時岡敬子のレビュー一覧
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1878年、横浜港に上陸した英国人女性旅行家イザベラ・バードは、欧米人未踏の内陸ルートで、東北・北海道への旅を敢行した。欧化の希薄な、日本の原風景的色彩を色濃く残す地域の探訪を試みて。現地交流を通し、つぶさに観察された維新後の日本の文化、習俗、そして、北方の自然の美しさが、活き活きと綴られる。本書は、著者が故国の妹に日本の見聞を書き送る形でまとめられている。
「植生と緑の豊かさは実にすばらしく、日本はエメラルド諸島と充分呼べるくらいである」。序章にそう書かれた日本の印象は、東北の米沢に辿り着いたところで、「申し分ないエデンの園で…微笑みかけているような実り豊かな地です。繁栄し、自立した東洋 -
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前半部分は、蝦夷への旅。
気候も、本州を旅していた時ほど雨にたたられなかったためか、北海道はかなりバードさんの好みに合っていたようです。
旅自体は、相変わらず、危険を伴う部分があったり、困難だったりする部分もあったけれど、風景を愉しむ描写が、かなりあります。
バードさん、植物の種類にも詳しく、地形や地質についての知識もあるようです。
蝦夷では主に、アイヌとの触れ合いについて、描いています。
私のもっていたアイヌのイメージは、自然の中で自然に生かされ、神を感じながら生きる、力強い人々というモノでしたが、少し違うようでした。
未開人で、発展というようなことは考えず、穏和である、お酒を飲む事を無 -
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佐々大河さんの漫画『不思議の国のバード』を読んだので、やはりこちらも読んでみようと思いました。
が、思った以上に時間がかかってしまって、、
以前は、もっとどんどん読み進められたのに〜と思う今日この頃、、、
それはともかく、漫画のバードさんのイメージがさすがに強くて、あのバードさんがガシガシ歩いている場面とか馬から落ちそうになっている場面が目に浮かぶのですが、とくに違和感は感じません。
こちらは、全文、妹に宛てた手紙の形式で書かれています。
青森に着くまでが上巻なのですが、とくに後半、天気に道を阻まれ、なかなか進むことができません。
六月から七月にかけて梅雨の時期に旅をしようというバードさ -
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下巻で印象的だったのはアイヌと仏教についての視察や考察。イザベラ・バードは蝦夷地に辿り着き、アイヌとも触れ合う。アイヌへの印象は悪くなかったようだ。
ー 「多毛のアイヌ」と呼ばれてきたこの未開人は、鈍くて、温和で、気立てがよくて、従順である。日本人とはまったく異なった民族である。肌の色はスペインやイタリア南部の人々に似ており、顔の表情や礼儀・好意の表し方は東洋的というよりむしろ西洋的である。背こえ高くないとしても、日本人よりずっと肩幅が広くてどっしりとした体格をしており、髪は水黒で、非常に柔らかく、頭にふさふさと生えてたれていて、くせ毛はときおり見られるが、巻毛の性質はまったく示していない。 -
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蝦夷を旅し、東京に戻る。京都を旅し、伊勢神宮へ。京都へ戻り、大阪へ。神戸に寄って東京に戻る。
そして帰国
アイヌ民族を見つめる眼差しは、個人的な印象を含めて公平というかフラットな感じを受ける。観察者の目という気がする。思い出すのは「ゴールデンカムイ」、本筋は別のところにあるのだけれど、背景に描かれるアイヌの生活や彼らとの関わりが面白い。
宗教面やこの後の日本の進路などの考察にうなずけるところが多々ある。今は少しは良くなっていると思えるところもあるし、変わってないねぇと思うところもある。
ある国のやり方が全部素晴らしいって言うことはあり得ないと思っているので、良い所は取り入れて見たら?という -
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(01)
当然のことであるが,朝鮮半島にもさまざまな地域差があって,普通,わたしたちは,ソウルの現代をもって半島の画一を想像する.本書は,海を挟んで向こう側の大陸の多様な事情(*02),とりわけ日清日露戦争,第一次大戦,日中戦争,太平洋戦争などの日本が行った近代戦以前や,その端緒にあった朝鮮の特殊な事情を知る上で,ひとつの資料となりうるであろう.
(02)
たとえば,松.アカマツの風景は日本列島でも見慣れているが,当時の朝鮮半島でも著者は,松とはげ山の印象をところどころで捉えている.そして虎.日本列島には生息しない大型の哺乳類であるが,この獣による人的被害が,半島の人々に恐怖を引き起こし,彼 -
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本紀行 上 イザベラ・バード
上巻は東京から東北縦断の旅。1878年というと大久保利通暗殺の年で(文中にも事件の言及がある)、そんな時代に外国人女性が東北を旅することの困難さは現代の感覚からは想像もできない。移動手段にしろ食料事情にしろ衛生状態にしろ、相当劣悪だったんだろう。
それにしても、イザベラ・バードの観察・描写の細かさ正確さには目を見張るものがある。日本に関する情報が圧倒的に少ないなかで、旅で見聞きした事ごとをこれだけ丹念に写し取れるのはすごい。19世紀の日本なんて現代日本人にとっても異世界なので、こうした異人による丹念な描写のおかげで当時の景色をイメージすることができる。
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イザベラ・バードの日本紀行 下 イザベラ・バード
下巻は蝦夷探訪と関西方面への旅路。
関西パートはわりと退屈で、後に出た短縮版で削除されたのも頷ける。
いっぽう、蝦夷パートはとてもおもしろい。アイヌの村を訪れ、滞在し、アイヌ人と交流した様が、いきいきと描かれる。そしてそれは、今となってはおそらく失われてしまった文化の貴重な記録でもある。
それにしても、バードさんの情報収集能力はちょっと驚異的だとおもう。単に見聞きした内容だけでも相当な記述だけど、それに加えて文化、政治、経済、風俗と全方位的にたいへんな量の情報を盛り込んでいる。たかだか数ヶ月の旅でここまで日本を知ることができるのかと。その意味で