岡崎勝世のレビュー一覧
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「世界史」史の本。
ヨーロッパで語られた「世界史」は、それぞれの時代でどういう認識で語られたのかを、古代ローマから現代まで眺める。
最近は、古代ローマの凋落以後、ヨーロッパでは文明が崩壊し、インド・中東・中国などの中心に対してヨーロッパは周縁だった、と言われている。キリスト教文化圏が息を吹き返したのは15世紀、もしくは18世紀以後で、それ以前のヨーロッパを描くときには、気をつけないと「創られた伝統」になってしまう。
古代ローマの世界地図には、同時期に勃興していた中国などは記載されておらず、陸をぐるっと取り囲む海は「オケアノス」と言われていて、ああ、これがアレクサンダー大王が目指したオケアノ -
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聖書が語る歴史と、教科書的な世界史が矛盾していることについてずっと気になっていた。なにしろ世界的なベストセラーである聖書に記載された歴史なのだから、矛盾をどのようにこれまで理解、解消されてきたのか知りたかった。
結果として解消は諦められたのですね。中国やエジプトが説明のつかないほどとんでもなく古い歴史を有していることを発見し聖書に取り込むことを諦め、歴史家の解釈によって年表がずれてしまう創世記起源の年号を諦め…
これが18世紀のことだということは、19世紀に「神は死んだ」と言われる前に神は瀕死の重傷を負っていたのかもしれません。その前後に地動説の市民権獲得もあるわけですし… -
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高校のとき世界史の最初の授業で、先生が「われわれが今から学ぼうとしているのはヨーロッパから世界をみた歴史だということを念頭においておいて」と言っていた。そのときからずっとぼんやりとではあるがその意識を持って世界史をみていたけれど、この本を読んだときはっきりとそれが理解できた。
昔のヨーロッパの人(という言い方は厳密には正しくないが)がどのように世界をとらえていたか、地理的にそして時間的にその変遷を理解できる。たぶん高校のとき世界史が好きだった人はおもしろく読めると思う。個人的には教父アウグスティヌスが果たした役割がいかにヨーロッパに影響を与えたかが興味深く思った。 -
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「歴史」を相対的に見ること 我々が親しんでいる「歴史」や「世界史」というものは、事実を列記した確固としたものとして存在しているのではなく、そこにはさまざまな時代にさまざまな解釈がなされた、その結果の集大成なのである。本書が扱う歴史は主に西ヨーロッパ人から見た歴史観で、世界最古の「バビロニアの世界図(前600)」から説明が始まる。バビロニア人の世界(そこにはバビロニアしか存在していない)を受け継いだものがギリシア人。ホメーロスの『オデュッセイア』が有名。
各時代の歴史認識の変遷やそれに関わる聖書や、中国、イスラム帝国の問題などどの問題をとってもとても興味深い。後半はマルクス、マックスウェーバ -
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著者は現さいたま大学名誉教授。本書は古代ローマ時代に発した聖書を絶対視する史観(「普遍史」)が、伝統的西欧世界がその外部の受容を余儀なくされた中世以降、中国史やエジプト史などの聖書と不整合な史実からチャレンジを受け変容していく過程を詳述したもの。
ホップス、スピノザ、シモンらの文献批判による聖書記述の相対化、ニュートンが発展させた理神論による時間・空間の「無意味化」などの〈外からの圧力〉だけでなく、著者の専門である18世紀ドイツ・ゲッティンゲン学派が展開したカトリック/プロテスタントの対立を巻き込んでの〈内からの圧力〉により普遍史観が自己崩壊した、というのは中々説得力があって面白かった。 -
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著者の岡崎勝世氏は、ドイツ近代思想史を専門とする歴史学者。
本書は、E.H.カーが歴史学の古典『歴史とは何か』で提起する「歴史とは現在と過去との対話である」という考えに基づき、ヨーロッパにおいて、その時代ごとの「現在」がどのように変化し、その結果、「現在」から行われる「過去」への問いかけと解答がどのように変化したのか、即ち、「歴史はどのように書き換えられてきたのか」について、古代から近代まで時代順に追究したものである。
その内容は概ね以下の通りである。
◆古代・・・古代ギリシア人、古代ローマ人は、世界を、自由な市民(真の人間)の住むヨーロッパ、一段劣った人間の住むアジア・アフリカ、怪物たちの住 -
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歴史学の歴史。これまでいかほどの変遷を経て、今の「世界史」に至ったのか、興味深く読んだ。
ヨーロッパ中心史観には他地域への蔑視が含まれ、問題があることは容易に分かるが、そこを克服していく世界史の記述がどう行われていくべきか、今後学んでいきたい。
また、個人的にはキリスト教の歴史で、常に最後の審判=終末が間もなくだという期待のようなものがあったことが興味深かった。仏教の末法思想との関連も探ってみたい。つまり、人間(思想家、宗教家)は、ある種の「終わり」や「大きな区切り」を歴史に求めるものなのか、という点だ。
ウォーラーステインについては、ほとんど触れていない。その点でサブタイトルはミスリー -
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ネタバレキリスト教がどのように世界の歴史を認識してきたのか、という過程について論じた本。聖書の世界の歴史は”普遍史”(Universal history)と訳される。
周知の通り、キリスト教はローマ帝国でその地位を磐石とするまで、帝国や異教徒から迫害を受けてきた。その対抗手段の一つで作られたのが普遍史で、教父・アウグスティヌスが天地創造→人々が原罪を背負う→救済→”神の国”実現の過程として作る。
中世には神聖ローマ帝国のフリードリヒ1世(バルバロッサという通称で有名)の叔父にあたるオットー・フォン・フライジンク司教がローマ帝国の後継者として中世普遍史を完成させる。
普遍史の転換期が訪れた -
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[ 内容 ]
天地創造から6000年で人類は終末を迎えると聖書はいう。
では、アダムとエヴァより古いエジプトや中国の歴史はどうなるのか。
聖書と現実の整合性を求めて揺れ続けた西欧知識人の系譜。
[ 目次 ]
第1章 普遍史の成立
第2章 中世における普遍史の展開
第3章 普遍史の危機の時代
第4章 普遍史から世界史へ
第5章 普遍史と万国史
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読 -
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[ 内容 ]
「世界史」はどのように創られたのか。
キリスト教的歴史観の成立と変遷、国民主義的歴史の誕生など、西欧的世界観・歴史観を根本から考える。
[ 目次 ]
第1章 ヨーロッパ古代の世界史記述―世界史記述の発生(歴史観の世界観的基礎;古代的歴史学・世界史像の特質)
第2章 ヨーロッパ中世のキリスト教的世界史記述―「普遍史」の時代(歴史観の世界観的基礎;中世的歴史学・世界史像の特質)
第3章 ヨーロッパ近世の世界史記述―普遍史の危機の時代(歴史観の世界観的基礎の変化;プロテスタント的普遍史の発生と年代学論争)
第4章 啓蒙主義の時代―文化史的世界史の形成と普遍史の崩壊(歴史観の世界観的基 -
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神様が七日で世界、そしてアダムとイブを作った。
そこから始まる聖書の中の「歴史」観がどのように広がり小さくなっていったか。そんな本。
だいたいの流れ
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キリスト教の黎明期、キリスト教の正当化のために
聖書より(古い)エジプトやメソポタミアの歴史をこねくり回しながら聖書に入れる
そんな教父たち。
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「海の向こうには何があるの?」「アジアの向こうはどうなってるの?」
アジア人は首無しふたなり人間なのぉ!←(やや語弊あり)という世界観を
最近の欧州人の心に植えつけた偉大なる聖書ベースの地図の話
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大航海以後、欧州人の「世界」が広まった。新大陸を聖書的にはどうみな -
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歴史の事象の変遷をついて書いた本は数多くあれど、世界観・歴史観・歴史学そのものの変遷についてをわかりやすく書いた本はあまりありません。これはまさにそれらをわかりやすく書いてくれた一冊です。これは「歴史の父」と呼ばれたヘロドトスから始まり、『神の国』でお馴染みのアウグスティヌス、近代歴史学の父ランケ、20世紀でもっとも影響力があった思想家カール・マルクス、偉大な社会学・経済学者であるマックス・ウェーバー、「世界システム論」のウォーラーステインまでの歴史学の変遷を書いた本です。歴史学の変遷について、手っ取り早くそして、わかりやすく書かれている良い本でオススメだと思いますので是非ご一読を!!最後に西
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ネタバレ西洋古代~近代におけるキリスト教的歴史観、「普遍史」の発展と衰退とを解説した書。聖書に基づく人類史として生み出された普遍史が現実の歴史をどのように記述していったのか、その二者の間の齟齬をどのように処理しようとし、そして瓦解していったのかを詳説する。
本書は、聖書に基づく西洋の歴史観である普遍史を、主に近世~近代における動揺の時期を中心に紹介したものである。キリスト教的歴史・世界理解の方法とも言える普遍史は、天地創造やノアの洪水などの聖書の記述を軸に(西洋人にとっての)普遍的な人類史を組み立てて行こうとする試みであった。アダムに始まる人類の歴史は預言者ダニエルの説いた四つの帝国を経て黙示録の終末