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西洋との比較の枠組みを与え日本文化への反省と自負の言説を巻き起こしつづけた日本論の祖。事実誤認をも丁寧に注釈しながら、強固な説得力をもつこの書を精確かつ読みやすく新訳。
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Posted by ブクログ
約40年前の古典。今の20代たちが見れば、祖父母、父親、母親がどういう日本人であったかがわかるでしょう。 特に子どもの育て方、祖先に対する考えなどわかりやすいと思います。
戦後日本の占領統治を効果的なものとするため、日本の土地を踏むことなく文化研究学者ルース・ベネディクトがまとめた日本人論。脚注において誤りも多数あるが、日本人の精神構造をアメリカ人と比較しながら論述することで、特徴的に描き出している。ほとんどが今でも有効なものではないか。 日本人は社会の中で自分に与え...続きを読むられた役割「其ノ所」を得てその役割を失わないよう努力する。相手に対する責務は契約関係に基づく「義務」よりはるかに広く概念的な「義理」であり、その義理を目立たぬ形で果たすことが美しいとされる。競争的に自分の貢献をアピールすることは相手の「其ノ所」を犯し恥をかかせることとなり、社会的に許容されない。日本人にとっては恥をかかされた場合、相手に見えない形での報復、相手への暴力を自分に転嫁した形での自殺により名誉回復をすることが義務とされていることから、見える形での競争を避け、相手に恥をかかせないことが重要である。そのため、事前の根回しや見合いにおける仲介人が本人を介することなく事前のお断りをすることにより、公衆の目に触れることなく社会的地位の調整がなされる。 天皇に対しては無条件の「恩」があり忠誠を誓う。これに対して一般から受けた「恩」に対しては、恩返しをしなくてはならず、なにか恩返しをしても相手からの恩は簡単につきるものではない。(これだけのことでは頂いた恩への返しは)すみません。返せないことが申し訳ないし、感謝していることを忝ないといって表現している。 日本人は自らの生き様を「刀」になぞらえており、自らの義理を果たしたいないことから生ずる恥「身から出た錆」を注ぐことは自己責任上重要な課題とされている。
異なる文化圏の人が書いているのだということがひしひしと感じられる文章だった。自分たちの使う視点とは大きく異なる場所から自分たちの文化を見つめられる違和感が大きく、読んでいて脳に心地よい負荷がかかった。
アメリカとの比較が面白かった。恥の文化と罪の文化。義理と愛。睡眠と食べ物について。人生の自由線がアメリカとは正反対であること。日本人の二面性について。斜め読み箇所も多かったが、目を通して良かったと思えた一冊だった。
戦後すぐに出版された日本人論なので、現代では「?」な部分もありますが、おおむね的を得ているように感じます。ただ、一つの論点をだらだら書いててわかりにくい部分が多くみられます。 1.この本を一言で表すと? ・大きくはずれてないが、細部で間違いが多い、アメリカ人による終戦直後の日本人分析 2.よかっ...続きを読むた点を3〜5つ ・罪の文化、恥の文化(p272) →現代の日本では、恥の文化が薄れてきているのが問題なのではないか?と考えさせられた ・身からでた錆への責任(p361) →刀を比喩的に使った、大和魂をわかりやすく表現している。 ・乃木将軍とロシアのステッセル将軍とのエピソード(p375) →単純にいい話。相手を嘲笑するのは恥ということか。 2.参考にならなかった所(つっこみ所) ・注釈をみる限り、あまりにも勘違い、調査不足が多いと感じました ・そもそも、この本を読んだ欧米人はどれくらいいるのか、甚だ疑問 ・義務と義理について、現代ではそれほど区別されていないのではないか? ・恩とそれに対する返済一覧表(p147) →義務は等価返済?返済期限あり?自分の名に対する義理=名誉?どれも少しずれている気がする ・降伏後の日本について、平和国家になるか、好戦的な国になるか、状況次第と纏めているが、後に制定される憲法に影響されることになってしまった。 ・人情の領域 →睡眠、食事等は個人的には当たっていると感じたが、現代の日本人一般的には外れている部分が多いと思う。 ・タイトルの「菊」はどこからきているのか? 3.みんなで議論したいこと ・恥の文化がなくなった場合、宗教なき日本人にとっては、何が内なる神になるのか? 4.全体の感想・その他 ・終戦前後の時代背景を考えると、日本に来ることなく、文献調査と聞き取りのみでここまで分析できたのはすごいと思うが、事実誤認も多く、なぜ現代まで語り継がれる本になったのかは疑問
以前読んだ長谷川松治訳(講談社学術文庫版)よりかなり読みやすい.光文社文庫版もチェックしたいところ. 「菊と刀」の評価は過去にも多くなされているが,ベネディクトの見方に正しいものがあるというところは感覚的には理解できる.ただ,それは単純に結論として正しくなっているだけである.結論にいたる過程につい...続きを読むては荒削りであり,また不正確でもある.だからこそ大枠だけは正しいというところである.日本人の研究者は日本文化になじみすぎており,これまで,敢えてその「大枠」に眼を向けることがなかった.本書の価値はこの過去に抜け落ちていた視点があったというところであろう. ただ,やはり彼女がつかんだ直感的なものだけでは学問としての位置づけは高く評価できない.結論は面白いし,結果としては正しくもあるだろうが,それで十分であろうか?
評価が難しい本。本書でまず目につくのは、巻末に附された厖大な量の註である。これは、著者が丹念に取材にあたった証左ではなく、むしろその逆で、事実の誤認などがかなり多いために訳註を増やさざるをえないのだ。まずこの時点で、高い評価をためらってしまう。当時日本論がほとんど世に出ていないことや、取材時は戦時下...続きを読むで、情報を容易に得ることができないという背景は理解しているものの、それでも日本人からすれば常識的な部分にまであまりにも誤りが多く、積極的に肯定する気にはなれない。それを差し引いても、内容もはたして妥当なのかどうか。いわんとしていることはたしかにわかるのだが、どうにも腑に落ちない部分も多多ある。時代背景が違うため理解することが難しいということもあるのだろうけど、ちょっと偏見が過ぎる印象ももった。ただ、今日でもたとえば「空気」を重んじたりするようなところなどはよくいわれることであるが、そういった記述にかんしてはよく理解できるし、そのほかの部分と比較・対象すれば、その的確さにはむしろ舌を巻くばかりである。現代でもなかなかこういう民族論はかけないのではないかとも思う。なにより、戦時中日本に対してこういう見方があったのだということは非常に興味深い。正確性については疑問符はつくけれど、それはそれとして、この時代の日本人論として白眉であることは間違いないと思う。
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