【感想・ネタバレ】メッカ イスラームの都市社会のレビュー

あらすじ

カーバ神殿を擁する巡礼地・メッカ。七世紀初頭、アラビア半島の灼熱の岩肌に囲まれたこの地が、なぜ都市に発展し、世界の<聖地>となったのか。ムハンマドの生涯や、コーランはじめ文化、風習、儀礼など、ムスリム知識人が守った伝承“ハディース”から、多角的に考察。西欧的学問の思考からは見落とされてきた、イスラーム精神の本質に迫る。


目次))
序 章
西欧的知の枠組/多様化する世界/「常識」をこえるイスラーム/イスラームとは/イスラームの成立/イスラーム的知の枠組/オリエンタリズムの克服

一 前 史
メッカの歴史地理/考古学の成果/ソロモンとシバの女王/紀元前のアラビアの歴史/紀元前後のアラビア/一神教革命

二 系図と部族
父系の系図/「部族」の概念/メッカは「部族社会」か/氏族の系図/クライシュの子孫ではない人々/マワーリー/ハリーフ/個人の社会

三 メッカのはじまり
カーバ神殿/アブラハムとメッカ/ジュルフム族のメッカ追放/フザーア族とキナーナ族/クライシュ族のクサイイ

四 メッカの発展
牧民社会メッカ/集団意識の実態/イーラーフの制度/フムスの概念/ウカーズの定期市

五 メッカの社会
急成長するメッカ/ムハンマドの生涯/平等な人間関係/メッカの商人/アラビア文字の文書

六 メッカとイスラーム
自由都市/ムハンマドに対する例外的措置/預言者と信徒/メディナ/イデオロギーとしてのイスラーム

おわりに
学術文庫版あとがき

内容抜粋)
イスラームが勃興した七世紀から十四、五世紀までのイスラーム世界にわりあてられた(教科書の)ページ数は、同時期のヨーロッパ史のそれの半分以下なのだ。筆者の見解では、この時代のイスラーム世界とヨーロッパ世界をくらべれば、人口といい、政治力といい、経済力といい、文明の力ともいうべきものといい、前者が後者を圧倒していた。わりあてページ数は逆でなくてはいけない、と信じている。 ――――「序章」より

*本書は1991年に中公新書より刊行されたものを一部、加筆修正したものです。

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Posted by ブクログ

【イスラームは、多くのものをイスラーム以前のメッカ社会、そしてより広くアラビア世界に負っている】(文中より引用)

イスラームの聖地であるメッカ。その都市の成り立ちと性格について、数多くの伝承などを基にしながら紐解くことを試みた作品です。著者は、初期イスラーム史を専門とする後藤明。

一つの「都市史」として興味深いだけでなく、メッカに関するあまり知られていないトリビアも豊富に盛り込まれた良作。初版は30年近く前に出版されているとのことですが、古さを感じさせない内容に目を見張るものがありました。

ヒジャーズ地方ってまた独特なんだろうなと☆5つ

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2021年08月12日

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