後藤明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ文庫化にあたり改題したようだけれど、個人的には元々の『イスラーム歴史物語』のほうがしっくりくるなと思った。
1話から100話までイスラームの歴史を辿っていくという内容で、人類の農業と牧畜のはじまりから語る。一冊読み終わってみると、今の世界の動きがこれまでの歴史の延長線上にあることが分かった。一時代だけを見ても真に理解したことにはならないのだな。
人類の歴史って戦争の歴史と言ってもいいんじゃないかと思うくらいずっと争っていて、うんざりする部分は少なからずある。でも語り口が落ち着いて淡々としているので、遠い昔のおとぎ話を聞いているかのような感覚だった。でもそれは確実に今に繋がっている。
神やその使徒の話を読んでいると、本来、信仰と政治は切り離せないものなのかもしれないなとふと思った。信仰をもつ場合それはその人の生き方そのものなのだから。
民主主義の国家の大部分は植民地を支配して繁栄していた、という指摘にはハッとした。西洋視点での歴史の捉え方に偏っていることを自覚した。この本によってイスラーム世界の歴史の大まかな流れを知れたことは良かった。 -
Posted by ブクログ
【イスラームは、多くのものをイスラーム以前のメッカ社会、そしてより広くアラビア世界に負っている】(文中より引用)
イスラームの聖地であるメッカ。その都市の成り立ちと性格について、数多くの伝承などを基にしながら紐解くことを試みた作品です。著者は、初期イスラーム史を専門とする後藤明。
一つの「都市史」として興味深いだけでなく、メッカに関するあまり知られていないトリビアも豊富に盛り込まれた良作。初版は30年近く前に出版されているとのことですが、古さを感じさせない内容に目を見張るものがありました。
ヒジャーズ地方ってまた独特なんだろうなと☆5つ -
Posted by ブクログ
著者の後藤明(1954年~)は、南山大学教授の文化人類学者、考古学者。
本書は、これまで、世界中の神話の類似点から様々な文化の伝播や系譜論が唱えられてきた中で、近年注目されるようになった、世界の神話の系統は大きく二つの流れに分けられるという「世界神話学説」について、世界各地の神話を比較しながら解説するとともに、その中で日本の神話がどのように位置付けられるのかを分析したものである。
内容は概ね以下である。
◆世界神話学説とは、米国のマイケル・ヴィツェルが唱える、世界の神話は大きく「古層ゴンドワナ型神話」と「新層ローラシア型神話」の2つのグループに分けられ、それは、遺伝学、言語学或いは考古学による人類進化と移動に関する近年の成果と大局的に一致するというもの。
◆ゴンドワナ神話群は、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが持っていたもので、出アフリカによって、南インドからオーストラリアへ渡った集団が保持する古層の神話群で、「人類の原型的な思考」ともいえる。ローラシア神話群と異なり、世界は既に存在しているものとして語られ、また、一つ一つの物語が関連して発展していくという形をとらず、個々の神話の間に関連性が見出せないものが多い。
◆ローラシア神話群は、既に地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中核として生み出され、様々な集団の移動によって各地に伝播した神話群で、「人類の最古の物語」ともいえ、ヨーロッパ、シベリア、インド、東アジア、アメリカ大陸に広がる。世界の無からの創造を語り、最初の神、特に男女神の誕生、更には天地の分離を語り、大地の形成と秩序化、それにともなう光の出現、火や聖なる飲み物の獲得、原初の竜退治などのテーマが連なり、その後に続く、神々の世代と闘争、半神半人の時代、人類の出現、更には、後に貴族の血脈の起源へとつながり、最後には、しばしば現世の暴力的な破壊と新しい世界の再生が語られる。起承転結や因果関係をもった本来の意味での物語性が強く、我々にも理解が容易である。
◆日本神話は、ゲルマン、北アジア、朝鮮、インド、ポリネシアなどの神話と類似性があり、大局的には、ユーラシアに広く分布するローラシア型神話群に属している。ただ、日本列島はホモ・サピエンスが東南アジアから北方アジア、アメリカ大陸へと移住する経路にもあたっていたため、ゴンドワナ型神話の痕跡もあり、それにより、日本神話の複雑さ・多様性が生まれた。
◆ゴンドワナ型神話は、「物語」という営みが生まれる以前に存在していた「思考」であり、そもそも人間と動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物・木々や花々とともにささやき合っていた時代の「神話」である。即ち、進化思想であり自民族中心主義につながりかねない危険性を孕んだローラシア型神話とは異なり、ゴンドワナ型神話は、対等の関係或いは互酬制、調和と共存こそが世界の神秘であり、人類を含む地球上の生きとし生けるものの叡智であることを教えてくれる。
現在世界各地には、人種も民族も文化も言語も異なる多数の人々が存在するが、原型的な思考、最古の物語を潜在的には共有しているということには、大いなるロマンを感じるし、争いの絶えない今日の世界においても、一筋の希望に繋がると思いたいものである。
(2017年12月了) -
Posted by ブクログ
国や地域ごとに伝わる伝承はさまざまであるが、あれ、なんか聞いたことあるストーリーだなと思うことがたびたびある。
昔聞いたことを忘れていたのかもしれないが、実は日本にも同様のストーリーが伝承されていた、ということもある。
後者の場合、それは偶然だろうか?この場合2つのパターンが考えられる。
・対象のストーリの発生が自然的(人間共通)な考えによるもの。例えば、太陽を神格化するという発想は世界中でよく見られるがそれ自体は太陽による恩恵を考えると世界中でこのような神話が発生するのは自然のように思える。
ただし、太陽を男性とみると、女性とみるか(または中性的とみるか)は自然的ではない。実際、太陽の性別はと聞かれると男性という人も女性という人もいるのではないだろうか。
・次に考えられるのは、もともと根本的なストーリーが存在し、それが民族移動によって各地に同じようなストーリーが広がっていった、というアイデア。
本書のメインテーマは後者である。
各地域で伝承や神話を丁寧に分析することで人類が文字を持たないくらい過去での人間の足取りを追えるのではないか、という流れである。
日本、アジア、南米、アメリカ大陸に伝わる伝承の類似性を検討している。
まぁしかし神話に頼らずとも最近はDNAによる人類の移動の年代や経路がある程度正確にわかってきており、いまだ解明されていない点がこの神話の分析によって解決することができるかは疑問であるが。
ということで本書の最終的な結論は(筆者も頭を悩ませたと思うが)、神話を知り、今日の悩みを緩和しようぜ、という本書のストーリーから若干離れた感じになっている。
問題意識は面白いと思う。 -
Posted by ブクログ
神話学者のマイケル・ヴィツェルによって提唱された「世界神話学説」にもとづいて、世界各地の神話を比較し、そのつながりを論じた本です。
近年の遺伝学の進展によって、アフリカに誕生したホモ・サピエンスの移動の諸相が解明されてきました。ヴィツェルは、こうした研究の成果に依拠して、地球上のさまざまな神話が、古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに分類することができると主張します。本書では、そうしたヴィツェルの主張の裏づけとなる世界各地の神話を紹介するとともに、著者自身の研究も加味しつつ、とくに日本神話の源流についても議論をおこなっています。
本書で紹介されているヴィツェルの議論は、遺伝学の成果をもとに、地球規模の神話の起源と変遷にかんする研究というもので、そのスケールの大きさには目をみはらされます。ただ、神話そのものの分析については、印象論的なレヴェルでの類似が論じられているにすぎないという印象も受けました。