南川高志のレビュー一覧
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ネタバレ先に読んだ「『自省録』精神の城塞」は自省録の思想的な面に注目した本だったが、こちらは歴史的背景から自省録を見てマルクス・アウレリウスを読み解こうとする本。
マルクスはストア派の思想にのっとったいわゆる哲人皇帝というよりは、現実的にアントニヌス・ピウス帝を手本にした政治をしただけで、哲学は個人的な思想の範囲にとどまっていたというのが著者の考えで、結構面白かった。また、自省録では死を自然なものとして受け止めるよう繰り返し書かれているが、これは疫病ののパンデミックと終わらない戦争という二重苦であまりにも死が身近だったマルクスの環境を考慮して受け止めるべきとあって、なるほどと思った。
この著者の本は前 -
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ギボンのローマ帝国衰亡史も読んでいないし、ローマ帝国の歴史に詳しいわけでもないため、消化不良気味。
ローマ帝国がこんなに広大だったことに驚いた。また、最初は、外れの方は境界が曖昧というかゆるかった、民族という意識がなく、「ローマ人である」という意識で繋がっていた。帝国崩壊の原因はそのような意識でいたはずの「第3のローマ人」達を排外主義により帝国の中心部から排除しようという動きのせい、など。
現在の日本は大丈夫かな、とつい考えてしまった。
巻末に簡単な年表がついていて、先に気づいていれば、もう少し頭がついていけてたかもしれない、と思いました -
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『ローマ帝国衰亡史』といえばギボンのものが本家本元。その向こうを張って21世紀の衰亡史を書こうというもの。歴史学はその同時代の影響を必ず受けるものだと。もっとも本家は文庫本で全10巻。手軽なところが21世紀的という訳ではなかろうが。
カエサルの時代(前1世紀)、五賢帝時代(2世紀)、軍人皇帝時代(3世紀)からまず概観して、コンスタンティヌス大帝、ウァレンティニアヌス朝、東西ローマ帝国分裂(4世紀)、西ローマ皇帝廃位(5世紀)までを扱う。ローマの歴史に詳しくないので、ざっと掴むのにはありがたい記述の分量。
・ローマ帝国の国境は出入りのルーズな「ゾーン」であった。→昔だしそんなものか。一方、ハ -
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ローマ帝国はなぜ滅びたのか。世界史の教科書的には、分割統治によって弱体化した西ローマ帝国にゲルマン民族が侵入し、暴れまくった結果、なんとなく帝国は消滅したという説明だろう。たぶん。そんなスッキリしない説をはっきりさせようじゃないかと、最新の研究による新発見ネタも盛り込んで著されたのが本書。
ややこしい人名が乱発する内容なので、ローマ史をそれほど知らない人にとって、とっつきにくい本だ。そんな人はなぜローマは滅んだのか、その一点だけを理解しようという心構えで読むべきだ。個人的には、反キリスト教の懐古主義者、ユリアヌス帝の短い生涯が印象に残った。
で、ローマ滅亡の要因の一つ、「ゲルマン民族大移動 -
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『ローマ人の物語』、ちょうどこの本の主題である衰亡の前の五賢帝時代ネルヴァの巻まで読んだところで、この本。
ローマをローマたらしめた寛容さがなくなり、不寛容なローマ(排他的ローマ主義)に社会が変質していった。カエサルから始まった外部部族の政治・軍事における比重の増加、外部部族側のエスニシティへの目覚めなどがあいまって、排他的なエスニシティ形成につながったようです。
同時にキリスト教もその性格が変貌し、排他的になり、ローマ帝国が崩壊した。
openとclementiaが同じかわかりませんが、不寛容な社会、組織は長続きしにくいでしょうね。
前著も出ているようなので、こちらも読んでみようと思 -
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ネタバレ南川高志『新・ローマ帝国衰亡史』岩波新書、ギボンの名著に“新”を冠する本書は、歴史学最新の成果を踏まえ地中海の帝国よりも「大河と森」の帝国の衰亡を点描する。帝国領土は確かに明るい地中海が全てではない。巨大な帝国は三十年で滅亡した。栄えた国が滅びること、国家とは何を考えさせる好著。
四世紀後半、攻勢に晒されるローマは「尊敬される国家」をかなぐり捨て、全盛期の推進軸(市民権の平等と寛容)とは対極の「排他的ローマ主義」へ傾く。国家の統合よりも差別と排除を優先させ、実質的にローマを支える「他者」を野蛮と軽蔑し、排除した。
「この『排他的ローマ主義』に帝国政治の担い手が乗っかかって動くとき、世界を