久保俊治のレビュー一覧
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今年の8月に北海道の羅臼でヒグマに襲われ亡くなった方がいたが、本書に出てくる標津はその近くである。札幌市内でもヒグマの目撃談がある中、他方で外野からは熊を撃ち殺すのは残酷だとか、人間と熊の関係性を改めて問われている。
対話がないノンフィクションの本。いや、正確には自己対話、自然、犬との対話はあるが、人間同士の対話はほとんどない。その分、狩に集中するその緊張感のひとコマひとコマがまるで熊が踏みしめた雪の軋む音まで聞こえるような静けさと臨場感として伝わってくるのだ。
狩で生計を立てる男。著者自身の話で、著者は令和の最近まで生きていたが、亡くなった。いつ、熊に殺められても仕方ない覚悟だったと、そ -
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"はじめに"からして、名文。
猟師としての久保俊治氏のこれまでの歩みが余すところなく凝縮された一冊であろうという確信が、既にここで得られる。
従来の動物図鑑にもある最大公約数的な情報に加え、長年に渡り山を歩き観察し続けた実地経験が重ねられた、リアルな野生動物の生態解説。
時に机上で語られる通説を否定し、異なる見解を示されるが、おそらくはそれこそが正確な分析なのだろうと思う。
猟師としての行動哲学は、"人間という特異な存在でありながら、いかに自然の中に違和感なく溶け込むか"、これに尽きる。
服装や所持品など、具体的な装備面でも、常にその視点が最優先され -
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ネタバレいやいやいや。
これは面白かった。
久々に一気読み。
猟だけで暮らしたい。
そんな作者が
猟だけで暮らし、
猟犬を育て、
アメリカで学び、
牧場を営む。
一つの夢を叶え、また次の夢に向かって歩む
その作者の心意気がとても素敵な作品。
猟で得た獲物を大切にし、
綺麗に分けて無駄の出ないよう最大限に生かす姿勢も本当にかっこいい。
男なら、こんな生活に憧れるんでしょうね。
でも、それだけでなく、
アメリカに渡って本場を見、自分の生きていく道を決めたところも人間らしいし、
もう一頭犬を飼い、その結果自分の甘さに気づき
深い後悔を背負うところにも
共感できる作品。
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日本で唯一の羆ハンターである著者の自叙伝。北海道に住み、大学を卒業してから40年間、最初は一人で、数年後からは猟犬「フチ」とともに羆、鹿をはじめとする動物と闘う日々を過ごす。また、狩猟の本場アメリカにも修行に出かけ高い評価を受けている。若い時の著者は専業プロハンターのため、自然動物に近い繊細な感性を持っている。その著者が表現する北海道の大自然の風景、気象状況、動物の動きの描写は絶妙で、犬とともに雪をかき分け羆を追いかける風景がありありと浮かんでくる。マタギと同じく、斃した動物たちに感謝し、皮、肉、内臓に至まで、そのほとんどすべてを無駄にすることなく活用するといった自然とのつきあい方にも感銘を受
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ネタバレ幼少の頃から実父に猟の手ほどきを受けた著者は、大学卒業後、猟
だけで食べていくことを決意して、山での生活を始めます。獲物の
肉や皮を換金して生計を立てる暮し。ウサギ、キツネ、シカなど何
でも獲りますが、一番の狙いは羆。著者が目指したのは、タイトル
の通り「羆撃ち」だったのです。
一人で山に入った著者は、あらゆる兆候を手がかりに何日もかけて
獲物を追いつめて行きます。執念深く獲物を追うその行為は、獲物
を倒すことよりも、獲物と同化することを目指しているかのようで
す。実際、殺気が出ると獲物に感づかれてしまうため、できるだけ
獲物のことを考えないようにして、間合いを詰めていくのです。
獲物が何 -
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北海道でプロの猟師だった著者の半生が書かれた本。
狩猟生活について、作者のの実体験がとても興味深くて新鮮だった。
探し追いつめていく過程、研ぎすまされていく感覚におどろく。
その鋭さを持っての観察力と予測はほんとうに見事で感動する。
大自然を深く知る作者の経験からあふれ出てくるような自然の描写がとても良い。誰かの書評で森の中にいるようだと言っていたそうだけれど、とてもよくわかる。
そして五感を働かせひたすら目標に向かっていく猟をする作者がうらやましいような憧れるような気持ちになった。
羆は多くの人にとってはあまり縁がないが、おそるべき自然の驚異だと思う。
土饅頭のくだりは本当に怖かった。
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小さな頃から父に連れられて猟に出ていた私は
成人を迎えてすぐに銃のライセンスを取り
大学卒業後は故郷の北海道でプロの猟師になった。
雪の中にテントを構えビバークを繰り返しながら
何日もかけて羆やシカたちを追う。
猟師になって2年後に猟の方法を掴んだ私は
猟犬を育てるという夢を実現するため犬探しをし
生れたばかりの雌の北海道犬、フチと出会った。
賢く忍耐強いフチはすぐに追い鳴き、止め鳴きを覚え
頼もしいパートナーとして成長する。
次にもうひとつの夢、ハンティングの本場アメリカで
腕試しをするためにプロハンター養成学校への留学を決意する。
フチを置いていかなければならなかったが
5週間に及ぶ集中講 -
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2009年4月25日 初版弟1刷発行(5月中に増刷決定)
うまく文字にできず、読後ずいぶんたってしまった。
理由は二つ。ひとを食うヒグマの恐ろしさに怯えたことと、作者の文章がうますぎること。
ノンフィクションなのに小説を読むように感じてしまったからだ。
熊は世界では7種いて日本にはツキノワグマとヒグマ。ヒグマのほうが大きくて獰猛。
ディズニーの黄色いクマのプーさんは7種にはいっていない。
タイトルの「羆」はヒグマと読む。
吉村昭氏に「熊撃ち」という同タイトルのノンフィクションがあるので、あえて羆(ひぐま)という漢字を使ったのかもしれない。北海道のクマはヒグマだから、羆撃ちなのかもしれない -
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「くまうち」を読んでいると思っていて,よくよく見ると「ひぐまうち」:1947年生まれの現在は牧場主兼羆撃ち猟師でローマ字を読んで「くまうち」と読ませると再認識〜小樽に生まれ,銃猟が好きだった父の影響で大学生の時に免許を取り,山での暮らしを選択した。小樽周辺では鹿を撃ち,標津に羆が出没すると聞いて勇んで行く。アイヌ犬のフツを手に入れて,訓練を施してからは楽になったが,犬と離れるのは引き裂かれる思いだが,アメリカのハンタースクールで,優秀な成績を残して,ガイドの資格と仕事を得たが,戻る約束をしてビザが切れて北海道に帰ると,犬と共に獲物を求めるのが本当の猟師の姿だと認識を新たにし,標津に空き牧場があ
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