金谷治のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
四書の二つである大学と中庸。論語が書かれた後の前漢時代に編纂された礼記の中に書かれているものでこれが四書として日の目を見ることになったのは朱熹によるものであるという、この書物の変遷自体も学ぶことができる。
貞観政要などの他の中国の書物を読んでも、このような過去の書物が考え方の根源とされているように思え、ここで大切とされている教え、人の上に立つものは徳を備えていること、何よりも謙虚な姿勢であること、欲の元となる行いや振る舞いは一切見せず飾らない身であること、がいかに大事なのかということが繰り返し述べられている。
また、中庸という言葉の意味もよくわかっていなかった、優れたものはつい行き過ぎてしまう -
Posted by ブクログ
戦略。それを全うする為の姿勢、或いは哲学的思考。
キング◯ムに孫子の兵法がいくつも登場する。見たことがある人ならすぐ気づくだろう。黒◯丘の戦いは、正にそれである。戦況も見処なので、この本を見た後に読み直したら爽快感が増すのではないかと思う。
それから、風林火山は孫子の兵法の一節の一部分だ。疾風感、無双感がある。また軍を鼓舞する言葉であろう。美徳的雄々しさをイメージするが、実際は断崖絶壁、絶対絶命の中、勇猛果敢一択ではないだろうか。敵も味方も孫子の手の平の内。底恐ろしさを感じる。
違った視点で考えると、組織リーダーの在り方とも捉えられ、学ぶべきことが多い。組織の利益を追求しつつ組織構成員も大事に -
Posted by ブクログ
古今東西、様々な軍師に読まれてきた戦略書の古典
徹底的な現実主義に立脚し、精神論を排し、どのように戦いに向き合うべきかを説いています。
春秋時代に書かれた戦争に勝つための兵書ですが、人生の様々な場面で応用できそうな示唆に溢れています。特に印象に残った要点は以下の部分です。
---------
① 敵国を傷つけずにそのままで降伏させるのが上策で、敵国を打ち破って屈服させるのはそれに劣る。百たび戦い百たび勝つよりも、戦闘せずに敵兵を屈服させる方が圧倒的に優れている。
② 敵と味方、そして置かれた状況について熟知するべき。それには観察が大切である。※よく引用される「彼を知り己を知れば百戦殆 -
Posted by ブクログ
『大学』も『中庸』も学説やそれが拠るところの哲学体系によって、解釈や構成に異同があるとのこと。
『中庸』に関してはその論理的構成がかなり難解で消化できなかった。
中庸の徳を補完する「誠」は天命の性、天地の道であり、人倫の道の規範である。して、誠が備わった至誠が他人や物の本性を発揮させるとどうなるか。天地の化育を賛くというのである。
天地は人が倣うべきものか、あるいは人が化育すべきものか、このあたりの関係が果たしてどのように整合しているのか理解しかねた。
訳文と解説はわかりやすく、かつ知的誠実性を備えている。
これら経典を四書として位置づけさえした朱子学の扱いであるが、朱子学的解釈にはその体 -
Posted by ブクログ
論語は古典中の古典である。
江戸時代の総ての知識人は論語から学びを始めて、読書百遍意自ずから通ず、そこから自分の立ち位置を考え、生活設計をした。
荻生徂徠は、朱子学から始めてそれを政治に活かして江戸封建思想の基礎を確立したが、それも論語を批判的に読んだものだ。
その政治を批判した大塩平八郎は陽明学を基礎としたが、それも論語を批判的に読んだものだ。
更にそこから派生して佐久間象山は技術は海外から学んだが、頭は儒学から抜け出していない。その「和魂洋才」が明治維新を成立せしめた。
一方で町人には「仁義礼智忠信孝悌」の「八犬伝」の様に、なんとなく「仁=愛」が最高哲学との理解がされた。
また -
Posted by ブクログ
会社経営者やコンサルの人たちに『孫子』が好まれるという話は前々からよく聞いてはいたが、今回最後まで通読してみて、なるほどねえ、確かにこういう本は好かれるだろうなと納得した。それは、兵法書でありながら組織論や戦略論として応用できそうなところが多々あるからである。ただ、ここが中国の古典らしいところで、こういう時にはこうせよとは書いてあっても、なぜそうなるのか、では具体的にどのように実施すれば良いのかという記述に乏しいので、耳触りの良い標語としてわかった気になるレベルを越えて実際に実務に活用しようと思えば、読む者、実行する者の理解力と思考力、応用力が試されることになろう。
このように、ビジネス書と -
Posted by ブクログ
高校生の頃古文と漢文の勉強を疎かにしていたツケが回ってきた…
本作はとても有名な兵法書の古典だが、その普遍性が評価されており現代社会でも通用すると言う事だったので読んでみた。地形や火攻めのところなどはそのまま戦い方についてが記されているが、確かに他の部分では普遍性のある内容も多く面白かった。
作中もっとも印象に残っているのは次の文。
「善く兵を用うる者は、道を修めて法を保つ。故に能く勝敗の政を為す。」戦争が上手いものは良い政治を行い、ルールを守る。そして思うままに勝敗を決められるようにすると言うことだ。仕事をする上で大切にしたい考え方だと思った。
-
Posted by ブクログ
孔子は、至極最もな当たり前のことを話す。
愚か者と突き放すこともある。しかし、全体を読むと、愚か者・学のない者=過ちを改めない者・学ばない者のことを指していることに気づく。
気に入った言葉トップ3
『冉求が「先生の道を[学ぶことを]うれしく思わないわけではありませんが、力が足りないのです。」といったので、先生はいわれた「力の足りない者は[進めるだけ進んで]中途でやめることになるが、今お前は自分から見切りをつけている。」』-p.113-
『先生がいわれた、「教育[による違い]はあるが、[生まれつきの]類別はない。[誰でも教育によって立派になる。]」』-p.323-
『季文子は三度考えてからはじめ -
Posted by ブクログ
敵が利益を求めていれば誘い出せ。敵が混乱していれば敵陣を奪え。敵の備えが充実しているなら防御・回避せよ。敵が怒っていればさらに心を乱れさせよ。敵がこちらを舐めているようなら、さらに油断させよ。敵が休もうとすれば疲れさせよ。敵が団結しているなら、仲たがいを起こさせよ。
味方のスパイに偽りの情報を教え、わざと敵に捕らえさせる。味方のスパイは拷問を受け、偽りの情報を(真実だと思って)敵に知らせる。敵は偽りの情報を真実だと思い込む▼こちらの情報を得るためにやって来た敵のスパイを、敵よりも多い報酬を与えて転向させ、味方のスパイとして送り返す▼敵を知り、味方を知れば100度戦っても危険はない。敵を知らず -
Posted by ブクログ
カタチとキモチは結びついている。「ありがとう」と言ったり、お辞儀をするのが礼(カタチ)。そこに感謝の気持ちを込めることが仁(キモチ)。仁の気持ちを持てば、それは礼に現れる。礼を実践することは、仁の実践につながる。▼仁を持っていれば、親や年長者を敬うはず。身近な人への愛情を他の人にも広げていくことが仁の実践。▼仁や礼を体現するような人が為政者にふさわしい。法や刑罰による統治では、人々の人間性の向上につながらない。為政者の徳が重要だ。孔子
春秋時代、周の権力が衰え、下剋上。無秩序。正しい秩序があれば、政治、文化、教育、軍事は天子の権利だが、正しい秩序がなくなると、諸侯の権利になり、大夫の権利にな -
Posted by ブクログ
歴史で習った「四書」は『大学』→『論語』→『孟子』→『中庸』の順で学ぶべきという。本書はそのうち最初と最後を学べる。
大学之道、在明明徳、在親民、在止於至善(大学第1章)
大学は、最高学府と大人の学びの意味を兼ね、まずは一身の修養が大事。
中庸は、その意味だけならさほど難しくもないが、
誠者、天之道也、誠之者、人之道也(中庸第11章)
という窮極の道が示されている。最後に学ぶわけだ。
今、露国の大統領に送りたい言葉があった。
一人貪戻、一国乱作乱(大学第5章)
「君主一人の身が貪欲(不譲)ででたらめ(不仁)であれば、国じゅうが争乱を起こすことになる(60p)」