単には否定できないだろう。
かつては、人種差別は非論理的な人が持つ偏見ではなく、科学的な根拠を持つものとして語られていた。本書は、そういった事例に枚挙にいとまがないことを示す。そして、戦争という状況の下で誰もが、その説明を受け入れて利用することにためらいを見せなかった。時代によっては自分がこの差別や憎悪を積極的にサポートする側に回ることがあったかもしれない、ということを真摯に考えることは誠実な想像力の働きだと言えるだろう。こんな差別や憎悪を産み出してしまうなんて、やはり戦争はいけないことだ、と無邪気に結論を出してしまうべきではない。
本書では、日本が「劣等民族」=「子供」であるという米国が与えたイメージが、戦後においてアメリカ自身を「保護者」であり、日本人自身が自らを「生徒」とお互いにみなすことで、スムーズな米国式民主主義導入が実現されたと分析している。終戦を境として真逆の態度を日本人が取ることができたという不思議の理由の一端をよく示している。
日本の戦争犯罪の追究にも容赦はないが、本書は主にはアメリカが抱える人種問題について扱ったものだと言えるだろう。アメリカでどれほど読まれたのか不明だが。9.11の事態を躊躇いなく真珠湾に結び付けて公に語られたことからも今日的意義を持つものだと思う。 -
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太平洋戦争における戦中戦後のアメリカ人の日本人観や、日本人のアメリカ人観の変遷が細かに分析された非常に読みごたえのある研究書です。
アメリカ人の日本人観はさもありなんということが多いのですが、注目すべきは日本人のアメリカ人観の著述です。
日本人は戦中にあれだけアメリカを憎んでいたのに、戦後はその態度をほぼ正反対に変えます。これは国家戦略として国家が選択したという問題ではなく、広く庶民にそういう感情が生まれました。
著者は日本人がアメリカ人を『鬼』と見なしていたことが、実は戦後のアメリカ人への対応をガラッと変える事ができた重要な要素として捉えています。それを証明する過程も丁寧で、日本人の民俗観に対する著述も的を射ています。
日本人では気づかない事を教えてもらった気がします。 -
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第2次世界大戦における日米戦争中のプロパガンダの比較研究書と言えるかと思います。
何度か読む機会があったのだけれども、今回全文を初めて通して読みました。常に自分の側に「正義」があると謳うアメリカ合衆国。それを信じる国民にとっては、この本は読むのさえ拒絶するのではないだろうかと想像させる内容です。当時、どれだけあからさまにアメリカで、日本人(また日系アメリカ人!)を蔑視していたかを知ることが出来ます。また、時を同じして日本では、「鬼畜米英」をどう謳っていたかも改めて知ることができます。
どう国民が信じていたかを知ることは出来ませんが、本で書かれているようなプロパガンダが問題なく世間では受けいれられていたという事実は、戦争中の社会状況を想像するのに非常に役立つのではないでしょうか。
重要な第2次世界大戦の研究書と言えます。 -
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物語 アメリカの歴史
超大国の行方
著:猿谷 要
出版社:中央公論新社
中公新書 1042
欺瞞、アメリカの歴史は、膨張の歴史、支配の歴史である
所詮、自由と平和というのは、白人のためのそれであって、我々有色人種については、絵にかいた絵空事であることが歴史を見ればわかる。
世界の警察官である、アメリカの行動はある意味で分かりやすいともいえる。
本書は、イギリス人がバージニアに入植した 1607年から、ソビエト連邦が崩壊した 1991年までの期間を7つに分けて解説している
東海岸に上陸した白人は、当初、北米大陸を西へと侵略していくが、フロンティアがなくなると、大西洋、太平洋へと乗り出していく
それは、インディアン、黒人らの虐殺の歴史でもある
東京大空襲や原爆投下なども有色人種への攻撃か、朝鮮戦争やベトナム戦争でもそれは繰り返されたが、ベトナム戦争後では、オイルショックを含めて
アメリカのプレゼンスは低下する。
第1期 植民の開始からアメリカ合衆国の成立まで
・1607 イギリス人バージニア入植
・1620 メイフラワー号、プリマス植民、ピルグリムファーザーズ
・1775 独立戦争始まる
・1789 ワシントン初代大統領に就任
第2期 創成期から、南北戦争終結まで 東海岸から、西海岸へ向けて、北米大陸の制覇の時期
・1830 インディアンの強制移住
・1845 テキサス共和国合併
・1846 メキシコ戦争 西に向かって膨張
・1861~1865 南北戦争
第3期 南北戦争から、スペイン宣戦まで
・1869 大陸横断鉄道
・1890 インディアン虐殺、フロンティアの消滅
・1898 外洋へ、栄光ある孤立から、世界の警察官へ
第4期 恐慌と2つの大戦
・1914~1948 第一次世界大戦
・1929 大恐慌
・1933 FDRニューディール政策
・1939~1941 第二次世界大戦
第5期 超大国への道、ケネディ大統領まで
・1941~1945 第二次世界大戦 太平洋全域を制圧
・1950~1953 朝鮮戦争
・1951 対日講和
第6期 ベトナム戦争の泥沼
・1963 ケネディ暗殺
・1964 公民権法改正
・1973 ベトナム敗北 撤退へ
第7期
・1973 オイルショック
・1974 ウォータゲート事件
・1979 テヘラン大使館事件
・1989 冷戦終結
・1991 湾岸戦争、ソ連崩壊
<大統領+歴年譜>
(ジョージ・ワシントン)
1789 初代大統領就任
1798 フランス革命
(アンドルー・ジャクソン)
1830 インディアンを強制移住
(ジェームズ・ポーク)
1846 メキシコ戦争
1848 カリフォルニアで金鉱発見ゴールドラッシュ始まる
(ミラード・フィルモア)
1853 ペリー浦賀来寇
(エイブラハム・リンカーン)
1861 南北戦争勃発
1865 南北戦争終了
(アンドルー・ジョンソン)
1869 大陸横断鉄道完成
(ベンジャミン・ハリソン)
1890 サウス・ダコタでインディアの虐殺 フロンティア消滅
(ウィリアム・マッキンリー)
1898 スペイン戦、フィリピン、プエルトリコ獲得
1898 ハワイ併合
(トマス・ウッドロー・ウィルソン)
1914 第一次世界大戦勃発
1918 第一次世界大戦終了
1919 禁酒法
(ハーバート・フーバー)
1929 大恐慌始まる
(フランクリン・ルーズベルト)
1933 ニューディール政策
1939 第二次世界大戦勃発
1941 真珠湾攻撃太平洋戦争
1945 第二次世界大戦終了
(ハリー・トルーマン)
1951 対日講和
(リンドン・ジョンソン)
1964 公民権法改正
(リチャード・ニクソン)
1973 ベトナム戦争敗北
1973 オイル・ショック
(ジミー・カーター)
1979 ソ連アフガニスタン侵攻
(ジョージ・ブッシュ)
1989 冷戦終結
1991 ソ連崩壊
目次
プロローグ 歴史の入り口で
第1章 新しい共和国の誕生(~1789)
第2章 国家分裂の危機(1789~1865)
第3章 アメリカ帝国の出現(1865~1900)
第4章 大衆消費の実現と大恐慌(1900~1941)
第5章 アメリカの世紀(1941~1960)
第6章 平等への闘い(1960~1973)
第7章 超大国の行方(1973~)
エピローグ
あとがき
アメリカの歴史・略年表
引用文献
ISBN:9784121010421
判型:新書
ページ数:292ページ
定価:1200円(本体)
1991年10月25日初版
1999年09月25日19版 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1991年に初版の少し古い本。人種差別の問題が多く取り上げられている。1964年の公民権法成立で表面上の差別問題は一応解決されたが、南部ではもちろん北部、西部でも差別主義は根強く残っていた。南部のレストランでは黒人客をピストルで追い返すという事件が起こり公民権法違反第1号となり店は莫大な罰金を突きつけられ閉店へ追い込まれたが、アメリカ各地から激励の手紙やら寄付が集まりその店主はジョージア州知事選に当選してしまう。その頃「ブラックパワー」という言葉が流行り始める。時に黒人は武器をもって立ち上がる必要もあるという強烈な考え方だ。非暴力を訴えていたキング牧師からは批判を受けることになるが、瞬く間に広がっていった。そしてキング牧師は、1967年、人種を超えた「貧者の行進」の最中凶弾に倒れわずか39歳という短い生涯に幕を閉じた。アメリカの歴史を知ることは今のアメリカが抱える貧困問題を考える上で重要と思われる。建国以来の経済至上主義を貫いてきたことによる歪みが出て来ている。
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Posted by ブクログ
本書は、細かく分析した歴史書ではなく、アメリカの歴史を辿りながら、ある程度の全体像を紹介するものである。
著者はアメリカ研究の第一人者。文中の所々で著者のアメリカでの体験や、コラムのような形でアメリカの重要人物や重要事項も紹介してくており、楽しみながら読む事ができる。
また、各章で取り上げられているテーマも難しい物ではなく、キング牧師やケネディといった、比較的多くの人に知られている人物を取り上げているため、アメリカを初めて学ぶ人でも十分理解できる内容だと思う。
本書は学ぶというよりも、読んで楽しむという目的にも十分対応できるものであると思う。 -
Posted by ブクログ
太平洋戦争について、この本のように人種主義的な見地から叙述されたものを読んだのは初めで新鮮であった。
自分たちの民族が優れていると思いたくなる気持ちは分からなくはないが、それは幻想にすぎない。真珠湾や太平洋戦争初期にアメリカが敗北を重ねたのも、日本がミッドウェー以降敗北し続けたのも、その本質的な部分には自らの慢心・奢りがあったことは確かである。太平洋戦争は日本がアメリカに無謀な戦いを挑んだもので、そもそも挑んだこと自体が愚かであったことは誰しもが知るところであるが、その本質が白人至上主義に対する大和民族の挑戦であったことをはっきりと認識している現代人は少ないと思う。白人至上主義に意義を唱えるという点では非常に正論であったのだが、八紘一宇は良くなかった。まあ白人至上主義も大和民族至上主義も詰まる所は自民族に対する自惚れで、これこそが災いの種なのだが・・・。日本人は過去のこうした歴史を学ばなさ過ぎる、というか目を背けている節すら感じられる。義務教育で太平洋戦争やそこに至る歴史をもっと詳しく教えるべきである。過去から学び、このような戦争を回避するすべを知っておかなければならない。