榎木英介のレビュー一覧
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どの業界も裏があり、その裏は業界人にはわかっていてもなかなか表には出てこないもの。本書は医学界のウラについて書いてあるのですが、基本的には暴露本、そして、医学界の問題点を表面には表してはいるけれども、最終章までくると医学界に心身ともに捧げて貢献している人、そして、それを何とかそのような人を守るためにはどうすればよいのかという提言にまで踏み込もうとしていることに好感をもてました。
医学部は普通の学部の中で孤立化するとともに、逆に言えば医学部内での連帯感が強まり、連帯感は学閥、医局の権力集中が悪癖を産むことはデメリットかもしれません。逆に言えばその連帯感を壊してしまうと、それまであったメリット -
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ついに死者まで出てしまったオボガタSTAP事件。しかし、コピペとつじつま合わせが当たり前の論文や、共同著者論文とは誰も全体の責任を持たない論文であること、博士号資格がろくなチェックを受けずに与えられていたことなど、日本バイオ研究界の闇を明らかにしてくれたという点では評価されるべきかもしれない。
本書はオボガタ問題以前から、研究者たちの絶対的な上下関係や予算分捕り重視の姿勢を問題視していた著者の集大成。結局、バイオ研究というのは、公的予算をどうやって手にするかにかかっており、ルックスの良いリケジョ、ピンクの研究室など、世間へのわかりやすいアピールが研究そのものよりも大事なのだ。逆に言えば、あま -
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ネタバレ医療現場について、その世界を知らない人に面白く読ませる名手。
医療エンターテイメントか!ってなる。
こういう本ってうっかりすると、内部暴露的というか、批判のみであったりするのだが、全体的な概要、なぜそうなったのか、取り入れた制度の利害、今後の展望についての記載のバランスが良くて読みやすい。
一度研究者になってから医師という道を選ぶような著者だから、視野が広いのかもしれないが、分かりやすい説明のみではなく1冊を面白く読ませるという力量はすごいなーと思う。
病理診断については、なるほど納得。チームバチスタ読者としては、死後の病理診断と言えばAiですよね!ってなるので、ここでAiが出てき -
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あらすじを読むと、いまはやりの「STAP細胞事件」が特別なことと言うよりは、よくあることであると分かる。
大学や研究機関の閉鎖的な仕組みのなかで、それぞれが最少の労力で利益を得るために起きたのかな、と。
象牙の塔はガラス張りにしないといけないんだろうなぁ。
あー。
あと、銀行が不正を防ぐため2年で異動となるように、研究室に対しても何らかの制約を設けるべきかと。
それから(私も一部あるんだろうけど)、バブル以前の高度成長期にモノを得た人、あるいは得ると思ってしまった人はどうしてもそれにしがみつく。しかしながら、これからの社会的に分け合うというか、思っていたよりも利益が少ないとしても、 -
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アカデミアを断念し,医転して現在は病理医をしている著者が,自分の経験と科学への関心・期待に基づいてバイオ分野での研究不正の背景に切り込んでゆく本。
研究環境にまつわる負の側面ばかりが強調されてしまっているので,これを読んで,科学なんてまるでダメじゃないかと感じてしまうかも知れない。教授の権力濫用,ピペド問題,研究者教育の不徹底,ポストの不足,過度な競争,研究費の分取り合戦,インパクトファクター至上主義,ゲストオーサーシップ…。こういうシステムが,捏造や剽窃の温床になってしまっていて,ディオバン問題やSTAP細胞問題は氷山の一角にすぎないという。
研究不正問題に関しては,春に下のような感想を抱い -
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今もよく見かける「医学博士」という肩書き。実は1991年から名称が変わり博士(医学)となっている。博士(農学)、博士(理学)と同列で、あまり知られていないが、博士(医学)と言っても必ずしも医師というわけではない。どんな学部にいようが論文を書いて医学部の大学院に提出すれば、この博士号が取得できてしまう。加えて、博士(医学)は他の学部に比べれば取得が非常に楽。例えば、理学部で博士号を取得するには、国際雑誌に英文の論文を3本は提出しなければならないが、医学部であれば一本あれば十分で、しかも「○○大学紀要」といった雑誌への掲載でよい。いわばホームで戦うようなもので、国際雑誌に掲載されるのとは雲泥の差が
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IPS細胞、STAP細胞と話題に事欠かない生命科学。その裏側で過剰な予算獲得競争や、研究不正なども問題となっています。生命科学研究の現状の一面、それが研究不正を煽ってしまう構造を、かつて同分野の研究者であった著者の経験に基づいて書かれています。
予算獲得・ポスト獲得への過剰な競争が研究不正の動機となり得ること、そして研究不正について「責任ある研究活動と捏造・改ざんとの間は連続的で、その中間的な状況があり明確に線引きできない」ためにデータを分かりやすく加工するだけの作業が次第にエスカレートして遂にデータの捏造を産んでしまう事を著者は指摘しています。
任期が数年という研究職の雇用形態が主流となり、