あらすじ
なぜ世界中によく似た神話が見られるのか。神話には人類の古い歴史が埋めこまれている。最新の神話研究とDNA研究のコラボにより、「出アフリカ」以降のホモ・サピエンス移動の軌跡が明らかに。世界の神話の分析から浮かび上がる人類の壮大なドラマ。人類史の見方が変わる!
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Posted by ブクログ
各国・各地域の神話の類似性を人類の進出と照らし合わせて提言している。
過去に読んだ本では日本神話は南洋系と類似性があるという話を神話の中身のみに着目していたが、遺伝子研究などで人類がアフリカを出発してからの軌跡に沿って神話を分析していた感じ。
ゴンドワナ型とローラシア型の二種類に分類することが出来るという。後者は支配者層の正統性を表すためのもの・支配機構。前者は人間の営み・自然との調和。
ローラシア型は支配に利用され得るというのが面白かった。
Posted by ブクログ
#2024年に読んだ本 54冊目
#10月に読んだ本 1冊目
とても興味深い内容で面白いのだけど
扱っているものが幅広すぎて
初めて聴く単語も当たり前のように
たくさん出てくるので
なかなか読むのが大変というか
わかりにくいところが多い…
写真とかイラストとか図説入りで
わかりやすく整理した
新書形式でないような
同テーマを扱った本を出版していただきたい
Posted by ブクログ
とにかく扱ってる話題がおもしろい。詳しい話を聞いたことがない。でも、章立てやエピソードの整理には改善の余地があるような...
世界各地で伝わる神話の共通性は、大航海時代以降に伝わった部分もあるにせよ、それでは説明できない、つまり、人類の移動/移住の歴史で説明される部分が少なくない。
読み終わっても整理できていないけど、例えばこんなモチーフが広く見られる。
釣り針/槍をなくすと動物の世界に行って動物の長と仲良くなり、帰ってきて幸せに暮らす。浦島太郎、海彦山彦。
脱皮できなくなったから人間は死ぬ。
世界は無か水か巨人か卵の中から出てくる。
大抵、太陽と月は男女で、星は動物。何かと追いかけっこをしている。
...その他いろいろ
多くの神話は、
偉い人あるいは神を崇めさせるようなタイプ(ローラシア)
と、
自然の中にいる精霊とかとのやりとりが断片的に描かれるタイプ(ゴンドワナ)
にざくっと分類でき、大まかに、前者は農業革命以降(=10kyaくらい以降。余剰資源の備蓄開始、統治者,聖職者の誕生)、後者はもっと昔(言語や抽象概念の成立以降)に成立したと考えられる。
今成立してる制度やモラルの硬直は、こういう観点を入れれば組みなおすことができるかも。
"昔から"という正統性のおおもと(神話)は、人間共通であって国特有ではなかったり、社会の統治の開始以降という歴史以上のものは持っていなかったり。
Posted by ブクログ
神話には大きく分けて、ゴンドワナ型とローラシア型があること。
地理的に離れているはずなのに、神話に共通性があり、そこから人類移動の系譜を類推できること。
専門外の私が読んでもわかりやすく、かつエキサイティングだった。
Posted by ブクログ
仏教、キリスト教、オリエント文明ときたので、ついに世界の神話まで遡及。自然人類学にもとづいて、神話をローラシア型とそれより原初的なゴンドワナ型に区分し、それぞれに特色ある類型を分析する内容ですが、物語としての神話として構成されるローラシア型より、ゴンドワナ型に神話的思考を見いだすところに、著者に対しる好感を持ってしまいます。
Posted by ブクログ
著者の後藤明(1954年~)は、南山大学教授の文化人類学者、考古学者。
本書は、これまで、世界中の神話の類似点から様々な文化の伝播や系譜論が唱えられてきた中で、近年注目されるようになった、世界の神話の系統は大きく二つの流れに分けられるという「世界神話学説」について、世界各地の神話を比較しながら解説するとともに、その中で日本の神話がどのように位置付けられるのかを分析したものである。
内容は概ね以下である。
◆世界神話学説とは、米国のマイケル・ヴィツェルが唱える、世界の神話は大きく「古層ゴンドワナ型神話」と「新層ローラシア型神話」の2つのグループに分けられ、それは、遺伝学、言語学或いは考古学による人類進化と移動に関する近年の成果と大局的に一致するというもの。
◆ゴンドワナ神話群は、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが持っていたもので、出アフリカによって、南インドからオーストラリアへ渡った集団が保持する古層の神話群で、「人類の原型的な思考」ともいえる。ローラシア神話群と異なり、世界は既に存在しているものとして語られ、また、一つ一つの物語が関連して発展していくという形をとらず、個々の神話の間に関連性が見出せないものが多い。
◆ローラシア神話群は、既に地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中核として生み出され、様々な集団の移動によって各地に伝播した神話群で、「人類の最古の物語」ともいえ、ヨーロッパ、シベリア、インド、東アジア、アメリカ大陸に広がる。世界の無からの創造を語り、最初の神、特に男女神の誕生、更には天地の分離を語り、大地の形成と秩序化、それにともなう光の出現、火や聖なる飲み物の獲得、原初の竜退治などのテーマが連なり、その後に続く、神々の世代と闘争、半神半人の時代、人類の出現、更には、後に貴族の血脈の起源へとつながり、最後には、しばしば現世の暴力的な破壊と新しい世界の再生が語られる。起承転結や因果関係をもった本来の意味での物語性が強く、我々にも理解が容易である。
◆日本神話は、ゲルマン、北アジア、朝鮮、インド、ポリネシアなどの神話と類似性があり、大局的には、ユーラシアに広く分布するローラシア型神話群に属している。ただ、日本列島はホモ・サピエンスが東南アジアから北方アジア、アメリカ大陸へと移住する経路にもあたっていたため、ゴンドワナ型神話の痕跡もあり、それにより、日本神話の複雑さ・多様性が生まれた。
◆ゴンドワナ型神話は、「物語」という営みが生まれる以前に存在していた「思考」であり、そもそも人間と動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物・木々や花々とともにささやき合っていた時代の「神話」である。即ち、進化思想であり自民族中心主義につながりかねない危険性を孕んだローラシア型神話とは異なり、ゴンドワナ型神話は、対等の関係或いは互酬制、調和と共存こそが世界の神秘であり、人類を含む地球上の生きとし生けるものの叡智であることを教えてくれる。
現在世界各地には、人種も民族も文化も言語も異なる多数の人々が存在するが、原型的な思考、最古の物語を潜在的には共有しているということには、大いなるロマンを感じるし、争いの絶えない今日の世界においても、一筋の希望に繋がると思いたいものである。
(2017年12月了)
Posted by ブクログ
理系、文系が融合されたこういう本を探してた。神話とかいう軽視されそうな学問の存在意義を知れる。知らない神話の話だらけで面白かった。神話の共通点を見つける作業というのは、湖で木の上に乗った人の顔が水面に反射する話の一致とかは驚いたが、ただの偶然の一致でも片付くんではないかと思うのも多い。太陽と月が半日しか出ない、明るさが違う、月には星がついてくる理由とか面白かった。ゴンドワナ神話は正直、めちゃくちゃ笑。日光が陰部にさして太陽と性交とか常人には思いつかんて。
Posted by ブクログ
国や地域ごとに伝わる伝承はさまざまであるが、あれ、なんか聞いたことあるストーリーだなと思うことがたびたびある。
昔聞いたことを忘れていたのかもしれないが、実は日本にも同様のストーリーが伝承されていた、ということもある。
後者の場合、それは偶然だろうか?この場合2つのパターンが考えられる。
・対象のストーリの発生が自然的(人間共通)な考えによるもの。例えば、太陽を神格化するという発想は世界中でよく見られるがそれ自体は太陽による恩恵を考えると世界中でこのような神話が発生するのは自然のように思える。
ただし、太陽を男性とみると、女性とみるか(または中性的とみるか)は自然的ではない。実際、太陽の性別はと聞かれると男性という人も女性という人もいるのではないだろうか。
・次に考えられるのは、もともと根本的なストーリーが存在し、それが民族移動によって各地に同じようなストーリーが広がっていった、というアイデア。
本書のメインテーマは後者である。
各地域で伝承や神話を丁寧に分析することで人類が文字を持たないくらい過去での人間の足取りを追えるのではないか、という流れである。
日本、アジア、南米、アメリカ大陸に伝わる伝承の類似性を検討している。
まぁしかし神話に頼らずとも最近はDNAによる人類の移動の年代や経路がある程度正確にわかってきており、いまだ解明されていない点がこの神話の分析によって解決することができるかは疑問であるが。
ということで本書の最終的な結論は(筆者も頭を悩ませたと思うが)、神話を知り、今日の悩みを緩和しようぜ、という本書のストーリーから若干離れた感じになっている。
問題意識は面白いと思う。
Posted by ブクログ
神話学者のマイケル・ヴィツェルによって提唱された「世界神話学説」にもとづいて、世界各地の神話を比較し、そのつながりを論じた本です。
近年の遺伝学の進展によって、アフリカに誕生したホモ・サピエンスの移動の諸相が解明されてきました。ヴィツェルは、こうした研究の成果に依拠して、地球上のさまざまな神話が、古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに分類することができると主張します。本書では、そうしたヴィツェルの主張の裏づけとなる世界各地の神話を紹介するとともに、著者自身の研究も加味しつつ、とくに日本神話の源流についても議論をおこなっています。
本書で紹介されているヴィツェルの議論は、遺伝学の成果をもとに、地球規模の神話の起源と変遷にかんする研究というもので、そのスケールの大きさには目をみはらされます。ただ、神話そのものの分析については、印象論的なレヴェルでの類似が論じられているにすぎないという印象も受けました。