猿谷要の作品一覧
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ユーザーレビュー
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イギリスの産業革命について深く勉強したいと思い本書を手に取りました。これまでにアシュトンの「産業革命」などを読んではいましたが、本書は産業革命時代の人間像を可能な限り生々しく記述されていて、とても勉強になりました。文庫版で購入しましたが読み応えは十分です。産業革命によって人々の生活が劇的に変わりまし
...続きを読むたが、当時の英国でもっとも重要だったのが社会的地位。上流、中流、下流(労働者層)という意識は産業革命時代に生まれたそうですが、本書を読むといかに多くの人々が自分自身の社会的地位をあげることに必死になっていたかわかります。21世紀の現在でも周りの人からどう見られているかを気にしながら生活している人が多いですから、人間は古今東西あまり変わっていないんだな、と苦笑しながら読みました。
本書でとてもよかったのは当時の絵画、版画をイラストとして多用していることです。文章を補完する意味でとても良かったです。また興味深かったのは当時英国に旅行に行ったドイツ人旅行者の日記のように「外国人から見た産業革命」がわかることです。イギリスの良いところ、悪いところが生々しく記述されていて、想像力をかきたてられました。産業革命を学ぶ人は本書は必須かと思いますし、学術研究ではなく教養として産業革命の勉強をしたいという人も十分楽しめます。
Posted by ブクログ
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「敗北を抱きしめて」のダワーが、日米戦争中の日米双方の人種主義を分析した本。
「敗北を抱きしめて」はとても面白い本で、戦後の日本復興における日本とアメリカの一種の共同作業のプロセスをリーダーたちの言動だけでなく、庶民の捉え方も含め、言説やシンボルなどの文化的な読み解きを通じいて、とてもエキサイティ
...続きを読むングであった。
この本が書かれたのは、この「敗北を抱きしめて」より早く、扱われている時代も戦前、戦時中というわけで、「敗北を抱きしめて」の前編ということもできる。
内容としては、いかに戦時中に日米双方が、人種的な偏見、ステレオタイプ化によって、相手を非人間的な存在として、語り、シンボル化して、戦争において、相手の「人権」といったことを考える必要のないものにしていたかということを漫画やポスターなどなどの分析を通じて、明らかにしていく。
戦後の日米の共同関係については、「敗北を抱きしめて」に詳しいが、それにしても、この間まで、鬼畜英米といっていた日本国民がどうして米国の支配をすんなりと受け入れたか、またアメリカが日本をどうして日本を人間として扱うようになったかは、不思議。
そこまで、相手を非人間化しておいて、戦争を終わると、あっさりその比喩は和らげられ、あらたに敵として立ち上がってきたソ連や中国の共産主義に対して、同じような非人間化の比喩が用いられるようになる、その変わり身の速さがまた恐ろしい。
で、その説明もこの本では与えられていて、イメージや言説の連続性はある意味では継続しつつも、意味が微妙に変化しているから、ということ。この辺の説明は、かなり説得力がある。具体的にどういうことかは、この本を読んでほしい。
この本がかかれたのは、1980年代。当時は、日本の経済的な発展がピークで、日米貿易摩擦が問題になった時期。そうなると、一旦、収まっていた比喩がまたでてくる。「経済戦争」「エコノミック・アニマル」などなど。そして、「パールハーバーを思い出せ」的なことをまた言われ始める。
つまり、いつでも利用可能なものとして、人種的な偏見と比喩は待ち構えているということ。そうした言説は、相手が変わっても、そのまま違う相手に対して使われることもあるし、国と国との歴史、固定観念との関係で、ユニークなものもある。
そして、そうした比喩や言説は、日米関係に限らず、いつでも出動をひかえて、スタンバイしているのかもしれない。
Posted by ブクログ
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著者ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』は、当時の文献研究を通して、敗戦直後の日本の埋もれていた事実を多様な視点から浮かび上がらせた名著だった。本書は同じ著者が、太平洋戦争時の日米双方の敵意あるプロパガンダや世論を文献から掘り起こし、戦争における人種問題の影響を批判的に指摘したものである。日米双方に
...続きを読む強い排他主義と自民族優越主義が見られるが、同時に日本における言説とアメリカにおける言説の傾向は大きく違っていることも対比に基づいて指摘されていて興味深い。
人種間の憎悪をあおるような差別意識は過去のものでは決してなく、今も根強く残り、そのため簡単に火がついて蘇ることもある。年配の親戚が、韓国やロシアのことを悪く言うことも普通にいまだにある。また、「黒人」のステレオタイプを自分の親の世代は持っているだろう。「バカチョンカメラ」という言葉が普通に何のためらいもなく使われていたことは驚きだが、過去には他民族に対する優越意識が当たり前のように多くの人の底にあったことを示している。また自身の経験でも、日本以外でも隣国間の根強い差別はあり、例えば一部のギリシア人はいまだにトルコ人を敵と考えていた。アメリカ人はテロリストというカテゴリーを使うことで逃げているようだが、アラブ人に対する差別要素をはらんでいることは簡単には否定できないだろう。
かつては、人種差別は非論理的な人が持つ偏見ではなく、科学的な根拠を持つものとして語られていた。本書は、そういった事例に枚挙にいとまがないことを示す。そして、戦争という状況の下で誰もが、その説明を受け入れて利用することにためらいを見せなかった。時代によっては自分がこの差別や憎悪を積極的にサポートする側に回ることがあったかもしれない、ということを真摯に考えることは誠実な想像力の働きだと言えるだろう。こんな差別や憎悪を産み出してしまうなんて、やはり戦争はいけないことだ、と無邪気に結論を出してしまうべきではない。
本書では、日本が「劣等民族」=「子供」であるという米国が与えたイメージが、戦後においてアメリカ自身を「保護者」であり、日本人自身が自らを「生徒」とお互いにみなすことで、スムーズな米国式民主主義導入が実現されたと分析している。終戦を境として真逆の態度を日本人が取ることができたという不思議の理由の一端をよく示している。
日本の戦争犯罪の追究にも容赦はないが、本書は主にはアメリカが抱える人種問題について扱ったものだと言えるだろう。アメリカでどれほど読まれたのか不明だが。9.11の事態を躊躇いなく真珠湾に結び付けて公に語られたことからも今日的意義を持つものだと思う。
Posted by ブクログ
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先だって読んだ中国の歴史とは打って変わって、アメリカは歴史という意味では浅いことを再認識。それでも各時代を深く掘り下げるのはやっぱり難しく、順を追って最重要項目だけを列挙するにとどまっている部分も多いとは感じた。とはいえ、かの国をサラッと俯瞰したい身からすると、丁寧にまとめられていて、素敵な内容に思
...続きを読むえた。急成長ぶりが半端ない代わりに、というと語弊があるけど、その歴史背景~現代情勢には色んな矛盾が存在しているのですね。
Posted by ブクログ
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太平洋戦争における戦中戦後のアメリカ人の日本人観や、日本人のアメリカ人観の変遷が細かに分析された非常に読みごたえのある研究書です。
アメリカ人の日本人観はさもありなんということが多いのですが、注目すべきは日本人のアメリカ人観の著述です。
日本人は戦中にあれだけアメリカを憎んでいたのに、戦後はそ
...続きを読むの態度をほぼ正反対に変えます。これは国家戦略として国家が選択したという問題ではなく、広く庶民にそういう感情が生まれました。
著者は日本人がアメリカ人を『鬼』と見なしていたことが、実は戦後のアメリカ人への対応をガラッと変える事ができた重要な要素として捉えています。それを証明する過程も丁寧で、日本人の民俗観に対する著述も的を射ています。
日本人では気づかない事を教えてもらった気がします。
Posted by ブクログ
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