野口絵美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・私はダイアナ・ウイン・ ジョーンズ(以下DWJ)を創元推理文庫で知つてゐた。これ以外に翻訳は出てゐないと思つてゐた。その後、例の「ハウルの動く城」も彼女の作品であり翻訳もあると知つたが、それ以外のいくつかの作品も訳されてゐると知つた。それが徳間文庫であつた。しかもかなり以前から出てゐたらしい。私はそれを知らなかつた。何と迂闊なことか。クレストマンシーのシリーズも出てをり、私はこれをほぼ文庫で出た順に読んだ。このDWJ「大魔法使いクレストマンシー外伝 魔法がいっぱい」(徳間文庫)はその最後に出た短編集である。4作を収め、長くても100頁、短いのは40頁ない。もちろんおもしろい。登場人物はクレストマンシーを中心に、他の作品と重なる人物もゐる。ただし、クレストマンシーは人名ではない。従つて一人ではない。物語によつて変はる、といふよりもこれを襲名してゐると言ふべきかもしれない。クレストマンシーの「世界の政府が、いちばん魔力の強い、九つもの命を持つ大魔法使いに、魔法が悪用されないように監督させています。この大魔法使いの称号が『クレストマンシー』なのです。」(5〜6頁)これが最もよく分かるのが 「キャットとトニーノと魂泥棒」である。前、現、そして次のクレストマンシーが出てくるのみならず、かつてのクレストマンシーも、魂だけとはいへ出てくる。しかもその魂は、物語ラストにゐた何人かの新生児に入つてしまふのである。これは将来的にはその子が大魔法使ひになる可能性を示してゐるのであらうから、物語には次の次のクレストマンシーも出てゐると言へるのかもしれない。
・ここでふと考へる。これはDWJが続篇を企ててゐたのではないか、この子供たち、あるいはその大人になつた人物が主人公となるべき物語の構想があるのではないか。これだけ楽しくもまたおもしろい物語を作り続けてきた人である。そんな続篇があつたらさぞおもしろい物語になるだらうと思ふ。もちろんキャットの物語がそれ以前にあるはずである。キャットは「魔女と暮らせば」の問題女児の弟である。魔法の才がないと思つてゐたのに、実は誰よりも優れた才を持つてをり、しかも九つの命を持ってゐたといふ子供である。現在はクレストマンシーに庇護されつつ教育を受けてゐる。こんなキャットの次の物語が「キャットと魔法の卵」なのだが、この更なる続きもあつてしかるべきであつた。ところがDWJは2011年に死去してしまつた。キャットの新しい物語はもう読めないのである。もちろん、「魂泥棒」の最後のシーンからの続篇もなくなつてしまつた。実に残念なことであ る。最後に解説を兼ねた座談会がある。ここで本書の訳者の一人、田中薫子がDWJの作風を「緻密にプロットを練ってつくりあげるというよりも、物語が降りてくる。ふっと浮かんだら、わーっと書いてしまうというタイプの方ではないか」(271頁)と 言つてゐる。これは確かにさうだらう。「魂泥棒」はそんな物語で、書いてゐるうちに筆が勝手に動いていつたのではないか。 DWJはトールキンの文章を、「あの人の文章はつまんないのよね」と言つた(265頁、上村令発言)とか。中身が違へば文体も変はる。常識的に考へれば、DWJとトールキンのファンタジーを同じ文体にはできないのだが、二人の人間性の違ひもそこに出てゐるのであらう。さうであればこそ新しい作品を読みたいと思ふ。DWJが「指輪」風ヒロイックファンタジーを書くとどうなるか、などといふのはもはや無理、これを機に創元推理文庫を読み直してみよう、つまらないと思つた作品が実はさうではないと分かるかもしれないのだ。 -
Posted by ブクログ
短編集だけど、充実している。
懐かしい人たちが出てきてニヤリとする。
物語が全然すましてなくて、
何度もクスリと笑わされる。
それにしても、
短編で、
毎回主人公が変わり
それほど特別な展開があるわけでもないのに、
飽きさせず楽しませるすごさ。
魅力のひとつは、
ウソがない人物の描き方なんだと思う。
どの人物の心情もリアルで、
たとえ主人公であろうと、
カッコ悪い情けないイヤなところまで
ちゃんと描いているから楽しい。
個人的にはキャロルの話が
いちばん好き。
特にラスト。
それまでクレストマンシーにすら
大人ぶって面と向かっていた彼女が
一気に子供に戻った描写は、
とっても心が動かされてジーンときた。 -
Posted by ブクログ
魔法は存在するが厳しく禁じられている世界。そこにある寄宿学校の二年Y組で見付かった「このクラスに魔法使いがいる」とのメモ。そして魔法としか思えない様々な事件。魔法使いの疑惑から逃げるため、生徒たちが「クレストマンシー!」と古くから伝わる呪文を叫ぶのだった。
作者お得意の平行世界を扱った物語。歴史の事件が岐路となり多種多様の世界が生み出される。そこには魔法のある世界も、魔法のない世界もあり、その魔法の使われ方を監視する役職としてクレストマンシーがいる。そんなシリーズ物のひとつ。
シリーズ物ですが、これだけ読んでも面白いです。魔法使いがいるとの密告から、仲間外れにされていた生徒や厄介者の生徒に疑いの目が集まる。しかも本来魔法が存在する世界なので、不意に魔法使いの能力に目覚める者も現れる。
そこに妙に校則の厳しい学校の様子や、いじめっ子とのやり取り、魔法による騒動が加わり、しっちゃかめっちゃかになったところで大魔法使いクレストマンシーの登場。
しかし快刀乱麻のごとく魔法で解決とはせずに、いびつな世界の原因を探ろうとするというのも作品世界観の奥深さを垣間見させるのです。ほかのシリーズを読むことにより補完し合い、より作品世界を知ることになるのでしょう。
一癖も二癖もあるひねくれたキャラクターがたちが巻き起こす騒動も楽しい一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大魔法使いクレストマンシーシリーズの一応3作目。
このシリーズをこの本で4冊読み、私達の世界の言葉でいうパラレルワールドでの出来事という世界観にもだいぶ慣れてきました。とはいえ、前半のゆっくりなペースから、後半の怒涛の展開、というパターンは、他の作品と共通していて、途中から惹きこまれて読んでしまいました。他のことが出来なくなる罠のような作品です(笑)。
前半、惹きこまれ方がゆっくりなペースなのは、舞台となるパラレルワールドがどういう設定なのか、読み進めていくうちに分かってくるという描かれ方のせいかもしれません。今回、召喚され…いや、呼び出されたクレストマンシー自身が、どういう世界かを生徒たちから情報を集めて掴んでいくのを読み、まさに読者も同じことをしているなと感じました。いやいや、クレストマンシーも大変ですね(笑)。
シリーズの他の作品も読むと、この作品に登場するクレストマンシーが誰で(クレストマンシーは役職名なので)、どういう人物かがわかってきます。そういう意味では、1作だけしか読まないのは勿体無いです。あの、「何を考えているかわからない目つき」とか伏線がありまくり(笑)。
ナンやチャールズ達のいる元の世界が灰色なイメージなのに比べ、ラストの世界が虹色な感じで、「魔女と暮らせば」や「クリストファーの魔法の旅」みたいに嫌な人物もそれほど出て来ず、読後感がなかなか良かったです。子供達の中に意地悪な子も出てきますが、そこは成長途中の子供達ですしね。
1つの作品も、後半に掛けて惹きこまれますが、シリーズとしても、何冊も読んでいくうちに「もっと次の作品を読みたい」と思うシリーズです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大魔法使いクレストマンシーシリーズの第2作目。
ロミオとジュリエットを彷彿とさせる作品で、1作目の「魔女と暮らせば」より、私は好きでした。魔法がお茶目だし(特にルチアの魔法とか困るだろうなと思いつつ笑ってしまいます。あと、紙製の馬とか…笑)、舞台となったイタリアのイメージなのか、明るい感じがしました。
戦争の影が掛かるので少し苦しい感じがする部分もありますが、子供たちが力を合わせて頑張る姿とかが私は好きです。
あと、「魔女と暮らせば」の最後の戦い(?戦いと表現して良いのかな)も華やかさがありましたが、この作品は、更に歌というツールのおかげで、更に華やかで良かったです。トニーノとアンジェリカの将来が楽しみ♪