ルース・ベネディクトのレビュー一覧
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ルーズ・ベネディクトと言われると、『菊と刀』が思い浮かぶ。
だが、この『レイシズム』も、古典でありながらも、現代に通じる、というよりも、現代で改めて考え直さなければならない一冊だった。
人種差別はよくない、ということは誰でも知っている。しかし、なぜよくないかを、「人種」で説明しようとする。例えば、肌の色だとかわかりやすい外見を使って。
しかし、目を向けるべきなのは、「人種」でなく、「差別」の方であり、人種差別とは、「外見の特徴」という、「わかりやすい基準」に目を向けた、差別なのだ。
読みながら思ったのは、こうした、差別がなぜ起こっているのか、ということをこれほどまでに詳しく、網羅的に書かれている本が、第二次世界大戦の時代に書かれていたにもかかわらず、現代でも解決されていないのはなぜかということ。
それどころか、より複雑さを増してきているようにも思える。
今まで見えてこなかった、隠されてきたものが顕在化されたり、意識化されたりしたから、かもしれないが、解決策が示されているのにも関わらず、根強く残り続けているのには、「わかりやすさ」があるように思える。
『私たちはそういうシンボリックなものに心を奪われてしまいますから、私たちが具体的な対人関係を軽視して、抽象的なことばかり考え詰めてしまうパターンはこれからも続くでしょう。でもだからこそ確固としたもの、事実といえるところにまで立ち返って、そこから話を始める必要があるのではないでしょうか。『レイシズム』は、その拠り所となる本だと思います。』(訳者あとがきより)
複雑性に耐えられなくなったとき、例えば、自分にとってわからない知識が目の前に出てきたら、「検索する」ように、「解決策を探す」のではなく、じっくりと腰を据えて考えてみる。回答を思いついても、それを保留にしておく。
「答えを出すこと」に急ぎすぎてしまった自分にとって、「寝かせる」という発想は『ネガティブ・ケイパビリティ』に通じていくような気がします。 -
Posted by ブクログ
『菊と刀』の著者が第二次世界大戦のさなか執筆したもの。国家や言語、遺伝、文化に対して優劣があると喧伝するレイシストを糾弾している。俯瞰的に考えれば、純粋な人種や民族などというものは存在しないことはわかりきっており、特にヨーロッパは長い歴史の中で混血が繰り返されている。
その中でレイシズムに陥るのは自分の立場が不安定になったときだ。
「自暴自棄になったとき、私たちは誰かを攻撃することによって自分を慰める」という表現は実に的を射ていると思う。当時は政治がその心理を利用し、レイシズムを推し進めることになった。結局は差別を原動力とした国々は自壊したものの。
現代ではオリンピックなどにより、国家、民族の意識が大きくなっている。その意識が暴走した時、第二次世界大戦ほどではないがレイシズムが席巻するのではとの危惧がある。さらに、未来永劫レイシズムは根絶されないと思う。社会システムに不公正が存在する限り、敵愾心はなくならないからだ。
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結構テキトーに買ったのに思いのほか良かった
前半レイシズム、後半レイシズムと歴史。
知能など能力は遺伝よりも環境に左右されることを論証。
・ダーウィンの自然淘汰理論が発表されてからレイシストはそれを振りかざすようになったが、他の動物のように人間は自らの体を変化させることなく発明の才能を発揮することで環境に適応しているので他の動物と同列に語るのは的外れ(というかそもそもレイシズムに妥当性は無い)。
・人種ごとにことなる身体的特徴は17世代間で純血を保ち続ければ環境適応という形で生じる。
・キリスト教による単一起源論に支配されてた中世。レイシズムは政治的目的に使われてきた、大衆の不満を政治から逸らすため、白人のみの利益を罪悪感なしに行うため。
・人は群生生物であるから文化の理想とする所が大多数の性質となる。 -
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戦後日本の占領統治を効果的なものとするため、日本の土地を踏むことなく文化研究学者ルース・ベネディクトがまとめた日本人論。脚注において誤りも多数あるが、日本人の精神構造をアメリカ人と比較しながら論述することで、特徴的に描き出している。ほとんどが今でも有効なものではないか。
日本人は社会の中で自分に与えられた役割「其ノ所」を得てその役割を失わないよう努力する。相手に対する責務は契約関係に基づく「義務」よりはるかに広く概念的な「義理」であり、その義理を目立たぬ形で果たすことが美しいとされる。競争的に自分の貢献をアピールすることは相手の「其ノ所」を犯し恥をかかせることとなり、社会的に許容されない。日本人にとっては恥をかかされた場合、相手に見えない形での報復、相手への暴力を自分に転嫁した形での自殺により名誉回復をすることが義務とされていることから、見える形での競争を避け、相手に恥をかかせないことが重要である。そのため、事前の根回しや見合いにおける仲介人が本人を介することなく事前のお断りをすることにより、公衆の目に触れることなく社会的地位の調整がなされる。
天皇に対しては無条件の「恩」があり忠誠を誓う。これに対して一般から受けた「恩」に対しては、恩返しをしなくてはならず、なにか恩返しをしても相手からの恩は簡単につきるものではない。(これだけのことでは頂いた恩への返しは)すみません。返せないことが申し訳ないし、感謝していることを忝ないといって表現している。
日本人は自らの生き様を「刀」になぞらえており、自らの義理を果たしたいないことから生ずる恥「身から出た錆」を注ぐことは自己責任上重要な課題とされている。 -
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文化人類学者であるルース・ベネディクトが著した菊と刀に並ぶ代表作。
その表題の通り、人種差別に対して社会人類学者として確固たる証拠を突きつけながら明確なNOを突きつけている。
著作が書かれたのは1942年のナチスドイツが勢力拡大している最中であり、ナチスドイツが掲げる人種差別政策への批判を念頭に書かれたように見える。
ただ、話題はナチスドイツだけにとどまらず、白人の有色人種に対する差別にも踏み込み、こちらにもNOを突きつけている。
中には社会に阿るために差別を助長する学者もいる中で、白人である彼女が既得権益を捨ててNOというのはとても勇気ある行動だし、人として素晴らしい人物だったのだろうと思う。
以下はいいなと思ったところ
・レイシストに特徴的なのは、自分たちの主張を根拠づけるために絶えず歴史を書き換えるところである。
・子供が大人を手本として一から学び取っていくものだけを文化という
・歴史の教える通り、条件さえそろえばどんな民族であっても時には冒険者、時には侵略者となりうる
・衣食住が満たされれば、人間は自分が所属する社会が推奨している形で尊敬を獲得しようとする。
・本質においてレイシズムは「ぼく」が最優秀民族の一員であると主張する大言壮語である。
・私たちが傲慢無知であったり、恐怖に煽られて平常心を失う時、わかりやすくて耳に心地よい物語がそっと忍び寄る -
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アメリカが日本との戦争を終わらすために調査・分析した日本人論のよう。
負けを認めず、最後の一兵まで戦うという日本の決意を鈍らせるにはどうすればいいか。
どうすれば、日本は戦争をやめる(降伏に応じる)のか。
・皇居空爆をすべきか。
・日本人を根絶するしかないのか。
戦争を終わらせるために原爆を投下したという理由づけの根拠となるアメリカ側の言い分になる内容だと思った。
本書は1930年代の日本を、徳川期の武士階級の論理と組み合わせて、日本人の統一像を描こうとしたものだ。
本書の出版年に生まれた人が今80歳くらいなので、その親の世代の日本人論になる。
当然ながら今の日本とは大きく異なっている。
プライド、恥、恩、義理、礼節、徳、忠、といった精神論的な言葉が沢山出てくる。
結婚や子育てについても、こうあるべきだという在り方が詳しく書いてある。
当時の日本人の考え方(常識)や生活の様子を知るにはいい本なのかも知れない。 -
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人種というのがそもそもはっきりしない区分けであり、人種間の優劣というのも科学的に否定されている、という説は、一般的にそう言われてますね、はい、という感じ。(ちなみに何と言われようと私は遺伝的な得意不得意はあると思っている…。一部の黒人は遺伝的に陸上が得意な人が多い。同じ理由で例えば数的処理能力は?音楽的能力は?ある特定の集団の中で、得意な人が多い少ないがあってもおかしくない。それぞれの能力の間に優劣はない=人種の優劣はない、とは思うが。)ただ、すべてのレイシズムは政治利用のために作り出された、という説は新説で面白かった。言われてみるとそんな気がする。
(以下レイシズムの政治利用に関するただのメモ)
ただ現在のレイシズムの政治利用はもっと巧妙になっていると思う。例えば米国における大学入試。普通に試験をすると難関校定員の80,90%はアジア人になってしまう。そこで、黒人、ヒスパニックが社会の下層から抜け出すために積極的格差是正をしなければならないという理屈を適用し、人種別の合格枠を決める。誰が一番得をするか。60%の枠を確保できる白人である。白人は黒人差別を利用して(特に脅威を感じている中国人に対して)有利な地位を作り出しているのでは?ひねくれすぎかしら。 -
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ネタバレレイシズムが錦の御旗にされたのは、ヨーロッパによる大航海時代からナショナリズムにかけてと説明があったと思うが、それではアジアにおける中華思想や日本国防における神風や鎖国主義は何だったのであろうか。さらに、おそらくイスラームは、コテンラジオで聞いてNETFLIXのメフメト2世のイスタンブール陥落のドラマを観たが異民族を取り込みイスラームの制度のもと寛容な社会。中世のキリスト教からルネッサンス、大航海時代という「歴史は勝者のもの」という価値観で書かれた本ではないかと感じた。もちろんレイシズムという言葉を現代社会に定着させた功績は疑う余地がなく、「菊と刀」は余りにも有名。ヒトラーのアーリア人至上主義に対する批判は、この本を記した後に同氏が米軍に徴用され日本文化に対する研究分析を担ったというような説明がしてあり納得。ユダヤ人の悲劇に対しては理解が深まった(中産階級が多く資産の没収というレイシズム以外の財政的利益の裏書もあった)。ルースベネディクトは、「甘えの構造」で土居健郎が話した時に、本人の日本文化への理解が一面的であると喝破してあり、その時の印象がこのような感想につながったかも知れない。