宇能鴻一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
筒井康隆のエッセイでよく見た名前だな、くらいのとっかかりと、タイトル、表紙に惹かれて買いましたが面白いのなんの。
「姫君を喰う」とはそういう意味なの?と読んでびっくり。何を読まされているのだ(笑)。
とは言え古い元ネタがありそれを現代(といっても1970年の作品!)にエロくかつ怪談のように蘇らせてお見事。食事と性欲の身近さが濃密に感じられて若者が読むと性癖が捻じ曲げられそうです。
続く「鯨神」も明治初期の話で、巨大な鯨に祖父、父、兄貴が殺され仇を討つ若者が主人公。
そこまで熱も無いのに鯨と死闘を繰り広げる主人公の独白がまたしても現代に通用してしまうのが全く恐ろしい。
他の作品も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
「姫君を喰う話」
千年の時を超えて生きる虚無僧と並び、モツ焼きを喰いながら
セックス&カニバリズム談議にふけるという話
モツ焼きを食べるということが
むかし愛した女を想ってするオナニーのようなものであるらしく
それを指摘された虚無僧はどこかに消えてしまう
「鯨神」
明治時代初頭の長崎で
巨大な鯨に親兄弟を殺された若き漁師が
これに復讐をこころみる話
復讐を果たした彼は、自らも深手を負ってしまうのだが
死に際の夢の中で鯨と和解する
人を人たらしめるのは物語であり
そこを離れれば人も自然界の一部にすぎないという
ひとつの気づきであるが
死を目前にしなければそれを実感できないという
物悲しさもある -
Posted by ブクログ
1961(昭和36)年から1970(昭和45)年にかけて発表された短編小説を集めたもの。
令和3年8月に出たこの新しい新潮文庫を店頭で見かけ、「宇能鴻一郎ってどこかで聞いた名だけど誰だっけ」と首をかしげ、巻末の解説をパラパラ見てみたら、そういえば「官能小説家」ではないか。団鬼六と並んで、中学時代にはこれらの作家の名を出しただけで淫靡な笑いを友人たちと共有したものだ。
知らなかったのだが、この宇能鴻一郎さんはもともと芥川賞作家であって、当初は純文学畑の小説家であったそうなのだ。この新刊の帯には「ただならぬ小説がここにある。」「官能の巨匠か、文芸の鬼才か。」「人間の深淵を容赦なく抉る至高の六 -
Posted by ブクログ
結構前から積んでたけど、そろそろと満を持して取り出した本書。平積みから買ったけど万人が手に取っていいのだろうか。
表題は意表を突かれたけど妙に納得と官能と食欲を刺激される怪作。凄い筆致で驚いた。谷崎や安部公房なんかを彷彿とさせる艶かしさ。
鯨神は芥川賞受賞作なのね。全体的には何となく陰鬱な雰囲気を受けるけど最後の鯨神との対話でパァーッと陽光がさすような。
花魁小桜の足。小品。うん、まぁ、といったところで過分感慨もないといったところだが。文体は少しクセになってきた。次に期待。
西洋祈りの女。ややアングラな日本映画のような情景。西洋祈りというカルトな雰囲気が深い靄をかけたように揺蕩う。幕切