諏訪春雄のレビュー一覧
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[ 内容 ]
日本の浮世絵はなぜ遠近法をもたなかったのか。
浮世絵に限らず、日本の美術は中国やヨーロッパの影響によるものを除き、独自の遠近法をもたなかった。
しかし、写実の範囲を超えた造型方法である「視点の移動」が見られる。
そこには日本人の伝統的なものの見方が反映されているのではないだろうか。
遠近法を突破口に、浮世絵、歌舞伎、宗教から浮き彫りにされる個と全体との関係を論じた日本文化論。
[ 目次 ]
1 遠近法とはなにか
2 日本美術の遠近表現
3 ヨーロッパ美術の線遠近法
4 浮世絵の遠近法
5 錦絵の誕生
6 視形式の特殊性
7 絵画の目的
8 アニミズムと一神教
9 日本の型文化と -
Posted by ブクログ
著者は「あとがき」で、本書のめざすところを次のように述べています。「本書は、オカルト志向、超人待望のいずれとも無縁である。安倍晴明の真実の姿をあきらかにすることによって、その虚像性をはぎとることに精力がそそがれている。しかし、本書はたんなる破壊の書ではない。虚像として結晶した安倍晴明伝説の形成過程を丹念に糾明することによって、伝説に託された多くの人々の願望と悲しみに陽の光をあてている。それは、もう一つのあたらしい清明像の創出である。」
まずは、陰陽道や式神についての研究を通して、当時の政治的現実の中を生きた安倍晴明の姿を明らかにしています。その上で著者は、中世以降の民間陰陽師たちによるさまざ -
Posted by ブクログ
前半は、中国を経由して日本に遠近法がもたらされた経緯についての、実証的な考察が展開されています。
後半に入ると、日本の浮世絵に見られる自由な視点の移動という特徴が、連句をはじめとするさまざまな日本文化の中に共通して見られることを明らかにしています。さらに、遠近法を生んだ西洋精神史の背後に一神教の伝統を見るとともに、多神教を基調とする日本文化と「視点の移動」のつながりについて考察をおこなっています。
前半の実証的な議論は、この分野にまったく未知の読者としてはやや退屈で、後半の精神史的な議論は考察の範囲が広がりすぎているような印象を受けてしまいました。 -
Posted by ブクログ
そういえば浄瑠璃というのは観たことがない。人形劇だから「プリンプリン物語」みたいなものだろうか(笑)。
江戸・大坂あたりの町人文化を描いたものとして、民俗学的な興味をもって読んだ。これだけ読むと当時の庶民はひどく簡単に「心中」をしたのかと思ってしまうが、実際そんなに多かったのだろうか。現在では自殺は一般的倫理に反するものとして暗黙のうちに禁忌的なイメージを持つが、この頃は「死」は世上の軋轢を解決する手段として比較的容易に用いられたものだったか。
西洋は「個人の生」を保護すると共に管理し、それを至上の命題として「掟」化することによって、自殺をあからさまに禁じた訳だが、西洋化する以前の日本であれば